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いちごの妄想小説

でぃーぷキス

1限が終わった火曜日の昼休み、2限の授業がないので
図書館で本を読んでいると白木君が隣に座った。

「乃恵ちゃん」
「白木君も講義ないの?」
「ああ」

そういって、私の顔をじっと見つめる。
「岡部先輩とは・・・うまくいってる?」
少しゆがめた顔でそう聞いてくるので
「はい。いろいろご心配かけました」
ファミレスでの岡部先輩と白木君の言い争いが1つの転機になったのだと思う。と
話すと、そうか。と苦笑した。

「ちゃんと大事にしてもらってる?」
「はい」
「少しでも、いやなことがあったら俺に相談してよ」
「はい。ありがとうございます」

「乃恵ちゃん、この前カフェで岡部先輩とはキスをしていないって大声で言ったみたいだけど」
私が二人の女性を相手に
岡部先輩とはキスもしていないと大声で言ったことは
あっという間に広まってて。
それを白木君も聞いたんだろう。

「はい。白木君まで知っているんですね」
「うん。ごめん。キスは・・・した?」
「あ。はい」
「もしかして、ファーストキスだった?」
「はい」
恥ずかしくて、顔が赤くなるのが自分でもわかる。

「ちくしょっ。岡部のヤツ」
小さい声で白木君が何かつぶやいた。
「え?何ですか?」
「いや。こっちの話」

「ディープキスもしちゃった?」
「でぃーぷキス、ですか?」
「そう」
「あの。すみません。でぃーぷキスって何ですか?」
「え、あの、いや。知らないのか」
「はい。すみません」
「いや。いいんだ」

そういって、
小さくまたつぶやいた。
「くそ、マジでかわいいな」

「あのね。ディープキスってね。舌と舌を絡めながらキスするんだ」
「へぇ!」
「あ。まだしてないのかな?」
「え。あの」
「舌を相手の口内に入れてね、絡めたりするとなんだかとっても親密な感じがするだ・・・」

ガンッッ

そこまで言った白木君の頭にげんこつが落とされ、ものすごい音がした。

「いって!誰だよ」

そういって白木君が後ろを向いて
私も白木君の後ろに立っている人物を見上げた。

「岡部先輩」

「白木っ!お前はっ!何、子羊ちゃんに余計なこと教えてんだよ」
「いったぁぁ・・・」
「当たり前だ!制裁だ!制裁!俺が教えるからいいんだ!」

「同学年の『友人』として教えていただけですよ」
「何が友人だ」

「岡部先輩。用事は終わったんですか?」
「ああ。行くぞ。乃恵。じゃぁな、白木」
そういって岡部先輩は私の手を引っ張った。
「乃恵、白木と話するな?ろくな大人にならないぞ」

あ。そうだ!さっきの話の答えをいうのを忘れて、少し離れた白木君に聞こえるように
大きな声で返事をした。

「白木君!岡部先輩のでぃーぷキスはとっても気持ちがいいです。
岡部先輩はとってもでぃーぷキスが上手なんですよ。素敵なキスです」

そうにっこり笑った私に、岡部先輩も白木君もなぜか顔を赤くした。


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-07-10 00:07 | ・あなた~you~ | Comments(0)