カテゴリ:・数学のセンセイ( 8 )

懸賞 懸賞

文化祭

懸賞 2018年 02月 06日 懸賞

高2の夏休みが明けて、まだまだ暑く、授業なんか身に入らない6時間目。
LHRで秋の文化祭の実行委員を決める話し合いがあった。

俺はいつもLHRは寝る時間だと認識していたが
この日だけは違う。

「じゃぁ、誰か立候補は・・・いるわけない・・え!」

担任が毎回のようにしばらく待って、くじにでもしようと計画していたところに
俺は勢いよく手をあげる。

「俺やるから」

誰かが手を挙げただけでもびっくりなのに
それが「俺」だった事に担任以上にクラス中がビックリした。

「え?山口?」
「なに?智樹がやるの?」
「え?智樹がやるなら私もやる!」

とアカリも手を挙げて、1分ですんなり実行委員が決まった。
よし。計画通り。

実行委員が集まった最初の役員会でも俺は頑張る。

「委員長に立候補します!」

高校の3年間で、文化祭の実行委員長になれるチャンスは高2の1回のみ!

俺はクソめんどくさい役員会に毎回出て
委員長の仕事を頑張った。

まぁ・・・
委員長が俺だから?心配した周りが副と書記に優秀な生徒を付けたので
滞りなく文化祭当日を迎える事が出来た。

委員長は当日、文化祭が滞りなく行われるか学校中をパトロールするのも重要な仕事だ。
そう。
実行委員の顧問とともに。

今年の顧問は弥生ちゃんだ。
弥生ちゃんにも「立候補しろよ」と言っておいた。

俺たちが2人で文化祭を周っても誰も変に思わない。

この腕章がある限り―――

「智樹が高校生のうちに一緒に周れるとは思わなかったな~」
小さい声でそう言いながら、
「弥生ちゃ―ん、ウチに寄って行って~」
と誘う生徒に言葉をかける。

同じ学生生活の時間を過ごせない俺たちにとって
これは夢の様な時間で
きっと最後のチャンスなんだと分かっていた。

「弥生ちゃん、2-Aのお化け屋敷入ろうぜ」
「ん?」
「全部全部、一緒に入ろう。思い出を作ろう」

同じ『生徒』じゃないけれど
同じ『学校』なんだから、それでいいじゃないか。

2人で入ったお化け屋敷の数分間
まっ暗い教室の中で俺たちは手をつないだ。

その時間だけは6歳差の高2の男と数学のセンセイじゃなくて
ただのカップルだった。

「年の差がなければ、こんな風に全部の行事を楽しめたのかな~」

少しさみしそうに笑う弥生ちゃんに

「6歳上の弥生ちゃんが可愛くて好きだよ。
同級生のどの女子よりも可愛いよ」

お化け屋敷から出る少し前に、そっと頬にキスをする。

実行委員長なんかめんどくさくて絶対にやりたくない。
文化祭自体、めんどくさくて出欠をとったら帰りたいぐらいだ。

でもね。弥生ちゃん。
弥生ちゃんと周る文化祭は楽しいよ。
一緒に周るためなら委員長にも立候補するよ。

いい思い出になった。ありがとう。

大好きだよ。弥生ちゃん。


END*****







[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2018-02-06 12:12 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

7時間目

懸賞 2017年 07月 20日 懸賞


弥生ちゃんが学園祭に来てくれて
大学の皆に、俺の彼女が幻なんかじゃなくて
年上のオンナだってばれて、数日たった時

俺にまとわりついて来ていた女が
サークルの飲み会でみんなが酔って周りの話に関心を持たなくなった頃
恨めしそうな顔で俺に話しだした。

「ほんとに彼女がいたんだ」
「俺は初めから彼女がいるって言ってたぞ」
「嘘かと思ってたんだもん」
「嘘つくかよ」

「あの人、行くつ上?」
「6こ」
「おばさんじゃん・・・」

「・・・・だから?」

自分の声が冷たくなるのが分かった。
お前に弥生ちゃんの何が分かる?

