『いま』から

懸賞 2018年 12月 25日 懸賞

毎年のようにクリスマスの日に磯子にある横浜プリンスホテルを予約する。
レストランと部屋を。

毎年、そのリザーブは当日キャンセルする。

毎年の事でレストランでも話題になっていたのかもしれない。
何回目かのキャンセルの電話を入れた時、レストランの支配人が「本日は最後までリザーブとさせていただきます」
と言って「reserve」の札を置いたままにしておいてくれたらしい。

あ・・ぁ。1度使われたな。
新田が使ってくれたんだった。

予約主の現れないその席は毎年レストランで話題になっていたらしい。

そして、今日。兄貴が亡くなった翌年から予約を始めて6回目のクリスマス。
俺は静かにその席に座る。

6回目にしてやっとこの席に座る事が出来た。

「信之」

優しく俺の名前を呼ぶその声に嬉しさをかみしめてゆっくりと目を開ける。

「由布子さん」
「お待たせ」
「いや・・・俺も『いま』来たところ」

6年間のその想ひは全てこの瞬間に溶けていくようだった。

そう。「いま」来たところ。

俺たちのこれからは「いま」から始まる。

向かいに座った由布子さんの手を取ってその指先にキスをする。
「ちょっと」
少し恥ずかしそうに手を引っ込めようとする由布子さんに
俺は逆に手を引っ張る。

「世界中に見せびらかしたいんだ。俺の恋人を」
「・・・・」
「由布子さん、メリークリスマス」
「信之、メリークリスマス」

俺は再びその指先にキスを落とした。


END*****

皆様メリークリスマス!
素敵なクリスマスをお過ごしください☆






by ichigo-ichigo205 | 2018-12-25 14:33 | ・蛍の想ひ人 | Comments(0)

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