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懸賞 懸賞

授賞式

懸賞 2018年 03月 29日 懸賞


その日、山田が持ってきたネットのプリントアウトを握りしめてマンションに帰った。

「大川さん!!」
「どした?」

「ねぇ!グッドデザイン賞!受賞したんだって?」
「・・・早いな」

午後1番で発表されたその賞は、国内で有名な賞で
「授賞式に行きたい!」
私はリビングでこう叫んでいた。

「良いけど、陽菜が俺と公の場に出かけたいって言うなんて珍しいな」

大川さんとはなるべく公の場に出ないようにしている。
結婚しているわけでもないのに
同じような業界の力のある男と出かけて、いち会社の会社員として
変な目で見られたくないからだ。

口さがない連中は、私が大川さんに媚を売っていると噂する。
オンナの力で、仕事を融通してもらっているとも言われた事もある。

半田にどれだけ女子力がないか知ったら、あいつらぶっ飛ぶだろうな。
なんて野口は言ってくれるし

大川さん、家事全部やってくれてるんだろう?仕事してるのにな・・・
なんて楠は気の毒そうに言う。

山田に至っては
大川さん、選ぶ女を間違えたとしか言えねぇ。
と呆れてる。

私が色仕掛けで男を捕まえられるはずがない、と3人は笑い転げる。

私はそんな3人にいつも救われてる。

私と一緒に公の場に出ると大川さんにも迷惑がかかる。
だから、私は同伴を避けているんだけど
仕事を始動した大川さんは色々な場に呼ばれる事も多く
また国内外で沢山の賞を受賞した。

はっきりとイヤだと言った事はないけど
私の気持ちをそっと分かってくれて
大川さんは色々な場に独りで出席するようになった。

「今年のグッドデザイン賞は私が注目していたモノが賞をとったのよ!」
「へ・・ぇ」

「やっぱり取ると思っていたのよねぇ~」
「そうなんだ」

「こんなデザイン奇抜だもん!」
「な・・ぁ?」

「なに?」
「陽菜はそのデザインが好きな訳?」
「誰でも好きだと思うけど?」
「俺のデザインより?」
「え?」

「陽菜はさ?俺のデザインがこの賞をとるって思ってた?」
「・・・・」
「思ってないよな?でもその賞は取ると思ったんだ?」

俺はジリジリとソファーに陽菜を追い詰めた。

「お、おかわさん?」
「俺は陽菜を大好きで、陽菜の分の家事をやるのもいとわないよ」
「う、うん。ありがとう」
「陽菜が結婚していないのに俺の同伴者になるのを嫌がるのを知ってて
今回の授賞式も独りで行こうと思ってたよ」
「うん・・・」

「なのに!俺のためじゃなく、他のやつに会いたいから
授賞式に連れて行けって、陽菜ちゃんそれはひどくないか?」

グッと、陽菜の背中をソファーに押し付けて
手首の自由を奪い去る。

自分のイライラした気持ちを抑えられない。
陽菜が帰ってきたら、この賞を受賞した事を伝えて
2人でお祝いをしようと思っていた。

受賞式に2人で出席できなくても
家で2人でお祝いすればいいじゃないかと思っていた。

それなのに、他の奴の受賞を見たいから連れて行けって、
いい加減俺の立場は何なんだよ。

「ごめん。でもこの絵が好きで・・・」
陽菜は俺のデザインをそこまで好きだと言ってくれた事はない。
同業としてお互いに仕事には一線を引いていたからだ。

分かってる。分かってる・・・

「あぁ、そうかよ」
まさか、同じデザイナーにココまで才能で嫉妬するなんて思ってもみなかった。
いつも嫉妬される側だった。
女の一言で見たこともないデザインに心から嫉妬する。

