除夜の汽笛

懸賞 2018年 12月 31日 懸賞

安達さんと迎える初めての大晦日、そして新年。

「大晦日の夜中、出られる?」

そうデートに誘われて
「ちょっとだけおしゃれしておいで」
職場近くの赤レンガに二人で行ってみれば、赤レンガではカウントダウンパーティが開かれていた。

「うわっ」

大人の世界に踏み込んだようなそのパーティになんだか子供が紛れ込んだようでドキドキする。

「大人って!こんな素敵な年越しパーティをしてるんですか!」

渡されたピンク色のシャンパンが薄暗い店内にきれいに光った。

その時、店内でカウントダウンが始まった。
新年へのカウントダウンだ。

「5・4・3・2・1・・・」
「0!」

と、声をそろえたとき、大きな汽笛が聴こえ始めた。

「なになに!すごい!!」

その汽笛の大きさにびっくりした私に安達さんは楽しそうに笑った。

「これが横浜の新年だよ」
「すご~い!」
「新年の0時に横浜港に停泊中の船が一斉に汽笛を鳴らすんだ。
横浜の除夜の汽笛だよ」

あまりに大きな汽笛の音に話はお互いの耳元に口元を近づける。

「美鈴、あけましておめでとう」
「安達さん、あけましておめでとうございます」

「俺からのプレゼント」
「え?え?」
左の手のひらに乗せられたのは小さい細長い可愛くラッピングされたもので
「開けてごらん」
安達さんは私の右手からジャンパングラスを受け取った。

ラッピングを開けると口紅で
「口紅?」
「そう」
安達さんは私の手から口紅をそっと奪い取ると
私のあごをもって上を向かせた。

安達さんに会うために一生懸命したお化粧は、口紅がもう取れかけていて
その唇に、安達さんは今くれた口紅をそっとつける。

そしてそのまま、周りも気にせずにキスをした。

「この口紅を付けるたびに、俺とのキスを想い出せ」

そう言ってニヤッと笑う。

横浜港の汽笛はまだ鳴り続いていた。

END***


2018年も作品を読んでくださってありがとうございました。
2019年もよろしくお願いいたします。



by ichigo-ichigo205 | 2018-12-31 22:52 | ・5センチの景色 | Comments(0)

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