「大学に一杯いるじゃん」
「なにが?」
「そんな6こも上のおばさんじゃなくてさっ」

「俺にとってのオンナは、弥生ちゃんしかいねーよ」
「・・・・」

「逆に6こ上だから、学校では普通に知り合えないだろ。
出会えたことに感謝してるよ。マジで」
「・・・・でもさっ」

色々ごちゃごちゃ言う女の弥生ちゃんへの心ない言葉を聞いているのもいささか嫌になってきて
俺は何も言わずに立ち上がった。

「帰るわ」
「え?山口、もう帰んの?」
「あぁ。弥生ちゃんとセックスしたくなった」

別に小声で言ったわけでもないけど
大声で言ったつもりもない。

けど、丁度立ち上がった俺になんとなくみんなが注目していた時で
俺のその言葉はしんとした居酒屋の個室に響いた。

「智樹っ!」
「あのさ、俺の彼女は弥生ちゃんだけ。
もう何年も前からそうなの。
そしてこれから先もずっとそうなの。
勘違いすんなよ?勘違いさせるような事もしてないだろ?」
「・・・・」

「んじゃ、お先」

そう言って女の方も見ずに居酒屋を後にした。

弥生ちゃんの部屋に行って、授業の用意をしていた弥生ちゃんをいきなり抱きしめてキスをする。

「なに?何かあった?」
「何もないよ」
「そう?なにか・・・キツイこと言って。言った智樹も傷ついて後悔してるんでしょ」
「・・・なにそれ」
「何となくそう思っただけ」
「センセイかよ」

「彼女です」

「うん。そうだな」

弥生ちゃんには一生敵わない。
愛してるよ。弥生ちゃん。

END****









[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2017-07-20 14:51 | ・数学のセンセイ | Comments(4)

プレゼント

懸賞 2016年 01月 04日 懸賞

大学受験を終えて、翌日からバイトを始めた。

高校時代は弥生ちゃんが「バイトより勉強をしなさい」と
バイトをするのを快く思わなかったのでしなかった。
付き合って3年間。
弥生ちゃんにあげるプレゼントは高価なものなんか1つもなくて。
もちろんプレゼントは値段なんかじゃないって分かってはいるけど
それでも、デートのお金も弥生ちゃん持ちで、
「社会人になったらたくさん奢ってね」なんて笑う弥生ちゃんに
申し訳なく思っていても、俺自身の力ではどうにもできない問題だった。

でも、それでも隠れてバイトをするより
勉強してきっちりいい成績をとる方が「高校生の俺」には大事だと自分を納得させた。
そして大学受験を終えて、バイトを始めた。
もちろん弥生ちゃんにプレゼントをするために。

春は弥生ちゃんも新学期で忙しいから
俺がバイトで忙しいことは気が付いていないようで
俺は時給の良いバイトに精を出した。

初めて自分の稼いだ金で
初めて精いっぱい考えて買い物をした。

何だか嬉しくなって笑いを隠せない顔で家に帰ると
姉貴のところに遊びに来ていた弥生ちゃんがいた。

「弥生ちゃん」
「智樹。おかえり。近頃あまり会えないけど、大学はどう?」
「ああ~こいつバイトばっかりしてるのよ」
「え?」
「姉貴!」

「智樹、バイトしてるの?知らなかった。
新年度で忙しかったとはいえ、私、彼女失格だね」
少し悲しそうに笑った弥生ちゃんの正面に座って
「俺がナイショにしてたんだから知るはずがないよ」
と、手を握る。
「やっと大学に合格して、バイトをして
弥生ちゃんに俺が稼いだ金でプレゼントをしたかったんだ」
「智樹」

「弥生ちゃんにとってはまだまだのモノかもしれないけど
今の俺に納得できるものが買えたから
バイトは減らしてまた勉強中心の生活に戻るよ」
「そんなの・・・いいのに」

