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いちごの妄想小説

素敵な人

火曜日。昨日居酒屋で色々騒ぎを起こして
皆さんに謝りたいと由紀がいうので、
仕事帰りに待ち合わせして二人で居酒屋に行くと
いつもより多い人数が座敷にひしめいていた。

なんだ。何かあるのか?

そう思っている俺の横で座敷の入り口で由紀が
「昨日はお騒がせしてすみませんでした」
と謝ると、
みんながニヤニヤしてこっちを見ていた。

な・・・なに?

「あれは鎌田さんが悪い。で、昨日のことを詳しく教えてよ」
そう、野口さんが由紀に笑いかけた。
由紀は秘書課の営業スマイルを残しつつ、俺のYシャツをつまんで
分からないぐらい微妙に俺の後ろに隠れた。

「あ、男のみなさんになんですが・・・
由紀は男性が苦手なので、急に触ったりしないでください」

俺はまじめに言ったつもりなのに・・・

「へぇ~・・・」
と山田さんが笑った。
「でも、柳下のことは平気なんだ?」
「え・・・あぁ。はい。そうみたいです」

「何?上杉さん柳下のことは苦手じゃないの?」
加藤さんが笑いながらそういえば
「柳下さんには毒がないからじゃないですかね?」
なんて山口が笑う。
「でもな。男の毒ってある意味必要だよ」
と山田さんが言えば
「お前は毒がありすぎ。俺ぐらい爽やかなのもいいよね?上杉さん」
と、野口さんが由紀に笑いかけた。

「え・・・あの」
困った由紀がさらに数センチ俺の後ろに隠れて
「皆さん、それぞれに素敵ですけど。
でも、やっぱり私には柳下さんだけが素敵です」

大きな声で言ったわけじゃないのに。
シン・・・となった座敷に由紀の言った言葉が響いて
次の瞬間、座敷がわっっと盛り上がった。

「柳下ぁ。良かったなぁ」
「柳下、お前だけだって」
「そんなこと言ってくれるのは上杉さんだけですね~」

なんて口々にからかいながら
俺と由紀をここにいる全員で祝福してくれた。

由紀ははずかしそうに、真っ赤な顔をしてキュッとYシャツをつかんでいた。
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by ichigo-ichigo205 | 2015-07-30 13:35 | ・運命という名の恋 | Comments(0)