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いちごの妄想小説

職権乱用♪

このところ優衣の仕事の忙しさが半端ない。
俺より忙しいって相当だぞ。

今日もデートをドタキャンされた。

俺は仕方なく、二人で行くはずだった優衣の会社の近くのワインバーに寄った。
久しぶりにマスターとワインの味について話し合うのも悪くない。

そう思って店に入ると顔見知りのボーイが
「ゲンさん。あれ」と奥のカウンターを指差した。
「優衣?」

そこには優衣と、仕事上がりからそのまま流れてきたのか
若い男と一緒だった。

若干なれなれしい男の振る舞いに、遠くからでも優衣が嫌がっているのが分かる。
「あいつ、俺との約束キャンセルして何やってんだよ」
「助けに行かないでいいんですか?」
「仕事がらみだろ?様子見るわ。ありがと」

肩を抱かれ、苦笑いしながら手をどけた。
相手の膝が優衣の膝についた。

おいおい。店で大胆なヤローだな。

テーブルの上の手を握られた。

「はーっ」

いくら何でもそこまでだ。
俺は大きなため息とともに席を立った。

「優衣」
「しずか!」

助かったという安堵の表情と、変なところを見られたという困惑の表情が一体となった。
「優衣は?仕事帰り?」
「うん。こちら、丸田商事の内野さん」

ああ、丸田か。どこかで見た事がある男だと思った。

「横浜ホールディングの広報部加藤です。優衣がお世話になっています」
これ見よがしに優衣の肩を抱く。
社会人の挨拶としてはサイテーだな。

「横浜ホールディング・・・」
「内野さん。今度丸田商事さんとプロジェクトをご一緒するんですよね?」
「え・・・・」
「担当の部長、よく存じてますよ」

思わせぶりにそう言ったら、男は慌てて帰って行った。

その様子を見ながら俺は大きなため息をついた。
「優衣。30分ぐらい見てるけど。あれって仕事かよ?
あんな男のために俺がキャンセルされたのかと思うとイラつくんだけど」

嫌みの一つでも言ってやろうと振り向きざまにそう言えば
俺が言い終わる前に首に抱きついてきた。

「ありがとう~。嫌だったぁ~」
「いやだったら拒否しろ!」

「むげにできないよ。今の仕事の担当者なんだもん。
仕事の事で打ち合わせしたいって言われて・・・」
そう言った優衣の声は若干鼻声で。
泣いてんのか?

「でも、このお店を選んだのは褒めて。
ここにいればもしかしたらしずかが来るんじゃないかと思って」
「・・・・俺がこなかったらどうすんだよ」
「来てくれるって信じてたもん」

こいつ。可愛い事言いやがる。

「俺との約束をキャンセルするからこうなるんだぞ」
「うん」
「俺のこと好きか?」
「うん」
「ちゃんと優衣の言葉で聞かせろ」
「玄、好き」
「よし」

優衣の言葉に満足した。
が、あいつの事は絶対に丸田の部長にチクッてやる!
優衣の髪をなでながらそう決めた。


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-04-21 12:10 | ・キスマーク | Comments(0)