今さっき買った弥生ちゃんへのプレゼントを弥生ちゃんの手のひらに乗せた。
「智樹」
「あけてみて」
弥生ちゃんの喜ぶ顔が見たくて
ガキのようにワクワクした。

「時計だぁ」
悩んで悩んで、買ったそれはブレスレット型の時計で
嬉しそうに、本当に嬉しそうににこにこしながら弥生ちゃんは腕にはめた。

「いろいろ考えたんだ。何がいいか。何が喜んでもらえるか」
「智樹がくれるものだったらなんでも」
「そう言ってくれて嬉しいよ。でも、俺が学校を卒業して
一緒にいられなくなって。ずっと弥生ちゃんが身につけてくれるモノがいいなと思ったんだ」
「うん」
「あと。今まで3年間。弥生ちゃんを彼女だと大声で言えなくてごめん。
弥生ちゃんも俺を彼氏だと言えなくてごめん。
でもこの時間は俺たちにとって大事な時間だったと思う。
そして―――
これからも一緒の時間を過ごしていきたい。そんな気持ちをこめて」
「智樹!」

弥生ちゃんが俺に抱き付いた。
「ありがとう。ずっとずっと大事にする」
「うん」

「はいはい。そーゆー事は二人の時にやってね」
甘い空気を断ち切るように姉貴の声が響いた。

「ちょっと見せてね~」
と、抱き合っている俺たちの隣に立って時計をはめた弥生ちゃんの手首を持ち上げて
「あら。素敵。智樹にしてはいい趣味じゃない」
なんて笑う。

そんな姉貴に苦笑いして。
もう1つの包みを姉貴の手に押し付ける。
「何?私にもくれるの?」
怪訝そうな顔をして包みを開けて息を飲んだ。
「ちょっと・・・これ、弥生とおそろい?なんで私にも?」

弥生ちゃんの肩を抱きながら、当惑している姉貴を見上げる。
「弥生ちゃんを俺に会わせてくれたのは姉貴だから」
「・・・・」
「親父とお袋に弥生ちゃんの事をフォローしてくれたのも姉貴だし。
俺たちはいろいろ姉貴に助けられてる。
それに、何より俺と弥生ちゃんより
姉貴と弥生ちゃんのほうが付き合いが長いだろ」
「・・・・」
「だから。違うものよりおそろいのモノを送りたかったんだ」
「智樹」

「弥生ちゃん、弥生ちゃんだけに、じゃなくてごめんね。それは次の時でいいかな」
「ううん。真樹とおそろいですごくうれしいよ。ね。真樹」
「う、うん。私にもありがとう」

そんな智樹が大好き。
そう言って弥生ちゃんは姉貴の前で俺にキスをした。


END*****





[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2016-01-04 09:14 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

ファーストキス<弥生編>

懸賞 2015年 07月 22日 懸賞

夏休みが始まる直前に親友の真樹にバイトの話を持ちかけられた。
真樹の弟が今年高校受験なのに、夏期講習前に退塾になったらしい。
今から新しい塾を探すより、夏休みの間勉強を見てくれないか?という。

「弥生、教員志望でしょ。ちょっと見てやってよ」
「いいけど。なんで退塾なんかになったの?」
「う~ん・・・智樹はね、勉強はそこそこできるのよ。
でも、素行が悪すぎるのよ」
「素行?」

「塾でキスしてるのを先生に見つかっちゃったらしいの」

え?え?え?え?えええええ?
今年高校受験って事は中学生って事でしょう?
中学生が、塾でキスなんかするの?

「あいつもさぁ。バカよね。場所を選べって」

真樹・・・そこじゃないと思う・・・。

「でね。引き受けてくれた場合、絶対にあいつの毒牙にかかっちゃだめよ。
私からもよく言っておくけど、あいつはちょっと可愛い子にはすぐキスするから!」
「・・・・」

「隙を見せちゃだめだからね!」

「真樹。そんなに危ないと思ってるなら、男子を家庭教師として紹介すればいいのに」
「男だったら絶対に勉強しないってあいつが言うのよ・・・」

そう紹介されて、家庭教師を始めてみると、なるほど智樹君は出来ないどころか
勉強は出来る方だった。

そんな智樹君にキスをされ、思わずグーで殴った。
ファーストキスだったのに。

泣いてしまった私を優しく慣れた感じに抱きしめてくれた。

何が、智樹君の琴線に触れたのか分からないけど、
その時から家庭教師の時間のたびに智樹君が私を口説いて来るようになった。

初めは真樹に言われていたように相手にしていなかったのに
毎日毎日、手を変え品を変え私を口説く姿が可愛くなってきた。

「弥生ちゃんさぁ。いい加減1回で良いからデートしようぜ」
「初めてのデートは好きな人とって決めてるの」
「弥生ちゃん、デートしたことないの?」
「いけない?」
「いけなくないです・・・」

