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いちごの妄想小説

ブルームーン②

二人で映画を見に行った後、どこかでお昼を食べようという話になったが
俺たちは学生でお金もない。
2000円あったら、しゃれた昼より映画をもう1本見る方を選ぶ。
そんなところも意見が合った。

「そうだ。俺んチ来いよ。作ってやるよ」

そう言って連れてきて作ったのはセロリチャーハン。

お姉さん。元気にしてるかな。
ちゃんと彼氏に幸せにしてもらってるかな。

たとえ異次元だったとしても。
お姉さんは実在する。
不思議とそんな自信はあった。

「え!チャーハンにセロリ入れるの?」
「美味いから!」

そう言って作ったチャーハンを彼女はとっても気に入ってくれた。

二人で過ごす空間。
二人で観に行った映画。
二人で話した時間。

全てが俺には新鮮で、大切なものになった。

「好きなんだ」
と告白した時は、はにかんで
「私も」と言ってくれた。

お姉さんの記憶はだんだん胸の奥底にしまい込んだ。
忘れることはないけれど。
それでも、今目の前にいる彼女の方を好きになって行った。

キスも。
キスも。
初めてだったあの時のように、ぎこちないものじゃなくて
優しく彼女をついばむようにキスをする。

「今日は月が青いね」
「ブルームーンだ」

レイトショーの帰り道、二人で手をつないで俺のアパートまで歩く。
月の光を身体に浴びて。
ゆっくりと二人で歩く。

お姉さんのアパートがあったはずの更地に何か建築されるようだ。

「あ。アパートが建つんだ。徹のアパートの近くだ。
私、ここに引っ越してこようかな」

そう言った彼女の顔は月の光でキラキラ輝いていた。
月の光に包まれて、消えてしまいそうだった。
どうしてそんな事を思ったのか、分からない―――

「志保。行くぞ」

俺は彼女の指に指をからませた。
「こんどこそ」消えてしまわないように――――


END****
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by ichigo-ichigo205 | 2014-04-20 12:00 | ・10年目の恋 | Comments(0)