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いちごの妄想小説

離さない

愛してるって言葉は、永遠じゃない。

毎日毎日、挨拶のように愛してると言われ
俺も愛してると応えてきた。

俺のために仕事をやめて、俺のために毎日を送っているしおりは
この上なく大事な人で、愛してるなんてありきたりの言葉じゃ表しきれない。

それでもそれ以上の言葉が見つからなくて
愛してると言われて嬉しくなって
愛してると心から伝えてきた。

でも、言葉は形のないもので
口から発してお互いの耳に入った途端、泡のように消える。
その儚さを求めて人は心を伝えあう。

どんなにどんなに伝えあっても、その言葉は形には残らなくて
自分の心にそっと大事にしまいこむ。

しおりが記憶をなくして
俺の数々の『愛してる』をしまった心の引出しに鍵を閉め
俺に、その素敵な言葉を言ってくれなくなった。

愛してるって言葉は、永遠だと思っていた―――

言ってくれたその言葉は、いつでも鮮やかに心から引き出せると思っていた。

でも、もう、しおりの口から新しい『愛してる』を聞かなくなってどれぐらい経ったのか。
もちろん、今までの『愛してる』が色あせることはないけれど
それでも新しい『愛してる』を欲しがる俺がいる。

毎日隣で眠るしおりをそっとそっと抱きしめる。

そして―――
そっと・・・そっと
しおりのひたいにキスをする。

「おやすみ。しおり」

それだけ言って
俺から離れないように、離さないようにそっとそっと抱きしめる。

その名前さえ、呼べなくなる日が来るなんて
思いもしなかった。

『愛してるよ』

心でそう呟いて、今日も2人は同じベッドで・・・眠りに落ちる。



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by ichigo-ichigo205 | 2017-04-13 15:07 | ・セカンドラブ | Comments(0)