「そんなこといいから、その問題解きなさい」
「出来た」
「智樹君志望校どこだっけ?」

なんだかだるそうに言った志望校の名前は、そこそこいい学校だったけど
智樹君の今の成績で無理なく入れるところで
「今からだったら、もっと上が目指せるよ?」
と言った私の言葉にも
「めんどくせ」
と、頬杖をついた。

「高校なんかどこに行っても同じだよ。それよりデートしようぜ」

この子、一生懸命になることってあるのかな?

「ねぇ。志望校3つ上げて、合格したらデートしようか?」

なんでこんな事を言ったのか。
今までの私からは想像もつかなかったけど。
この子が一生懸命勉強する姿を見たかったのかも。
しかも、私との約束のために。

「弥生ちゃんさ?3つって気軽に言うけど、3つ上げたら公立で県内1の学校になるけど?」
呆れたようにそう言えば
「でも、私とデートしたいんじゃないの?」
とたきつけてみる。
そこまでの・・・魅力は私はないかな?

じっと私の目を見て智樹君は中学生とは思えないような顔つきでニヤッと笑った。

「じゃぁ、その上の私学目指そうか」
「え?」
「どうせならとことんやろうぜ」
「・・・・」
「弥生ちゃん、自分の初デートを賭けるのに3ランクアップの合格は安売りし過ぎ。
4ランクアップで合格してみせるよ」
「・・・・」

「俺さぁ。いい加減に見えるけど。弥生ちゃんに本気なんだよね」
「・・・・」

「15歳の子供がどこまで21歳の大人の女に本気かって見せてやるよ」

そう言った半年後。
智樹君は見事に合格した。

二人で見に行った合格発表の掲示板の前で
智樹君はそっと私の手を握って小さく「ヨッシャ」とつぶやいた。

智樹君は半年前、この学校に合格するレベルには全く達していなかった。
どれだけ頑張ったか1番近くで勉強を教えていた私が1番良く知ってる。

じっと合格番号から目が離せなかった私の耳元で
「本気だって分かってくれた?弥生ちゃん」
と小声で言った後に、耳たぶにキスをした。

大学3年生までファーストキスもまだだった私はお世辞でも自分に魅力があるとは思っていない。

けど、そんな私とのデートのために
こんなに頑張った智樹君にドキドキしてる。
6コも年下の中学生に。

私は智樹君とつないだ手にぎゅっと力を込めた。


「弥生ちゃん!」
今日は仕事帰りに智樹とデートの約束をして待ち合わせた。
「もうすぐ夏休みだな」
「その前に私は期末テスト作らなきゃ~」
「頑張れよ。センセイ」
「うん」
「俺たちのファーストキスをした日を思い出した」
「ええ~」

あれから5年。今智樹は私の隣にいる。
智樹はもうすぐ、あの時の私と同じ年になる。
ファーストキスもファーストデートもエッチの初体験も全部智樹とだ。

「可愛いかったな。弥生ちゃん♪」
「今は可愛いくないみたいじゃない~」

「いや。俺にとってはいつまでも最高に可愛いオンナだよ。
もう、これ以上本気にさせないでよ。弥生ちゃん」

そういってもう何千回目かのキスをする。

「私以外の誰ともキスしないで」
「もちろん」

大好きよ。智樹。

END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2015-07-22 12:00 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

ファーストキス<智樹編>

懸賞 2015年 06月 06日 懸賞

中3の夏休み前。
授業が終わった塾の教室で隣の中学の女子とキスしていたのを講師に見られた。
受験生なんだぞ。と散々説教され
そんな態度じゃ夏期講習を受けても無駄だなと言われたことにカチンときた。

ムッとした顔をしていたら反省が足りないと退塾させられた。
別にキスしていた女子は好きではなかったから
会えなくなることに不都合なんかなくて
何回もメールや着信があったけど、めんどくさくてすべて無視した。

