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いちごの妄想小説

最大の魅力 最大の罪


社内で1番モテて1番女遊びが激しいのは経管の加賀さん。
同じ経管の新田さんもモテるけど、女の子の誘いには乗らないし反応もイマイチ。
真面目なんだよね。

加賀さんは話していても楽しいし、女の子を楽しませる事を知ってる。
女遊びが激しいと言っても別に彼女がいる訳じゃないし
加賀さんと遊んでいる子はみんな加賀さんの1番になりたくて
それでもなれない事を肌で知ってる。

加賀さんは女の子を贔屓しない。
容姿で贔屓をする男が多い中で、加賀さんは誰にでも同じように優しい。

私たちみたいな地味な事務員にも優しく接してくれる。
それが彼の最大の魅力で、最大の罪なんだと思う。

そんな加賀さんが近頃、女の子のお誘いをことごとく断りだした。
本命が出来たと噂だ。

「ねぇ。本命が出来たってほんと?」

そんな時、3階の給湯室にお茶っぱの補充に行った時に、誰もいない廊下で小さな声が聞こえてきた。

「ほんと」

顔は見えないけど、加賀さんの声は弾んでいて
嬉しそうに短くつぶやいた。

「この会社の子?」
「いや」
「そうなんだ。どんな子なの?」

「蛍が・・・」
「蛍?」

「そう。蛍が愛して愛して、愛してやまない女」
「・・・・?」
「やっと、俺だけのものになったんだ」

蛍?誰かの名前なのかな?

「加賀くん、本気なの?」
「本気じゃなかったら手に入らなかったよ」

「じゃぁ・・・もう誘わない方がいい?誘っても無駄?」
「楽しかったよ。ありがとう。キミが本命の男に出会える事を祈ってるよ」

「もう!ばか!私の本命は加賀さんだったのに!」
「ごめんな」

「その女とダメんなったら連絡してよね!」
「あっはっはっは。分かった」
「大好きだったんだからね!」
「ありがとな」

一緒にいる女の人は誰だろう・・・
パタパタと長い廊下のカーペットの上をヒールで走り去るのが聞こえた。

フー・・・

思わぬところに遭遇してしまった。

「で?」

急に頭上で聞こえた声にビックリする。

「キミは総務?立ち聞きはよくないな~」

苦笑いしながら私の肩をぽんと叩く。

「す、すみません」
「あ~・・・給湯室の補充か」
私の手の中のお茶っぱを見てつぶやいた。
「はい・・・」
「邪魔したのは俺か。ごめん」

「いえ」

「今のはナイショな」
「・・・はい」

私に向けたウインクがやけに色っぽくて。
その笑った顔が可愛かった。

年上の加賀さんを可愛いなんて変だけど。

加賀さんに・・・
本気の彼女が出来たとしても。
彼の魅力と罪は色褪せない―――


END****






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by ichigo-ichigo205 | 2018-03-19 14:46 | ・蛍の想ひ人 | Comments(0)