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いちごの妄想小説

甘い朝

神戸に引っ越して来る時、三浦さんは2日休みをとってくれた。
土日を入れて4日。
三浦さんは至れり尽くせりだった。

もともと節約していた独り暮らしに大した家具はなくて。
大型の電化製品は全部リサイクル屋に売ってきたし
1番多い荷物は洋服だったけど、それは宅配便で送った。

三浦さんが「勝手にきめてもぉたけど」と言ったマンションは
三ノ宮駅から程近く、通勤に便利な場所で
「俺は海外時間に合わせる事も多いし会社の近くにしてん」
と言っていた。

私は仕事もまだ決まっていないし、土地勘もないから
三浦さんが住みやすいところ でいい。

「お帰り」
三浦さんは新神戸の駅でそう言って私を迎えてくれた。
「いらっしゃい」でも
「ようこそ」でもなく

「お帰り」だった。

一緒に食器を買いに行って
一緒に雑貨を買いに行って
一緒にそれらを部屋に並べる。
一緒にスーパーの位置を確認して
一緒に買い物をする。

結婚したわけでもないのに、同棲って不思議な感じ。

休みが終わって、今日から三浦さんが出社する時
朝ごはんを作って、玄関までお見送りに行く。

「今日ははよ帰ってくるから」
「でもお休み 明けだから。無理しないで」
「これから先、ずっとはよ帰られへんかもしれんし今日ははよ帰ってくるわ」
「分かりました」

「私も落ち着いたら派遣に登録するので」
「急がんでええよ」

「あんま無理すんなよ」

「え・・・」
「ただでさえ環境ががらりと変わったんやし。
真美ちゃん一人ぐらい俺、養えるから。でも結婚してへんのにそれはイヤなんやろ?」
引っ越してきた日の折半にしましょうと言った私の言葉を笑った。

「イヤ・・・です」
「うん。ちゃんと分かっとぉ。でも急がんでえぇ」
「はい」

「真美ちゃんの事は俺が守るから。安心して」

朝から・・・
朝からこのオトコは玄関で恥ずかしげもなくそんな事を言う。

「真美ちゃんが神戸に一生おってもえぇと思えるようになったら
ちゃんとプロポーズするから」
「・・・・はい」
「それまでは神戸を好きになる事だけを楽しんでくれたらえぇから」

三浦さんは嬉しそうに、笑いながら片目をつぶった。

「・・・・はい」
「じゃぁ行ってくるわ」

その言葉は『同棲』が始まったんだと改めて私に感じさせた。

三浦さんは背をかがめて私にそっとキスをする。

その行為に少しボーっとした私に

「スッピン、可愛いな」

と笑いながら出かけて行った。
「いってらっしゃ、い」

パタンとドアが閉まった。

END****







Commented by おーひら at 2018-04-10 22:00 x
いいなあ。
良い朝だなあ。
甘ったるくて羨ましいなあ。
と、何回も読み返しちゃいました♡
スッピン、かわいいな。とか(≧∀≦)
なんて羨ましいのでしょう。
Commented by ichigo-ichigo205 at 2018-04-13 14:34
おーひらちゃん
そうね~若いっていいわね~(笑)
スッピンが可愛いのもね~
若いからだね~(笑)
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by ichigo-ichigo205 | 2018-04-06 12:51 | ・素肌のままで | Comments(2)