勉強もせずにごろごろしていたら、姉貴が大学の友達をカテキョとして連れてきた。

反抗するのもめんどくさくてフツーに授業を受けていた。

「智樹君。キスしてるのが塾の先生に見つかったんだって?」
飯田センセイがウチに来るようになって3回目ぐらいの時にそう聞かれた。

「まーねー。しくったよ」
「・・・・」
「はい。できたよ」
出された問題を解いて渡すと回答を見て一言
「出来るじゃない」
といった。
「出来るよ?俺別に落ちこぼれじゃないよ。姉貴だって分かってるはずだよ。
飯田センセイだってそう聞いてるんでしょ?ただ受験生だから夏休みを
それなりに過ごせってことだろ?」

「なんで・・・なんで塾の教室でキスしたの?」
「は?場所なんか関係ある?」
「え?」
「したいからしただけ」
「・・・・」

「飯田センセイ、処女でしょ」
俺は今日だされた問題の中で1番難しい問題を解きながら言った。
「え!」
「分かるよ。話してればね。結婚相手のためにとってあるの?
それとも今までチャンスがなかった?」
「なっっ!」
「別にどっちでもいいけど。はい。この問題も出来たよ」

「もっと自分を大事にしないと」
そう言う飯田センセイをじっと見つめる。
「大事って何?俺は俺の気持ちを大事にしてるけど?
ちょっとかわいい子がいればキスしたいと思うだけ。
イイ女がいればセックスしたいと思うだけ。いけない?」

「智樹君が好きな女の子ができたら後悔するよ」

くるくると回していたシャーペンを止め、じっと見つめる。

「後悔させてよ。弥生ちゃん」
「え?」
「俺を本気にさせてよ」
「何言って・・・」

頬杖付いていた手をゆっくりと顎から外して
飯田センセイの顎に手を掛けた。

飯田センセイに逃げる隙を与えて。
それでも逃げない飯田センセイは
逃げないのか、逃げられないのか。

ゆっくりとキスをした。

からかいのはずだった。
おそらくファーストキスもまだだろう飯田センセイをちょっと困らせてやろうと思った。
母親に軟禁状態にされている夏休みに嫌気がさして
色気のないカテキョにキスしてやろうと思った。
欲情なんかこれっぽっちもしてないはずだった。

思いのほか、その柔らかい唇をゆっくりと味わって
夢中になったキスをやめた途端に、ぶっ飛んだ。

なに!?

理解できなくて首を軽く振って頭をすっきりさせる。

おれ・・・
殴られた?

「最低ね」

今まで、おとなしいと思っていた女が
色気もなく地味だと思っていた女が
震えながら、グーで俺の左頬を殴っていた。

「いって・・・」

思いきり殴ったな。

「キスしたいならすればいい。
智樹君とキスしたい女の子とね。
でも、私はしたくないの。
最低のファーストキスだった!
本気にさせてよ?甘ったれるんじゃないわよ。
あんたは最低の男よ」

そういって、座り込んでわぁーっと泣き出した。

その勢いにびっくりして、泣き声にびっくりした。

「ご、ごめん」

女の子を泣かすのは俺の主義じゃない。
それでも泣き止まない飯田センセイをぎゅっと抱きしめた。

「ごめん。ホントにごめん」

しばらく泣いた後、我に返った飯田センセイは自分の起こした行動に
恥ずかしくなって涙をふいて帰ろうとした。

俺はいまどき、大人でスカートのポケットにハンカチを入れているその行為に
可笑しくなってくすくす笑った。
それと同時に、なんだかすごくこの人は純粋なんだって分かったんだ。
ポケットにハンカチでそんなことを思うのはおかしいかもしれないけど。
俺の知ってる女子は大きな化粧ポーチの中にハンドタオルは入っていても
制服でも私服でもスカートのポケットにハンカチはいれない。
そして、飯田センセイのハンカチは「ハンカチ」だった。
タオルじゃなくて、きちんとアイロンをかけたハンカチだった。

