カテゴリ:・10年目の恋( 6 )

懸賞 懸賞

大告白

懸賞 2017年 10月 26日 懸賞


職場を出たところで、春からうちの会社に転職してきた
3コ下の男の子に呼びとめられた。

私の・・・徹の3コ下とは思えないほど幼く可愛い顔をしている。

その顔とは真逆に翻訳の腕前は確かでギャップに社内の女の子は萌えていた。

「志保さん」
「何?」

徹が丁度向こうから来るのが見えた。
イヤだな。徹に余計な心配をかけたくないんだけど。

「その・・・指輪」

あ、ぁ。徹がくれた婚約指輪。
今日初めて職場にしてきた。

「俺、遅かったんですか?」

まっすぐな目をして、少し赤くなった頬を気にせず
私を見つめるその男は、男の子の顔の中に男を隠し持って
私に直球で聞いて来る。

徹は少し手前で、私とは無関係を装ってガードレールに腰かけた。

「俺が、昨日告白したから。だからつけてきたんですか?」

その場で断ったのに。諦めません。と口を一文字に結ぶキミに
言葉以上の最後通牒を示したつもり。

「もっと早くに告白していたら変わりましたか?
もっと早くに出会っていたら・・・」

そう呟くキミに、私も正直に話そう。
「彼とはもう10年にもなるの。10年前から好きなのよ。それに時間の問題じゃない。
私には彼しかいないし。キミもきっと素敵な人に出会えるよ」

フイッと顔を私から背けて、ぎゅっと握ったこぶしが若いと思った。

そんなキミに苦笑いをして徹のもとにかけて行けば
これ見よがしに私の肩に手をかける。

「ちょっと・・・」
まだ見てるって。
「さっさと諦めさせた方が良いんだよ」
「・・・・」
「それより何で、オトコに告白されたって俺に言わないの?」
「別に内緒にしてたわけじゃないよ」
昨日だったから・・・
そんな風に言い訳した私に
「今日迎えに来て正解」
徹はそんな風にため息をついた。

「ま、思わぬ告白が聞けたわけだけど・・・」
「・・・・」
「あーゆーのは本人にまず言ってほしいんだけどね?志保ちゃん」

志保ちゃん・・・・
付き合い始めた時はそう呼ばれてたっけ。

「徹くん。大好き」
ったく。男に言い寄られてたら言えよな。
そう呟いて、徹は私の頬にキスをした。


END****






[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2017-10-26 13:10 | ・10年目の恋 | Comments(4)

8年目の桜

懸賞 2016年 03月 29日 懸賞


クソ忙しい年度末で年度初めに向けての準備に追われていた。
今日も終電を逃して、数人残っていたメンバーでタクシーを呼んだ。
エントランスを出ると、思った以上に暖かい金曜日の夜の空気は
俺が仕事でかまけているうちに春になったらしい。

「季節の変わり目にも気がつかないなんてな」

自分のワーカホリックぶりに多少の自嘲も込めてそう呟けば
次の瞬間に
「俺、明日の土曜日休みますから」
なんて、上司と同僚に叫んでいた。

「あ?宇野仕事終わるの?」

不機嫌そうにそう呟いた同僚に「終わらないけど休む」
そう笑えば

「良いじゃん。たまには土日ゆっくり休めよ。また月曜日から死ぬほど働け」
と、森川さんが笑って
「そうだな。この土日は全員休もうぜ」
と、大久保さんが提案した。

「ですね」
と、森川さんが賛成して、なんとなくそんな雰囲気になった。
「お疲れーっす」
「じゃ、月曜日」
「ゆっくり休めよ」
と、口々に叫んで、タクシーを同じ方面のやつらが相乗りした。

「宇野。ほら行くぞ」
「俺歩いて帰ります」
「は?もう終電ないぞ?」
「彼女の家が歩いて行かれるんで」
「あっそ」

俺の言葉に軽く笑った森川さんが
「じゃぁ、彼女に癒してもらえ」
そう言ってタクシーを発車させた。

あまりに疲れている時は、志保の家には行かないようにしている。
ただ、疲れた身体を心配させに行くようなもんだから。

でも、会社のエントランスを出て、桜が咲き始めた春の空気を感じて
ふと、志保に会いたくなった。

ゆっくりと歩きながら、上を見る。
満月とは言えないいびつな月が、七分咲きの桜を照らしている。

風に舞い散った花びらを右手でキャッチして、その手のひらを覗けば
小さなピンクの花びらが1枚そこにあった。

志保が・・・
あのお姉さんだと感じたのはいつだったか。

そうだ。去年の花見の時に2人で撮った写真を見ながら
「徹って、カメラを直視するの苦手だよね!
いつも目線を外してる。ほら。高校の学生証もそうじゃなかった?」
と、笑いだした時だ。

