人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

いちごの妄想小説

朝凪×蛍 ナツの想ひ


「好きな人、出来たよ」

そんな私の嘘を見破るように博之は聞いて来る。

「その男に決めた理由は?」

どんな理由を挙げたって私の中で博之に敵う男はいない。
どんな理由にしようかと一瞬迷った時
ふと、先日博之の弟の信くんに言われた言葉を思い出した。

27歳になった信くんは今年・・・・
博之の年を追い越した。

「・・・10年以上、私と一緒にいてくれるって約束したから」

信くんはそう言って、私を背中から抱きしめた。

「・・・・そうか」

きっと博之は全部全部、全部気がついてる。
その言葉を言ったのが信くんで
少し前から信くんに告白されてる事。

そして―――好きな人が出来たって言う、私の嘘も。

それでも10年以上一緒にいるなんて
今の私には何よりも欲しい言葉で
信くんはそれを知りながら、私を抱きしめた。
10年以上一緒にいて。
でも、その言葉は言葉にならなかった。

寂しさで一緒にいてもらったとしても
信くんを博之の様に愛する事は出来ないから。

博之は私が好きな人が出来たって言わないと
いつまでもこの世をさまようことになる。

成仏して、欲しい。

亡くなった直後は、どんな理由でもどんな姿でも
例え1年に1度でも一緒にいたかった。
そばに居てほしかった。

でも、もう十分だよ。
その心を開放して、あげたい。

「これで、やっと成仏できるよ」

博之は全てを知った上で
私の気持ちも知って
そして、私のために成仏すると言ってくれた。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

引きとめてごめんなさい・・・

この涙が枯れることなんてあるんだろうか。

博之を過去にする事なんて出来るんだろうか。

それでも私は博之の心を私から解放する義務がある。

―――あんなに愛してくれたんだから。

愛してるよ。
愛してる。

なにがあっても愛してる。

あいしてるよ、ひろゆき・・・


END****





名前
URL
削除用パスワード
by ichigo-ichigo205 | 2018-05-01 14:09 | ・蛍の想ひ人 | Comments(0)