花火大会⑩

懸賞 2018年 09月 06日 懸賞


横浜の花火大会は、学生時代に来たきりで
思い出の中にある人ごみよりもさらに凄い人の波だった。

「会えんのかよ」

待ち合わせ時間を過ぎて
若干不安になった待ち合わせは桜木町駅で
「え~。職場の駅?」
と、美咲は嫌がっていたけど、もうここまでくれば
隣の関内駅だろうと、会社の人に会う確率は同じな気がする。

あんだけ社員数が多い職場で、横浜の花火大会で誰にもあわないはずはない。

「山崎!」

人の波を縫うように近づいてきた美咲は浴衣姿だった。
「浴衣着てきたんだ」
俺の思わず言ったその言葉に美咲はちょっとムッとして

「なぁに?嫌だった?遅れて悪かったわね」
「いや、俺も着てくれば良かったと思って。可愛いよ」
そう言った途端、照れてそっぽを向いた。

うん。可愛い。

「もう。何言ってんのよ。行こ」

改めて、この子と付き合えて嬉しいと思う気持ちが胸いっぱいに広がって
「危ないから」
と口実に手をつなぐ。
何回もつないできたはずの手なのに、いつも嬉しい。

「ちっちゃい手だなぁ」

「そう?」

俺の手のひらにすっぽり隠れる手のひらは絶対俺が守ってやると思わせる。

会社にほど近い横浜港から、花火が上がるのを2人で混みあう人ごみの中で顔をあげた。

あまりの混み具合で
俺は後ろから美咲を抱きしめるようにそっとくるむ。

浴衣姿の彼女に、他の男が触れないように。

「来年も来よう」
「うん。山崎と一緒に来たい」
「だな」

来年も一緒に見ようと約束できる当たり前が幸せ。

小さい手のひらをくるむことのできる当たり前が幸せ。

俺は花火を見上げる美咲のうなじにそっとキスをした。


END****





by ichigo-ichigo205 | 2018-09-06 13:16 | ・乙女☆大作戦 | Comments(0)

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