エレベーターの中

懸賞 2018年 12月 11日 懸賞


新田常務の奥様の洋子さんが今日は同窓会だというので夕飯がないらしい。
「加賀、飲みに行こうぜ」
きっと夕飯を作っておくという洋子さんを『そんなこといいから楽しんで来いよ』なんて送りだしたんだろう。
「え?ヤだよ。今日は由布子さんと外食の予定だから」
加賀部長はそっけない。
「武田さんを誘えよ」
「イヤですよ。森川、昨日帰国したばっかりですよ?」
「じゃぁ、森川くんも誘うか!」
「・・・・イヤです」
「社内にばらすぞ?」
「何パワハラしてんですか・・・・」
「俺は帰るからな!」

全く、仕事以外ではいつまでたっても学生のような会話をして
三人でエレベーターに乗り込んだ。

数階下でエレベーターは止まってポンと言う小さな軽快音とともにドアが開く。

「ん?」

目の前の光景は、経管の岡本主任がウチの中村さんを抱きしめているところで・・・
岡本主任は腕の中から抜けだそうとする中村さんをさらにギュッと抱きしめた。

「俺たち乗らないのでどうぞお先に」

と、岡本主任はしれっと中村さんを抱きしめたまま言った。

静かに閉まるドアに新田常務と加賀部長は笑いをこらえていて
私は小さくため息をついて目をつぶった。

「武田さん、ちゃんと岡本に言ったか?社内では慎めって」
「言いましたよ!加賀部長こそ岡本主任は部下でしょう!」
「俺も言ったよ!仕事とプライベートは分けろって!新田は言ったのか?」
「言ったよ。仕事が終わるまでは秘書に手を出すなって」

「で?中村さんをモノにできると思う?」
新田常務がニヤッと笑った。

「どうかな~?アイツまだ仕事でいっぱいいっぱいだからな」
加賀部長もニヤッと笑う。

「止めましょうよ。部下の恋愛で賭け事するの・・・」
「何だよ?武田さんは賭けないのか?」
「・・・・そうですね~柳下くんが1枚かむのにランチを賭けます」

「柳下?」
「広報の?」
「ええ。あの子、意外と面白いですよ。野田岩さんのランチにしようかな♪」
「野田岩?武田さん勝ちに出たな?」
「ふふふ」
「へ~ぇ」
「柳下ね。覚えておこう」

その時、1階に着いてポンと言う小さな軽快音とともにドアが開く。
「加賀、俺久しぶりに由布子さんに会いたい」
「しょうがないな。一緒に連れてってやるよ」

そんな事を言いながら2人はタクシーに乗り込んだ。

「本日もお疲れ様でございました」

私はそのタクシーが見えなくなるまでエントランスで頭を下げていた。

END****






by ichigo-ichigo205 | 2018-12-11 06:58 | ・約束のピンキーリング | Comments(2)

Commented by さる先生 at 2018-12-22 18:16 x
ぐふふ。新田常務だ~
やっぱり素敵です!
Commented by ichigo-ichigo205 at 2018-12-25 14:13
さる先生
お久しぶりです~!
常務お気に入りですね♪
ありがとうございます~!
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