ファーストキス<智樹編>

懸賞 2015年 06月 06日 懸賞

中3の夏休み前。
授業が終わった塾の教室で隣の中学の女子とキスしていたのを講師に見られた。
受験生なんだぞ。と散々説教され
そんな態度じゃ夏期講習を受けても無駄だなと言われたことにカチンときた。

ムッとした顔をしていたら反省が足りないと退塾させられた。
別にキスしていた女子は好きではなかったから
会えなくなることに不都合なんかなくて
何回もメールや着信があったけど、めんどくさくてすべて無視した。

勉強もせずにごろごろしていたら、姉貴が大学の友達をカテキョとして連れてきた。

反抗するのもめんどくさくてフツーに授業を受けていた。

「智樹君。キスしてるのが塾の先生に見つかったんだって?」
飯田センセイがウチに来るようになって3回目ぐらいの時にそう聞かれた。

「まーねー。しくったよ」
「・・・・」
「はい。できたよ」
出された問題を解いて渡すと回答を見て一言
「出来るじゃない」
といった。
「出来るよ?俺別に落ちこぼれじゃないよ。姉貴だって分かってるはずだよ。
飯田センセイだってそう聞いてるんでしょ?ただ受験生だから夏休みを
それなりに過ごせってことだろ?」

「なんで・・・なんで塾の教室でキスしたの?」
「は?場所なんか関係ある?」
「え?」
「したいからしただけ」
「・・・・」

「飯田センセイ、処女でしょ」
俺は今日だされた問題の中で1番難しい問題を解きながら言った。
「え!」
「分かるよ。話してればね。結婚相手のためにとってあるの?
それとも今までチャンスがなかった?」
「なっっ!」
「別にどっちでもいいけど。はい。この問題も出来たよ」

「もっと自分を大事にしないと」
そう言う飯田センセイをじっと見つめる。
「大事って何?俺は俺の気持ちを大事にしてるけど?
ちょっとかわいい子がいればキスしたいと思うだけ。
イイ女がいればセックスしたいと思うだけ。いけない?」

「智樹君が好きな女の子ができたら後悔するよ」

くるくると回していたシャーペンを止め、じっと見つめる。

「後悔させてよ。弥生ちゃん」
「え?」
「俺を本気にさせてよ」
「何言って・・・」

頬杖付いていた手をゆっくりと顎から外して
飯田センセイの顎に手を掛けた。

飯田センセイに逃げる隙を与えて。
それでも逃げない飯田センセイは
逃げないのか、逃げられないのか。

ゆっくりとキスをした。

からかいのはずだった。
おそらくファーストキスもまだだろう飯田センセイをちょっと困らせてやろうと思った。
母親に軟禁状態にされている夏休みに嫌気がさして
色気のないカテキョにキスしてやろうと思った。
欲情なんかこれっぽっちもしてないはずだった。

思いのほか、その柔らかい唇をゆっくりと味わって
夢中になったキスをやめた途端に、ぶっ飛んだ。

なに!?

理解できなくて首を軽く振って頭をすっきりさせる。

おれ・・・
殴られた?

「最低ね」

今まで、おとなしいと思っていた女が
色気もなく地味だと思っていた女が
震えながら、グーで俺の左頬を殴っていた。

「いって・・・」

思いきり殴ったな。

「キスしたいならすればいい。
智樹君とキスしたい女の子とね。
でも、私はしたくないの。
最低のファーストキスだった!
本気にさせてよ?甘ったれるんじゃないわよ。
あんたは最低の男よ」

そういって、座り込んでわぁーっと泣き出した。

その勢いにびっくりして、泣き声にびっくりした。

「ご、ごめん」

女の子を泣かすのは俺の主義じゃない。
それでも泣き止まない飯田センセイをぎゅっと抱きしめた。

「ごめん。ホントにごめん」

しばらく泣いた後、我に返った飯田センセイは自分の起こした行動に
恥ずかしくなって涙をふいて帰ろうとした。

俺はいまどき、大人でスカートのポケットにハンカチを入れているその行為に
可笑しくなってくすくす笑った。
それと同時に、なんだかすごくこの人は純粋なんだって分かったんだ。
ポケットにハンカチでそんなことを思うのはおかしいかもしれないけど。
俺の知ってる女子は大きな化粧ポーチの中にハンドタオルは入っていても
制服でも私服でもスカートのポケットにハンカチはいれない。
そして、飯田センセイのハンカチは「ハンカチ」だった。
タオルじゃなくて、きちんとアイロンをかけたハンカチだった。

急にこの人が6個上のカテキョじゃなくて、可愛らしい女の子に思えた。

「ごめん。弥生ちゃんごめん」

そう言うと、同じぐらいの背丈の弥生ちゃんをギュッと抱きしめた。


「智樹!」
今日は大学帰りに弥生ちゃんとデートの約束をして待ち合わせた。
「なんかぼんやりしてたね」
「もうすぐ夏休みだな。と思って」
「その前に私は期末テスト作らなきゃ~」
「頑張れよ。センセイ」
「うん」
「俺たちのファーストキスをした日を思い出してた」
「ええ~」

あれから6年。今弥生ちゃんは俺の隣にいる。
俺の本気って意味での「ファーストキス」もきっとあれなんだと思う。

「可愛いかったな。弥生ちゃん♪」
「今は可愛いくないみたいじゃない~」

「いや。俺にとってはいつまでも最高に可愛いオンナだよ。
もう、これ以上本気にさせないでよ。弥生ちゃん」

そういってもう何千回目かのキスをする。

「私以外の誰ともキスしないで」
「もちろん」

大好きだよ。弥生ちゃん

END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-06-06 00:00 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

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