たいした女だよ。陽菜。

「お、大川さんも好きになると思うよ!」
同業者のデザインを尊敬はしても好きになる事なんてなかなかない。

「ならねぇよ」
まして、好きな女がココまで惚れているデザインを素直に好きになれる程俺は単純じゃない。

「でもほら!見て?」
俺に拘束された手のひらの中で
ぐちゃぐちゃにされたA4のコピー用紙には
今日受賞が発表されたデザインがあって

「ほらこれ!」
と陽菜はそのうちの1つを指差した。

「・・・・」

「ね!!!」
「・・・・陽菜ちゃん、これ?」
「これだよ!」
「もうさ~発売からずっと気になってたんだよね!」
「へ~・・・」

「買いたいけど、必要はないじゃん?」
「そうだな」

「ちょっとデザインした人に会いたくない?」
「会いたいな」
「でっしょ~?」

「ね?ドレス買っていい?」
「あぁ、買ってやる」
俺はソファーに追い詰めたままの陽菜にキスをした。

「うれしい!ありがとう!」
まぁ・・・いいか。
どんな理由でも、陽菜が俺と久しぶりに公の場に腕を組んで同伴する気になったんだ。

ありがとうな、うんこドリル・・・

「うわ!大川さん!今日ごちそうじゃん!」


END******







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by ichigo-ichigo205 | 2018-03-29 14:44 | ・出会いは必然に | Comments(2)

親友

懸賞 2016年 06月 28日 懸賞

梅雨が終わりそうな7月の蒸し暑い夜。
仕事を終えた駅までの道のり、疲れた肩に手を当てて首をぐるりと回した。
「陽菜」
後ろからちょっと太い声で呼ばれた。
「あ~。良治クン」
大川さんの、学生時代の友人だ。

「あんたバカなの?何回も言ってるけど、アタシはリョウコよ」

見た目は綺麗なおねーさんだ。
声を聞かない限り、男だとは分からない。
もともと華奢なんだろう。たち振る舞いに疑問もない。

「あ。ごめん。リョウコさんも帰るところ?」
「もう8時よ~?アタシだって帰るわよ。陽菜もあんまり遅くなると
孝志が心配するわよ」
リョウコさんは大川さんの事が好きだ。
それを私に隠さない代わりに、私の事もちゃんと大川さんの彼女として扱ってくれる。

「今日ね大川さん仕事で遅くなるんだって」
「へぇ。じゃぁ、ご飯一緒に食べて行く?」
「リョウコさんのおごり?」
「あんた、えげつないわね~。あんたの方が稼いでるでしょう?」
「そんなことないよ!ただのOLだもん。リョウコさん歯医者さんじゃん!」
「あたしは雇ってくれるところがないから手に職稼業なのよ!」

およそ歯科医には見えない色っぽい恰好で、きっと胸も私より大きいリョウコさんは
「割り勘よ。女同士なんだから」
と笑った。
「そうね。割り勘で行きましょう」
サバサバしているリョウコさんとの飲みは楽しい。

リョウコさんの知り合いのお店で美味しい物を食べて飲んで
酔ったところでいつものように寝てしまった。

「なんで、お前と陽菜が一緒に飲んでるんだよ」
孝志の仕事が終わったころを見計らって
陽菜と一緒にいることをメールで知らせる。
案の定、予想した時間よりも早く孝志が店に着いた。

「女子会よ」
ニヤッと笑ってそう言えば
真剣な顔をした孝志が一呼吸置いて
「俺はお前が良治でもリョウコでも親友だと思ってる」
「うん」
「けど、陽菜と2人で飲むのはもうやめてくれ」
「・・・・昔の孝志の女遊びをばらされると困るから?」
真面目な顔の孝志をはぐらかそうと誤魔化したら
「茶化すなよ」
と、タバコを吸いだした。

「お前の最後の最後に残ってる男の部分を信用できないだけ」
「・・・・」
「女子会だと言い張るならそれでも良いよ。
でも、お前に残ってる最後の男の部分と陽菜を2人で飲ませたくない」

