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いちごの妄想小説

嘘と缶コーヒー


会社での毎年恒例の土曜日の花見をして
乾杯が終わって少ししたら、この後用事が出来たとチコちゃんが言って早めに帰った。
その言葉に少しホッとして
チコちゃんを見送った後、そのまま事情を知ってる経管のメンバーに断りを入れて会社に戻った。

いきなり契約の変更を先方から言い渡されて
調印直前に契約書の練り直しになった。

月曜日の朝一で調印するために、今日中に仕上げて
明日の日曜日に常務にハンコをもらわなきゃいけない。

チコちゃんが用事があると言ってくれたおかげで、すんなり花見から帰ってこれた。

チコちゃんとは普段一緒に居られない事も多いから
約束したことはなるべく守りたい。
今日も俺が仕事だと言って早めに帰ったらチコちゃんはもちろん何も文句は言わないだろうが
寂しい思いをさせるから。

チコちゃんに用事があってよかった。

どうしてもこの仕事は今日中にまとめたい。

仕事に夢中になって、一段落したのでふと時計を見ると夜の8時を指していた。

その時、トントンと経管の部屋のドアを叩く音がして。
小さなガラス窓からチコちゃんが顔をのぞかせた。

経管の部屋は決まった社員証でしか解錠されないようになっている。
チコちゃんの社員証ではこの部屋は開かない。

急いでドアへ向かった。
「どうしたの?」
「そろそろお仕事一段落かな?と思って」
「なんで、仕事だって分かった?」
「野口さん、お酒を乾杯の一口しか飲まなかったから。
このあと会社に戻るんだって思ったの」
「・・・・用事があるって言うのは?」
「嘘ついちゃった」
へへっと、小さく舌を出した。

「嘘は・・・つかないでって言っただろ」
本当はそんなこと思ってないのに。
なんだか嬉しすぎて、そんな事を口走った。
「ごめんね。でも私が用事があるって言わないと
野口さん、私に会社に戻るって言いづらかったでしょ」
何でも、お見通しか・・・

「温かい缶コーヒー買ってきたけど。ぬるくなっちゃった」
それは、ぬるくなったという程度じゃなくて

「チコちゃん、いつからここにいたの?」
「あの・・・・」
「嘘言わないで。本当のこと言ってごらん」
「・・・・少し前。野口さんが忙しそうだったから、声をかけそびれただけ。
今、野口さんが時計を見たから一段落したのかな?と思ってドアを叩いたの」
缶コーヒーを持っていた手は冷たくなっていて。

4月とは言え、夜はまだ寒い。
今日は花見のせいもあって休日出勤はいないために
申請した部署以外の社内の暖房は切られていた。
廊下は・・・寒かったはずだ。

「寒かっただろ。ありがと」

そう言って抱きしめたチコちゃんの身体は冷たくなっていた。

「平気。終わったら一緒に帰ろう。それまで待ってる」

でも、二人の心はポッカポカに暖かかった。

END******





Commented by 小雪 at 2017-04-03 21:42 x
キャ〜野口さんとチコちゃんきた〜!
年度末で忙しかったみなさま、お疲れさまです。
関西もやっと桜が咲き始めました。
お花見行かなきゃ(訳.花見酒じゃ〜)
新作も待ってま〜す。ぺこり
Commented by おーひら at 2017-04-04 17:07 x
はぁ〜、きゅんとさせて頂いてありがとうございます。
嘘は、つかないで、、、のところで瞬殺されました♡
次回作も楽しみにしてます。

やっと暖かくなってきましたねぇ。
週末まで桜、もつといいなあ。
Commented by ichigo-ichigo205 at 2017-04-05 14:51
小雪ちゃん
久々でしたね~。この二人は。
おお!そちらでも咲き始めましたか!
お花見したいよね~!
新作ね~新作新作(笑)
Commented by ichigo-ichigo205 at 2017-04-05 14:52
おーひらちゃん
なんか久しぶり!お元気でしたか?
キュンとしてくれたら嬉しいです!
今週末までは桜は大丈夫らしい!
けど日曜日雨の予報なんだよね~
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by ichigo-ichigo205 | 2017-04-03 13:47 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(4)