2014年 04月 20日
ブルームーン②
俺たちは学生でお金もない。
2000円あったら、しゃれた昼より映画をもう1本見る方を選ぶ。
そんなところも意見が合った。
「そうだ。俺んチ来いよ。作ってやるよ」
そう言って連れてきて作ったのはセロリチャーハン。
お姉さん。元気にしてるかな。
ちゃんと彼氏に幸せにしてもらってるかな。
たとえ異次元だったとしても。
お姉さんは実在する。
不思議とそんな自信はあった。
「え!チャーハンにセロリ入れるの?」
「美味いから!」
そう言って作ったチャーハンを彼女はとっても気に入ってくれた。
二人で過ごす空間。
二人で観に行った映画。
二人で話した時間。
全てが俺には新鮮で、大切なものになった。
「好きなんだ」
と告白した時は、はにかんで
「私も」と言ってくれた。
お姉さんの記憶はだんだん胸の奥底にしまい込んだ。
忘れることはないけれど。
それでも、今目の前にいる彼女の方を好きになって行った。
キスも。
キスも。
初めてだったあの時のように、ぎこちないものじゃなくて
優しく彼女をついばむようにキスをする。
「今日は月が青いね」
「ブルームーンだ」
レイトショーの帰り道、二人で手をつないで俺のアパートまで歩く。
月の光を身体に浴びて。
ゆっくりと二人で歩く。
お姉さんのアパートがあったはずの更地に何か建築されるようだ。
「あ。アパートが建つんだ。徹のアパートの近くだ。
私、ここに引っ越してこようかな」
そう言った彼女の顔は月の光でキラキラ輝いていた。
月の光に包まれて、消えてしまいそうだった。
どうしてそんな事を思ったのか、分からない―――
「志保。行くぞ」
俺は彼女の指に指をからませた。
「こんどこそ」消えてしまわないように――――
END****
by ichigo-ichigo205
| 2014-04-20 12:00
| ・10年目の恋
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