「1%もないのに?」
「たとえ、0.1%であっても、男と陽菜を飲み会の席で2人にさせたくない」
「・・・・・」
「悪い。お前の事100%女だと思えない。俺がお前の親友である限り
男だったあの時代を忘れることは出来ない」
「・・・・」
「お前を100%女だと思ったら、楽しかったあの時代を否定することになる」
「・・・・ずいぶん陽菜に惚れてるのね」
「まぁね」

孝志は最初にアタシを理解してくれた人だった。

だから、消したくても消せない0.1%の男の部分を表面に出して話題にされるとは思いもしなかった。

「悪い」

もう一度言ったその言葉のあと、タバコを灰皿に押し付けた。

少し重くなった空気の中、陽菜がアタシたちの声で目を覚ました。
「あ。大川さん。リョウコさんが呼んでくれたの?」
「そうよ。あんた寝ちゃうから」
「ごめん。会計して」

そういう陽菜に、気まずい雰囲気を作った孝志がお財布から1万円札を出した。
「陽菜の分」
そう言った孝志の手を陽菜が押しとめる。

「これは女子会だから。綺麗に割り勘なの。それに自分で払うから」
そう言って陽菜はバッグからお財布を取り出す。

何も言わないアタシと孝志をしり目に店員からレシートを受け取って
お財布を探った。

「はい。5,824円。きっちり半分ね」
「うん。楽しかったわ」
「私も、リョウコさんまた誘ってね」
「おーけー。今度は孝志も一緒にね」

そう言ったアタシを一瞬だけ、ほんの一瞬だけじっと見つめた。

「そうね」

そしてそんな時間はなかったかのようににっこり笑う。
勘のイイコね・・・
アタシと孝志の空気を読みとったんだ。

「おやすみ」

そう言って帰った2人を見送って、帰る気にならずにもう1軒寄ることにした。

「親友かぁ。まぁ・・・いいか」

翌日、ニュースで梅雨明け宣言をしていた。


END******





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by ichigo-ichigo205 | 2016-06-28 15:41 | ・出会いは必然に | Comments(0)

あ~夏休み

懸賞 2015年 08月 15日 懸賞

夏休み、今年は二人で休みを合わせてどこかへ遠出しよう。と
かなり前から話していた。

大川さんは自由業みたいなもんだし
私の会社は好きな時に取るので、休みを合わせるなんて
簡単だと思っていた。

なのに!

なんでこんなにスケジュールが合わないの?

はじめは1週間取れたらどこに行く?海外?
なんて話してて、そんなことが無理だとすぐに思い知った。
二人で、それぞれの手帳を穴が開くほど眺めて
日にちをどんどん挙げていくけど・・・

3日合わせることさえできないなんて!

無理やり。本当に無理やり合わせた3日で、沖縄に行くことにした。

なのに!

「ごめんなさい」

私は帰るなり、台所で夕飯を作っている大川さんに謝った。
「ん?」
「本当にごめんなさい!沖縄に行く日、どうしても休めなくなっちゃった・・・」
今日1日、どうにか出来ないかと頑張ったけど無理だった。
「そっか」
大川さんは一瞬、ものすごく残念そうな顔をしたけどすぐに笑って
「しょうがない。またチャンスはあるさ」
と私の髪をクシャっとした。
「じゃぁ、俺も無理してその日に取ったけど、ほかの日にするよ」
と、笑ってくれた。

その夜、大川さんはいつまでも仕事をしていて
ああ、忙しいのに無理に私に休みを合わせてくれたんだな。
そう思ったら本当に申し訳なくて。
ベッドの中で何度もため息をついた。