急にこの人が6個上のカテキョじゃなくて、可愛らしい女の子に思えた。

「ごめん。弥生ちゃんごめん」

そう言うと、同じぐらいの背丈の弥生ちゃんをギュッと抱きしめた。


「智樹!」
今日は大学帰りに弥生ちゃんとデートの約束をして待ち合わせた。
「なんかぼんやりしてたね」
「もうすぐ夏休みだな。と思って」
「その前に私は期末テスト作らなきゃ~」
「頑張れよ。センセイ」
「うん」
「俺たちのファーストキスをした日を思い出してた」
「ええ~」

あれから6年。今弥生ちゃんは俺の隣にいる。
俺の本気って意味での「ファーストキス」もきっとあれなんだと思う。

「可愛いかったな。弥生ちゃん♪」
「今は可愛いくないみたいじゃない~」

「いや。俺にとってはいつまでも最高に可愛いオンナだよ。
もう、これ以上本気にさせないでよ。弥生ちゃん」

そういってもう何千回目かのキスをする。

「私以外の誰ともキスしないで」
「もちろん」

大好きだよ。弥生ちゃん

END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2015-06-06 00:00 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

俺だけのホワイトデー

懸賞 2015年 03月 14日 懸賞

弥生ちゃんが何となく元気がない。

「どうした?」
そう聞くのは簡単な事だけど、
それで正直に答えるとは思えない。

友人関係とか仕事関係とか、そんなことなら俺の出番じゃない。

けどな。
男関係ならガッツリ俺の出番だし。

まさか、生徒が弥生ちゃんにちょっかい出してんじゃねぇだろうな。
と、俺は自分の事を棚に上げて心配になった。

ホワイトデーは土曜日で弥生ちゃんは午前中に授業が終わって
はやめに仕事も終わるだろう。
そう思ってサプライズで待ち伏せする事にした。
2年ぶりに来た学校は何も変わっていなくて
裏口近くで時間を見計らって待っていた。

そこに、体育科の岩田と弥生ちゃんが歩いてきた。
なんだ?あいつ。

日も傾きかけた午後の道で、俺に気付かず通り過ぎた2人の会話は
ため息が出るもんだった。

「飯田先生。この後、早めの食事に行きませんか?」
「2人での食事はちょっと」
「学年末テストも終わったことですし。今日はホワイトデーなので奢りますよ」

ホワイトデー・・・ねぇ。
岩田ぁ、弥生ちゃんにチョコもらってねーだろ?

「今日は用事がありますので」
「じゃぁ、いつ行きますか?」

そんな二人の会話にため息が出る。
岩田は女の誘い方も知らねぇのか。

弥生ちゃんもきっぱり断ってやればいいのに。
それでもいい加減、弥生ちゃんが可哀そうになって声をかけた。

「弥生ちゃん」
「あ・・・。智樹」

まずいところを見られたという顔と
助けてという顔と入り混じって俺を見る。

「迎えに来たよ。ホワイトデーだから。ご飯食べに行こうぜ」

ニヤッと笑って、手を伸ばす俺の手にすがるように身を寄せた。
「山口?」

お!2年前の卒業生の名前を覚えてるなんて岩田も記憶力いいな。
そんな岩田を無視して弥生ちゃんに話しかけた。
「一緒に帰ろう」
「うん」

「山口、飯田先生に何してるんだ」

俺が弥生ちゃんの腰にまわした手を指差して言った。

「岩田センセイ。俺はもう生徒じゃない。あんたに何かを言われる筋合いはないよ。
弥生は俺の彼女。いい加減に付きまとうのはやめてくれる?」
「智樹・・・」

「い、飯田先生。元生徒と付き合ってるんですか?」
「脳みそが筋肉の岩田には分かんねぇよ」

そう言って弥生ちゃんを引き寄せてほほにキスをした。

「岩田センセイ、もうちょっと女はスマートに誘わないとね」
「・・・・」
「じゃぁな。もう二度と弥生を誘うんじゃねぇぞ」

呆然としている岩田を残して俺は弥生ちゃんの腰を抱いたままその場を去った。

「これかぁ。近頃弥生ちゃんがため息をついていた理由は」

もっと早くに動いてやれば良かったな。
そう思って悔しくなる。

「ごめんね。言い出せなくて」
「ん。出来れば弥生ちゃんから言ってほしかったけど。
俺もため息の事は知ってて様子を見ちゃった。ごめん」
「ううん」

「これから、男がらみの事はすぐに言って。
絶対に俺が解決するから」
「うん」

「全くウカウカしてらんねぇな」
俺は弥生ちゃんの腰を抱く腕に力を入れた。

「弥生ちゃん。今日はホワイトデーだから。朝まで一緒にいようね」
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2015-03-14 04:52 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