確かにそうだけど。
志保、なんでお前が高校時代の俺の学生証を知ってるんだよ。

セロリチャーハンの事も。
ここ数年、志保の部屋に行くとなんとなく懐かしい感じがするのも。

ああ・・・・
と、納得してしまえば全てのつじつまが合った。

志保は俺より先に気がついたんだろう。
UKから帰ってきてプロポーズをしたときに
俺のことを「ポチ」と呼んだ。

それでもお互いに、このことは相手に確かめない。
無言で、志保は俺の10年前を大切にしてくれて
俺は、志保と出会った10年前の記憶を大事にしてる。

それでいいんだと思う。

「ほんとに、結構咲いてるな」

知らないうちに満開一歩手前の桜を
志保と一緒に見たくて。
俺は、夜中だって言うのに志保に電話をする。

「あ、志保?まだ起きてた?
今からそっちに行くけど、ちょっと出てこいよ。
桜が大分咲いてる。一緒に見ようぜ」

2人が再び出会った8年前の桜の話でも一緒にしよう―――



END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2016-03-29 12:49 | ・10年目の恋 | Comments(0)

徹の想い

懸賞 2015年 05月 08日 懸賞

海外事業部にとってかなり大きな案件を任されたのは1年半前。
それからほぼ毎月のようにUKに飛んだ。
この案件が成功すれば終了次第に主任試験を受けられる条件を提案され
1も2もなく受けた。

会社は2年はかかると踏んだんだろう。
だが、1年半で何とかめどがついた。
俺は29歳で同期より一足早く主任になる。

思った以上に大変だったこの案件も終わりが見えてきた。

「宇野さん。先方が最終の調印をUKまで来いと言ってますが」

メールを受け取った後輩が、そう不満げに報告してきた。

本来なら、先方がこちらに出向くのが礼儀だ。
でも、俺の頭にある事が思い浮かんだ。
丁度いい―――

「お伺いしますと返事してやれ。向こうもそれなりの最後のプライドを保ちたいんだろう。
調印なんかどこでしたって同じだ。
最終的にはウチが有利な契約書になってる。
俺たちも1年半のご褒美にUKで観光でもしよう」

そう言うと、後輩は苦笑いして「帰りの飛行機は1日ずらしますね」と言った。

どうせ、この仕事が片付いたら、ロンドンに行こうと思ってた。
ロンドンのモニッケンダムの本店で志保への婚約指輪を買おうと決めていた。

やっと主任になれる。
主任になったら、プロポーズをしようと決めてた。

調印のまま指輪を買いに行かれれば、いい思い出にもなるか。

そう思って買った指輪をもって、成田からそのまま志保の会社に迎えに行けば
良い子で待っていなかったとぬかした。

こいつはほんとに。
目が離せない。

モニッケンダムの包みを見ても志保は信じられないようで
「モニッケンダム?」
なんて、半信半疑だ。

「なんで疑問形なんだよ。正真正銘のモニッケンダムだよ」
志保のためだけに、選んできたんだよ。

「婚約指輪はモニッケンダムって決めてた」
志保の望むことは叶えてやる。

「徹ってロマンチストだったんだね」
俺が?

「俺はロマンチストじゃない」

「好きな女の望むことを叶えてやりたいだけ」

だから。志保は好きなように生きればいい。
好きな仕事だけ、すればいい。

俺が、全部叶えてやるから。


END*****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2015-05-08 13:21 | ・10年目の恋 | Comments(0)

月明かりとダブル・デッカー

懸賞 2014年 10月 03日 懸賞

「志保」
「ん~?」
「UK行くんだけど。お土産何がいい?」

2人で洋画のDVDを見てごろごろ過ごしていた日曜日の夜、
そこのコンビニまで行くんだけどアイスでも買ってきてやろうか?ぐらいのノリで
徹が出張行きを言い出した。

「いつから行くの?」
「明日の早朝から」
「徹さ?出張ってもっと早く分かってるよね?もっと早く言えないの?」
「なんで?」
「え・・・なんでって。お土産を吟味したい・・・から」

私の答えにニヤニヤ笑いながら

「志保、欲しい土産なんかあるのかよ?」

なんて言う。
嫌な笑いだ。私は知ってる。

「あ、あるよ!」
「ほ~。言ってみろよ。買ってきてやる」
「ダブル・デッカー!」
「は?」

「二階建てバスがほしい!」

本当に欲しい訳じゃないよ。もちろん。
でも、あんなふうに『俺は分かってるよ』みたいに笑われたから。
悔しくて。

「はいはい。志保ちゃんにはダブル・デッカーのミニカーでも買ってきてやろうね~」

もう!子供扱いして!