次の日、会社で仕事の調整をしていたら
大川さんが代わりに取ると言っていた休みの日に
私も休めそうだったので、急いでそこに休みを入れた。

「大川さんっ!私、大川さんが休む日に休み取れたよ!」
「え・・・・」

私がにこにこして帰って言ったその言葉に
大川さんが、あ然として、そして次の瞬間笑い出した。

「あっはっはっは。俺、その日に仕事入れちゃった。
陽菜が休めるときにいつでも休めるように」
「え!」

二人で顔を見合わせた後、苦笑いした。

「ごめんね。私が忙しすぎるね」
「いや。俺も忙しいからお互い様。
旅行はまた今度、二人で休めるときに行こうぜ」
「うん」

なかなか休みが合わない私たちだけど。
それでも夏の終わりにやっと合わせた2日間で、1泊で温泉に来た。

「沖縄が温泉になっちゃったなぁ」

貸し切った温泉に二人で入りながら残念そうに言う大川さんに
「いいじゃないの。温泉だって。一緒に来れたんだから」
というと・・・

「陽菜の・・・陽菜の水着が見たかったんだよっ」
と、思った以上に力説する。

「水着?」
「ああ、水着だよ。水着!夏の始めに買っただろ!あれが見たいんだ」

子供みたいに大きな声で見たい、見たいと私を抱きしめながらつぶやいた。

「あっはっは。持ってきたよ。明日一緒にプールに行こうよ」
そう言うと
え!と驚いて
「持ってきたの?」
「持ってきたよ。大川さんの水着も持ってきたよ」

「陽菜大好き。愛してる」

とギュッと私を抱きしめた。

男ってしょうがないな。
私は抱きしめられた大川さんの腕の中で小さく笑った。

END****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-08-15 10:50 | ・出会いは必然に | Comments(0)

俺の陽菜

懸賞 2015年 05月 02日 懸賞


今日は横浜ホールディングの広報部と打ち合わせだ。
昼前に終わったら陽菜を誘ってランチに行こう。

そんな風に思って透明のパーテーションで仕切られた
エントランスのソファーで担当者と打ち合わせをしていた。

その時「やったね!あそこの契約が取れたのは大したもんだよ!
正式契約が終わったらお祝いしよう!」と
大きな声で陽菜が年下の部下らしい男とエントランスに入ってきた。

バン!とお祝いついでに男の背中を叩いた陽菜に思わず笑いがこみ上げた。
陽菜らしいな。

そんな俺を見て、打ち合わせ中の若い方の男が
「うちの半田です。男顔負けのイイ仕事をするんですよ。
性格もさばさばしてるし。見た目もちょっとイイ女でしょ?」と
俺に自慢げに話し出した。

その言葉に一瞬きょとんとして、ああ、こいつ俺と陽菜のこと知らないのか。と
「そうですね」と笑いながら返事をしたら

「すみません!」と
同席していたヤツの上司が立ち上がって頭を下げた。

その姿に苦笑して「気にしてません」と、座るように促した俺との会話に
「?」の若い担当者に

「半田と俺は付き合ってるんですよ」と
ニッコリ笑って教えてやった。

陽菜の悪口を言われたわけじゃない。
褒め言葉は、俺と付き合っていると知らなかったんだから本心だろう。

が・・・・
その本心がなんだか気に入らなかった。

午後まで続いた打ち合わせのために
ランチを一緒にできなくて。そのまま帰りたかった俺は
夕方からの打ち合わせをキャンセルした。

いつもより手間暇かけて作った夕飯に陽菜が
「うわ!おいしそう~」
と、満足げに食べる姿に俺も満足する。

「陽菜。今日着てたスーツ。この前一緒に買い物に行ったときのだろ?」
「そう!大川さんが買ってくれたスーツ。評判いいよ」

「俺の選んだ服を着て、俺の選んだ靴を履いて」
「・・・・?」
「俺と同じシャンプーを使って、俺と同じ匂いになる」
「・・・・うん?」
「俺の作ったメシを食べて」
「うん」

「陽菜は見た目も、身体の中も全部俺が作ってる」
「そう・・・だね?」

「髪の毛1本さえ、俺のモノだ」

そう言って、陽菜の髪の一房にキスをした。

「大川さん?」

「他の男が、何と言おうと陽菜は俺のだから」

「何かあったの?そんなこと確認しなくても私のすべては大川さんのモノだよ?」
心配そうに俺をのぞき込む陽菜に
ニッと笑いかけて抱きしめる。

「なにもねぇよ」

昼間のもやもやがちょっと晴れた気がした。



END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-05-02 08:10 | ・出会いは必然に | Comments(0)