6時間目

懸賞 2014年 09月 15日 懸賞

近頃、ある女がウザイ。
教室でも、サークルでも必ず俺の隣にいる。
はじめは軽くあしらっていたが
彼女のように振舞いだしたので
極力避けるようにしたけど、それでもいつも距離が近い。

俺の周りは彼女だと認識し始めた。
うぜぇ・・・

そんな女は軽く無視して大学生になって初めての
学園祭に弥生ちゃんを呼んだ。
俺は弥生ちゃんと一緒にキャンパスを歩きたかった。
「俺の大学生活。見てよ」
と言ったのに、なぜか躊躇した。

「その日、数学科で研修があるの」
「日曜日なのに?」
「うん」
「・・・ふ~ん」

うそだ。
弥生ちゃんの嘘なんかすぐに見抜けるよ。
俺がさ。どんなに弥生ちゃんを好きだか、弥生ちゃんはわかってない。

弥生ちゃんは俺の友達に会うのを嫌がる。
年齢を意識するとか言ってるけど。
俺にそんなものは関係ない。
けど。女心もわからない。

無理やり誘っても仕方ない・・・か。

分かった振りをして向かえた学園祭当日。
俺は楽しむ気にならなくて
サークルの店番をずっと引き受けた。
くそ面白くもない学園祭だったな。
終わりが近づき、みんなでそろそろ片付け始めたとき、

「ね?終わったらさ、二人でお疲れ様会しようよ♪」
そんな風に耳元で笑う女は紛れもなく「俺の同級生」だ。
絶対に俺と弥生ちゃんが共有できない時間をこの女は持ってる。
弥生ちゃんも・・・大学でこんな風にどこかの男と時間を共有したんだろうか。
絶対に埋まらない俺たちの時間と年齢差に悔しさがこみ上げてくる。

「・・・・」
「ね?智樹。聞いてる?」
俺の腕にぶら下がるように媚を売ってくる女の言葉なんか
一言も耳に入らなかった。
俺の視線の先には弥生ちゃんがいた。

あぁ、見られたくない場面を見られた。
慌てることなく、そんなことを頭の片隅で思っていた。
こんなのを見たくないからこそ、弥生ちゃんは来るのを嫌がったのに。

腕にまとわりつく女をもう、拒絶するのもめんどくさくなった。

逃げるのか?

いつもだったらそのまま方向転換する弥生ちゃんを
追いかけるか迷っていた。

次の瞬間、俺たちの前にゆっくりと歩いて来て
「智樹、そろそろ終わり?」
と俺に笑いかけた。

「なに?智樹のお姉さん?」
「――いや」
俺の視線は弥生ちゃんから離さない。
「俺の彼女」

「ええぇ!彼女?智樹の?」
サークルのメンバーの視線が一斉に弥生ちゃんに向けられた。
「俺、彼女がいるって言ったよな?」
「だ、誰も見たことがないから、女よけの嘘だと思ってた」

「いや。こいつが俺の彼女」
弥生ちゃんは何も言わない。
きっと・・・・
ここに立っているだけで精一杯なんだろう。

「弥生ちゃん。後20分で終わる。一緒に帰ろう」
「うん・・・あの、打ち上げは?」

「いやいい。弥生ちゃんとセックスしてぇ」

俺の発言にサークルのメンバーがギョッとしてさらに注目を浴びた。

「ふふ。待ってる。一緒に帰ろう」

小さく息を吐き出してきれいに笑った。

ねぇ、弥生ちゃん。
俺がどれだけ好きか分かってよ。
自分がどれだけ愛されてるか自信を持ってよ。
同級生の女なんか蹴散らしてやるよ。

「今日は寝かせないから」

そんな言葉に真っ赤になりながら小さくコクンとうなづいた。


END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2014-09-15 15:58 | ・数学のセンセイ | Comments(0)