「本物だよっ!」

私も意地になって言い返した。
そんな私をじーっと見つめた後

「志保。お前寂しいんだろ?だから、出張も前もって知っておきたいんだろう?
心の準備のために」
「・・・・」

ちがう・・・・よ。

「俺、ちゃんと帰ってくるから。何心配してるのか知らないけど」
「・・・・」

「前に、出張を前もって言ったら志保、なんか寂しいって言ってたじゃん」
「・・・・」
「俺、それからは出張は出来る限りギリギリに言うようにしたんだ」
「ぎりぎりも嫌だ」
「そっか」

徹は私の髪をクシャっとして、そのまま顔をゆっくりと近づけてキスをしようとした。

「でもさ?」

「・・・・お前、キスの直前で話しかけるなよ・・・」
「UKって外で言わない方がいいよ?
カッコつけてるみたいで恥ずかしいよ?はぁ?って感じ♪」
「・・・・会社では普通にUKって言うんだよ!」
「ふ~ん。スカした会社だね~」

あぁ・・・そうだったんだ。
出張をぎりぎりまで言わないのは、私が寂しいってずっと思わないようになんだ・・・

徹らしい。
やっぱり大好き。

でも、そんなことは教えてあげない。

「俺はUKって言い続けるぞ!」
「はいはい」

ね。徹。この指輪。綺麗だね。
ほら見て。外で光ってる月の明かりに照らすと、すごくきれいに光るんだよ。

「志保!聞いてるのか?」


END******
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2014-10-03 07:00 | ・10年目の恋 | Comments(0)

ブルームーン②

懸賞 2014年 04月 20日 懸賞

二人で映画を見に行った後、どこかでお昼を食べようという話になったが
俺たちは学生でお金もない。
2000円あったら、しゃれた昼より映画をもう1本見る方を選ぶ。
そんなところも意見が合った。

「そうだ。俺んチ来いよ。作ってやるよ」

そう言って連れてきて作ったのはセロリチャーハン。

お姉さん。元気にしてるかな。
ちゃんと彼氏に幸せにしてもらってるかな。

たとえ異次元だったとしても。
お姉さんは実在する。
不思議とそんな自信はあった。

「え!チャーハンにセロリ入れるの?」
「美味いから!」

そう言って作ったチャーハンを彼女はとっても気に入ってくれた。

二人で過ごす空間。
二人で観に行った映画。
二人で話した時間。

全てが俺には新鮮で、大切なものになった。

「好きなんだ」
と告白した時は、はにかんで
「私も」と言ってくれた。

お姉さんの記憶はだんだん胸の奥底にしまい込んだ。
忘れることはないけれど。
それでも、今目の前にいる彼女の方を好きになって行った。

キスも。
キスも。
初めてだったあの時のように、ぎこちないものじゃなくて
優しく彼女をついばむようにキスをする。

「今日は月が青いね」
「ブルームーンだ」

レイトショーの帰り道、二人で手をつないで俺のアパートまで歩く。
月の光を身体に浴びて。
ゆっくりと二人で歩く。

お姉さんのアパートがあったはずの更地に何か建築されるようだ。

「あ。アパートが建つんだ。徹のアパートの近くだ。
私、ここに引っ越してこようかな」

そう言った彼女の顔は月の光でキラキラ輝いていた。
月の光に包まれて、消えてしまいそうだった。
どうしてそんな事を思ったのか、分からない―――

「志保。行くぞ」

俺は彼女の指に指をからませた。
「こんどこそ」消えてしまわないように――――


END****
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2014-04-20 12:00 | ・10年目の恋 | Comments(0)

ブルームーン①

懸賞 2014年 04月 18日 懸賞

「なぁ。異次元って信じる?」

希望の大学に入るために親父を説得して無事に合格して・・・・
何もかもが順調なはずなのに。

2年前にたった4日間だけ一緒にいた初恋の人が忘れられない。
たまに、その面影を思い出して、苦しくなる。

4日間、泊めてもらった後、家に帰って
親父を説得して。
渋々OKをもらったことを報告しようと覚えている限り
あのアパートを探したけど、結局見つからなかった。

お姉さんのいたはずのアパートは、大きな更地だった。
ついこの前まで、アパートが建っていたはずなのに。
そこは何もなかった。

通りすがりのおばさんに聞いても
そこはずっと何も建っていないという。

俺は、異次元に迷い込んだのか。

「異次元って信じる?」

俺はサークルの飲み会で酔うとそんな話をするようになった。
サークルは迷わず洋画サークルに入った。

洋画が好きでJ大に入ったお姉さんはきっとこのサークルだったと思うから。

「信じるよ」

今日、たまたま隣に座った女の子が異次元を信じると言う。
「信じる?」
「うん。体験したことはないけど。広いどこかにはあり得るんじゃない?」
うん。そうだよな。
あり得るよな。

「満月って、不思議な力があるって言うじゃん。ほら。ETだって・・・」

軽く酔った顔で、そんな事を話す女の子と
そのまま話が合い、
気がつけばいつも一緒にいた。

J大の雰囲気が大好きなこと。
彼女はいつか、映画の翻訳家になりたい事
俺は、商社に入って世界を飛び回りたい事を熱く語った。

満月の日にはいつも二人でずっとその光を浴びていた。
[PR]

by ichigo-ichigo205 | 2014-04-18 12:50 | ・10年目の恋 | Comments(0)