バレンタインは必然に

懸賞 2015年 02月 08日 懸賞

2月の第2土曜日に締め切り間際の仕事を終わらせるために休出した。
お昼前に終わる算段が付いたので
一緒に休出してくれた事務の中野さんに
「中野さん、12時で切り上げよう」
と声をかけた。

「はい。あ、半田さん今日はバレンタインですよ。
チョコがまだだったら買って帰ってくださいね」

なんていう。

「え!嘘。ごめん。中野さん大久保君とデートだったよね」
と、休出を謝れば
「いえ。大久保さんも休出だったので。私が帰れそうになったら
内線を入れることになっています」
「そっか。ごめんね気が付いてあげられなくて」
「いえいえ」

バレンタインなんて全く気が付かなかった。
先に中野さんを帰して、キリがいいところまで仕事を終わらせて
駅までの途中で形ばかりのチョコを買った。

形ばかりだとはいえ、ちょっとうれしくなって
ルンルンで駅まで行くと、駅の手前のコーヒーショップのガラス越しに
大川さんが座っていた。

今日は外で打ち合わせだったんだ!そんな風に思って
お店に入ろうとして
向かい側に座っている美人に気が付いた。

その美人は大川さんの手を握り、
大川さんが冷たくその手を払いのけた。
そんな大川さんの行為に美人は嬉しそうに笑ってチョコらしい包みを渡していた。

こんな時、どうしていいか分からなくなる。
恋愛レベルがものすごく低い私は
どうしたらいいか正解が分からない。

私はうつろに電車に乗り家に帰った。
大川さんの部屋に行くことはできなくて。
自分の部屋に入ってコートを着たままリビングに座り込んだ。

何時間経ったか分からない。
外はすっかり夕日になって、携帯だけが何回か鳴っていた。

「お~い。陽菜?こっちにいるのか?」
ガチャガチャと音がして合鍵で入ってきた大川さんが目の前に座った。

「陽菜?どうした?ん?」
「大川さん・・・」

泣いちゃいけないと思っても涙が出ちゃうよ。
恋愛レベルが低いから駆け引きなんかできない。
素直に自分の気持ちを言う事しかできないよ。

「私、本当に大川さんが好きだよ」
「うん?」
「ご飯だって作れないし」
「うん」
「家事全般苦手だし」
「だなぁ。この部屋もこの前片づけてやったのに」

大川さんは笑いながらリビングをぐるりと見回した。

「大川さんも仕事が忙しいのに毎日夕飯作ってもらってごめんなさい」
「うん?」
「エッチした後に私は寝ちゃうのに、大川さんは起きて仕事するときがあるって
知ってるよ」
「あー」
「私だけ寝ちゃってごめんね」
「ん」
「今日もバレンタインだって事務の子に聞いたの」
「うん」
「女らしくなくてごめんねぇ」

そこまでいった私に苦笑いして大川さんは自分の髪をくしゃっと触った。

「うん。言いたいことは大体わかった。
そしてなんでこんなことを言ってるのかも大体わかった」
「・・・・えっ・・・」

「陽菜、今日駅前で俺とあいつが一緒にいたの見たんだろ?」

あいつ・・・・

「俺さ?全部ひっくるめて陽菜の事、愛してるんだよね」
「・・・・」
「家事ができなくてもバレンタインを忘れるほど仕事しても。
そんな陽菜を愛してるんだよね」
「うん・・・・」