チョコキッス

懸賞 2014年 02月 24日 懸賞

「山口先輩。好きです」

高校も2年が終わろうとする時、昼休みに呼び出された。
こんなことはよくあることで気にも留めなかったけど
女の子が一緒に差し出したちっちゃな包みを見て思い当たった。

ああ。
今日はバレンタインか。

高3が受験のこの時期に数学のセンセイの弥生ちゃんはきっとバレンタインなんか忘れてる。
俺らの1コ上の受験生のために毎日遅くまで色々やってる。

来年は俺らの番だ。

けど、まだまだ実感はなくて。

そんなことをぼーっと考えていたら女の子への返事を忘れていた。
「山口先輩?」
「あ・・・・わりぃ。俺付き合ってる子いるんだ」
「・・・・噂は本当なんですね」

「あ~。どんな噂か知らないけど。これを受け取っちゃうとそいつ、泣いちゃうから」
「大事にしてるんですね」
「まぁね。大好きだから」

その子は、はにかんで笑った。
「はっきり教えてくれてありがとうございます」
「いや」

もう一度ぎゅっとちっちゃな包みを握り締めるとその子は駆けて行ってしまった。
名前を聞いてやることもしなかったな。
姿が見えなくなってからそんなことを思ったりした。


*:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜☆


今日は大学に入って初めてのバレンタイン。
サークルの女の子からのチョコを断り続け
夜になって弥生ちゃんちで弥生ちゃんの帰りを待つ。

まぁ弥生ちゃんは忘れてるだろうけど
今日はバレンタインだ。ちょっと豪華に夕飯でも作ろうと思って
ワインなんかも買ってきた。

俺が思ってるより早くご帰宅の弥生ちゃんは帰る早々にそわそわしてる。
「弥生ちゃん、仕事が残ってるなら、どーぞ?受験生を優先して良いよ?」

俺のそんな声に踏ん切りを付けたのかカバンの中から
チョコらしき包みを出してきた。

「はい。智樹」

俺は異物でも見るようにじーっとそれを見つめる。

弥生ちゃんがチョコぉ?

俺が受け取らないからか見る見る涙が眼に溜まってきた。
ちょっと、どうした?

「や、弥生ちゃん?」

「いらないの?」
「いやいや。いるいる。ありがとう」

あわてて受け取って中身を見たけど、やっぱりチョコ。

「弥生ちゃんがこんな女の子っぽい事珍しいね?」

俺としては嬉しくてつい言った言葉だったけど
弥生ちゃんはさらに涙をぽろぽろ流した。

弥生ちゃん?

「2年前・・・・」

うん?2年前?俺高2?

「昼休みにこっそり智樹にチョコをあげようと思ったら。
裏庭で、誰かが智樹にチョコをあげてた」

ああ~。あれね

「なんか、学生の可愛い告白を見た後、こんな年上の私が浮かれてチョコをあげるのが急に変に思えて」

うん。

「あげられなかった」

そっか。あの頃、お互いにお互いの立場が苦しかったもんな。

「そのチョコ、俺もらった記憶ないけど?」
「い、家に帰って泣きながら食べちゃった。
去年は・・・智樹が受験でそれどころじゃなかったし」

も~~~~~~~~~・・・・・
弥生ちゃんっっっ!

俺はギュッと弥生ちゃんを抱きしめた。

「イベントなんかどうだっていいんだよ。
弥生ちゃんが覚えててくれればそりゃぁ嬉しいけど。
俺は弥生ちゃんが傍にいてくれるだけで嬉しいんだ」

「う、う、うぅ・・・」

俺のシャツで涙をふく弥生ちゃんが愛しい。

「チョコはあの時も、今日も、これからも弥生ちゃん以外からは受け取らない。
約束する」

「う、うん」

「大好きだよ。弥生ちゃん」
「私も」

チョコなんかなくたって。
バレンタインを忘れてたって。

弥生ちゃんは俺の愛を独り占めだよ。

弥生ちゃん。ハッピーバレンタイン♪

俺はそっとチョコ味のキスをした。




END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2014-02-24 15:36 | ・数学のセンセイ | Comments(0)