「みくびんなよ」

そういってニッと笑う。

「セックスの後に仕事をしてるのは、俺の仕事の事情。
起きて待っててくれなんて思わないから」
「うん」
「むしろ陽菜の寝顔見るとやる気が起きる」

そういって私の髪をくしゃっと触った。

「陽菜の会社の近くで打ち合わせだったから一緒に夕飯を食べようと
電話してたのに。陽菜ちゃんはへこんでたわけだ」
「う・・・・」

「あいつ美人だっただろ?」
「・・・・うん」
悔しいけど、事実。

「でもな。陽菜、俺は陽菜だけ」
「うん」
「陽菜も俺だけだろ?」

「うん」
そう言って私は大川さんに抱き付いた。

大川さんはポンポンと背中を叩いて耳元で
「愛してるよ」
と囁いた。

「さ。気分を直して美味いもん食べに行こうぜ」

私を立たせて「顔洗って来い」と洗面所に促した。
顔を洗ってすっかり化粧を落とした頃

「あー陽菜?それから、あいつ戸籍上は男だから」
「えっっ!」
「心配すんな」

なんて大声で笑った。

大川さんは今のままで良いと言ったけど・・・
春物のワンピースでも買いに行こう。

女であることを今までで1番考えたバレンタインだった。

END******
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by ichigo-ichigo205 | 2015-02-08 07:00 | ・出会いは必然に | Comments(6)

プレゼン

懸賞 2014年 12月 07日 懸賞

「大川さん!」

数日前にある大きなプレゼンが終わり、
今日参加した会社の担当者を集めての結果発表があった。

ウチが無事にプレゼンを制したんだけど。
そのあとに各社の心無いライバルたちに

今回のプロジェクトメンバーに大川さんがいるから
ウチに決まったんだろうと言われた。

大川さんがこのプロジェクトに関わっているとは知らなかった私は
寝耳に水で何も言い返せなかった。

「ん?陽菜お帰り。プレゼンの結果どうだった?」

のんきに夕飯の用意をしてくれてるけど。
本当なの?
大川さんのチカラでウチに決定したの?

「大川さん。今日のプレゼンのプロジェクト、大川さんも参加するの?」

そう聞けば
「その返事だと横浜ホールディングに決まったんだな?一緒に仕事ができるな」
とご機嫌だ。

「大川さ・・ん。プレゼン、出来レースじゃないよね?」
「あ?」

夕飯を作っていた手を止めて手を拭いて私のところまで近づいてきた。

「大川さんが裏でウチに決めるように手を回したわけじゃないよね?」
「・・・なんだ?それ?」

「そう言われたのよ!一緒にプレゼンをしたライバル会社の人に!」
「・・・・ふ~ん」
「私、大川さんがこのプロジェクトに参加してるって知らなかったから
いきなり言われて何も言い返せなかった!」

そこまで一気に言った私に困ったように笑いかけ
手を引いてリビングのソファーまで連れて行った。

私を膝の上に座らせて、髪を撫でながら優しく話しだした。

「落ち着け。陽菜。わかったから」
「うっっ・・うっう」
「泣かなくていいから。大丈夫だ」

そう言うと私が落ち着くまでゆっくりと髪をなでた。

「俺は仕事でそんなことはしない。陽菜がプレゼンに参加するとわかった時点で
選考委員を降りたよ。どんなに公平に審査しても
陽菜が何かを言われるのは目に見えているから」

「・・・・うん」

「プロジェクトの方にもそのことは伝えてある」
「うん」
「本当は俺がこの仕事を降りれば良かったのかもしれないけど。
もしかしたら一緒に仕事ができるかな。と思ったんだ」
「うん」

「自信を持て。自分の仕事に。そんな陰口を言われない仕事をすればいい」
「うん」
「横浜ホールディングは俺とは関係ないところで
プレゼンを勝ち取ったんだよ」
「うん」

「おめでとう。陽菜」

私は大川さんにギュッと抱きついて泣いた。

プレゼンを勝ち取ったのはすごく嬉しいことなのに。
大きなプロジェクトだから嬉しいはずなのに。
変に水を差されて喜ぶことを忘れていた。

「うん。大川さん、ありがとう」

「さ。夕飯にしようぜ!絶対陽菜が勝つと信じて
お祝い用に作ったんだ」
「・・・・ありがとう」

「おめでとう」

そう言って大川さんは私にキスをした。


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2014-12-07 09:15 | ・出会いは必然に | Comments(0)

ドレスも必然に③

懸賞 2014年 03月 21日 懸賞

「陽菜。そろそろ帰るぞ」

私が疲れたと思った頃、大川さんが声をかけてきた。

二人でタクシーで帰り、
ほっと日本茶を飲みながら
「今日はすごい収穫だった!」
と、つぶやけば大川さんはにやりと笑った。

「まさか・・・?この収穫は計算なの?」
「あそこは広告代理店と言っても建築につながる広告が多いから。
遠くで見てたけど、名刺交換結構出来ただろ?」
「・・・・・」

そのために私を連れて行ったの?

「でも、私1人にして!ナンパされてるかもしれないじゃない!」

ほっとかれたいやみの1つでも言ってみる。

「俺がいたら、みんな陽菜に仕事の話なんかしないよ。
男の前で連れの女に仕事の話をする無粋な奴なんかいないよ。
だから、すぐに離れただろ」

そうだったの?

「でも。仕事を口実に誘われるかもしれないじゃん」

「その心配はねーよ。久々に公の場所に顔を出した俺が
会長のあいさつの間中、腰を抱いて俺の女だから手を出すなって
けん制しただろ?」

うん・・・・

「あれでも陽菜をナンパするようなヤツにつながるところは俺は絶対に仕事しねぇ。
俺と仕事したかったら陽菜には手をださねぇよ」

咥え煙草を歯で噛んでにやりと笑う。
憎らしい・・・

「ドレスも・・・意味があるの?」

この男にかかったら、全てに意味がある様な気がする。

「あれは・・・」
「あれは?」

「俺が可愛い陽菜を見たかっただけ。
俺が綺麗な陽菜を自慢したかっただけ。悪いか」

「悪いよ。バカヤロウ」

私は大川さんの煙草を口から抜き取って灰皿に押し付けた。

「大好き。孝志」

初めて呼んだ大川さんのファーストネームに
大川さんがビックリしている間に
キスをしてやった。

「陽菜の勝ち」

そういいながらちっとも悔しそうじゃない大川さんがやっぱり憎らしかった。



END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2014-03-21 15:00 | ・出会いは必然に | Comments(0)

ドレスも必然に②

懸賞 2014年 03月 19日 懸賞

買った時はいいと思ったのに
今着てみたら、なんだかオ―ガンジーの薄い布の袖が気になる。
やっぱりダメだと、スーツに着替えようとしたら
大川さんの「広告代理店のパーティーなんかみんな派手だよ」
という言葉に少し心が揺れ、
それでも、結局はこれしか着て行くものがなくて化粧をして
一緒に買ってもらった共布のパンプスを履いた。

会場に着いてみたら確かに競い合うように綺麗な女性たちがたくさんいた。

会長が100周年の挨拶をしている時
大川さんは1番前でこれ見よがしに私の腰を抱いていた。

何が、心細い・・・よ。
どんなに大きな会場だろうと
こんな華やかなところが何年振りだろうと
大川さんは堂々としていて余裕なそぶりだった。

挨拶が終わり、立食が始まったところで
大川さんは早々に私の腰を離し
久しぶりの仕事仲間と仕事の話を始めてしまった。

私は、営業と言う仕事柄、別にこんなところでも臆することなく
軽くため息をついた後
せっかくの料理を食べることに決めた。

「あの」

お皿いっぱいに料理を並べていたところで
一人の男性に声をかけられた。

ほら!大川さん。
私だってほっといたらナンパされちゃうんだからね!

「大川さんのお知り合いですか?」
「はい」
「このような場所で大川さんがご同伴をお連れになるのは珍しいので。
突然失礼しました」
と、相手が名刺を差し出してきたので・・・

「いいえ。わたくし、横浜ホールディング建築営業の半田と申します」
と、私も名刺を差し出せば相手は「あ・・・」と声を出した。
「横浜ホールディングさんでしたか。私は空間デザインをやっています。
今、都下の方に1つのエコロジーをベースに街を作ろうと言う計画があるのを
ご存知ですか?」
「ええ!画期的な発想ですよね」
「私はその街全体の空間デザインを任されているんですが
街の建築を一手に発注するコンペがありまして。参加する会社を一任されています
「そうなんですか」
「コンペについて検討していただけませんか?」
「もちろんです。参加させてください」

「大川さんが連れているからどんな方かと思って声をかけたんですが
横浜ホールディングさんの建築営業の方だったとは偶然ですね」
「こちらこそ。いいご縁になる事を期待しております」

そのあと、今まで繋がりがない大手の社員と名刺交換をいくつかした。
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by ichigo-ichigo205 | 2014-03-19 15:00 | ・出会いは必然に | Comments(0)

ドレスも必然に①

懸賞 2014年 03月 17日 懸賞

「陽菜ちゃん。今度の土曜日暇?」

夕飯の後、まったりとテレビを見ていたら後片付けが終わった大川さんに聞かれた。

「・・・・・暇じゃない」
「なんでだよ?」
「土日はゆっくりしたい。どこにも行きたくない」

普段の平日は残業続きと営業と言う仕事柄、営業スマイルが張り付いているから
休日ぐらいはゆっくりしたい。
そんな私の気持ちを知ってか、大川さんも
どこかへ出かけようとはほとんど言わず
休日は二人でのんびり過ごすことがおおい。

「陽菜ちゃんさ。マジでオヤジ化してるよ?疲れてるのは分かるけど
たまには出かけようぜ」
「・・・・・」
「たまには自分のために着飾らないと女子力さらに下がるよ?」

「さらに・・・・?」

聞き捨てならない事を聞いた。

「大川さんは私が女子力低いのには不満なんだ?」
「いや。不満じゃないけど。
たまには俺の『ために』土日は夕飯作るわ。とか
いや。待て。陽菜が夕飯作ってるのをリビングから見てたら
包丁が危ないんじゃないかとか俺の寿命が縮むな。
洗濯をたたむのも俺の方がうまいしな。
掃除も陽菜は丸く掃除するし・・・
うん。家事は今まで通り俺がやるから心配するな!」

なんだか一人で言って一人で納得しちゃったみたい。

「じゃぁいいじゃん」

「いや。いいんだけど・・・・」
「なによ?」
「ほら。この前陽菜がらみで受けた仕事あるじゃん?」
「ああ・・・。私の半年分のギャラの仕事?」
「・・・陽菜ちゃん根に持ってるね・・・」
「いいえ!それでそのデザインが何か!」

「うん・・・あの会社って創立100周年なんだよな。
だから社屋もリフォームしたし、社のロゴマークも変えたんだよ」
「うん」
「俺、100周年記念パーティーに呼ばれてるんだけどさ。
この業界のやつも関係者は少なからず来るんだよ。
広告代理店じゃん」
「うん」
「俺のデザインをもってったやつも来るんだよ」
「なんですって!」

「だからさ。心細いじゃん?陽菜も行ってくれたらな。って思っただけ。
無理ならいいんだ」

「行くわ!」
「マジで?」
「大川さん復帰したばかりだもの。一緒に行ってあげる!」

なぜだか立ちあがってこぶしを握った私。
山田が見ていたら
ため息をつきそう。

「陽菜。ドレス買いに行こうぜ!」
「ドレス?なんでよ。スーツでいいじゃん」
「俺の秘書と間違われて話振られても分からないだろ?」
「確かに」
「買ってやるから」

もう夜だって言うのに。
嬉しそうに車のキーを取りだして
私を買い物に連れだした。
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by ichigo-ichigo205 | 2014-03-17 15:00 | ・出会いは必然に | Comments(0)