カテゴリ:・カウントダウン( 7 )

心理テスト


「ねぇ。蒼くん。今から聞くことを正直に答えてね」
「いいけど・・・なに?」

里香が雑誌を持ちながら、真剣な顔をした。

「心理テスト」
「なんの?」
「・・・浮気願望」

何だそれ。

「だから!真面目に正直に答えてね!」
「・・・はいはい」

「じゃぁ、第一問!蒼くんの好きな場所は?」
「里香と行った場所すべて」

「・・・・第二問。蒼くんの好きな野菜は?」
「里香と食べた野菜」

「・・・好きな果物は?」
「里香と食べた果物」

「好きなデザートは?」
「里香と食べたデザート」

「好きな服装は?」
「里香が着ている服」

「ちょっと!真剣にやってよ!」
「正直に答えてるんだけど?」
「・・・・」

「ほら、次は?」
「嫌いな場所は?」
「ひとりでいる場所」

「嫌いな野菜は?」
「ひとりで食べた野菜」

「嫌いな果物は?」
「ひとりで食べた果物」

「嫌いなデザートは?」
「ひとりで食べたデザート」

「・・・嫌いな服装は?」
「里香に会えなかった時に着ていた服」

「きらいな・・・」
「里香」

「な、に?」
「ひとりでやった事は全部嫌いだ」
「蒼くん」
「俺をひとりにしないで」

「・・・しないよ」
「心理テストなんかどうでもいいから」
「うん」
「こっちにおいで」

俺は里香をギュッと抱きしめた。

END****





[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2018-06-13 14:28 | ・カウントダウン | Comments(0)

願い事

お正月の三が日はそれぞれ親戚の家に行くから会えなくて。
4日になって蒼くんから
「遊びに行こうぜ」とメールが来た。

待ち合わせて行った場所は、カウントを数えている時に初めて行ったデートの場所で
海の近くの水族館だった。

クラゲが有名なその水族館で、あの時と同じように私たちは大きな水槽の前で
手をつないで動かなかった。

硝子1枚を隔ててある向こうの水中の景色は幻想的で
吸い込まれちゃうような感覚がずっと私を包み込む。
現実に立っている証拠は蒼くんとつないでいるこの手だけだった。

ぎゅっと握りしめると蒼くんもギュッと握り返してくれた。

その後、ゆっくりと江の島に渡って。
日の入りが早い冬は5時半には真っ暗だった。

江の島へ渡る橋を歩いていると、両方からザパンザパンと波の音が絶え間なく聞こえてくる。
真っ暗な景色の中で波の音だけが規則正しく響いている。
何の光にも照らされていない夜の海は、真っ暗で引き込まれるように怖かった。

ギュッと握った蒼くんの手をもう一度握り直す。

「海、怖いよな」
蒼くんがぽつりと言う。
「・・・うん」
蒼くんも怖い?
「吸い込まれたら帰ってこれないもんな」
真冬の冷たい海風に縮こまって肩を寄せ合って
手を離さないようにギュッと握る。
「離れるなよ」
安全な橋の上のはずなのに私たちはお互いを離さないように手を握る。

江の島に着けば、緩やかな坂が目の前に現れて
両端にいかにものお土産屋さんが並ぶ。
夜に江の島に来たのは初めてだ。
真っ暗な闇の中にお土産屋さんの光だけが浮かび上がって
何とも不思議な雰囲気のなか
坂を登ると小さい神社が見えてきた。

「里香と初詣したくてさ」

そう言ってさらに石段を登るともう夜だからかひと気の少ない神社が現れて
提灯の明かりだけが本堂を照らしていた。

幻想的な雰囲気の中、私たちは二人で手を合わせて参拝した。

「里香、なに頼んだ?」
蒼くんはちょっとニヤッとして私に聞くから
「え?それって口にしちゃいけないんじゃないの?」
「いいじゃん」
「絶対秘密」
「ケチ」

ケチとかそーゆー問題なの?
「俺はね、里香とずっとずっと仲良く一緒にいられますようにって
お願いした」
「だから!口に出したら叶わないよ!」
「マジか!」
蒼くんはくすくす笑いながら
「まぁ・・・大丈夫だろ」
なんて、私を抱き寄せた。
「俺、もう絶対里香を離さないから」

うん。大丈夫だよ。
私も同じ願い事だもん。
私は口に出してないから、私の方でその願いは叶うはず。

「里香も教えろよ」
「絶対秘密!」

大好き。蒼くん。今年もよろしくね!


END****





[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2018-01-11 14:49 | ・カウントダウン | Comments(2)

卒業

12歳の春に付属中学校に入学して10年。

中学・高校と卒業式はあったけど
同じ敷地内に内部進学するので大して卒業って意識をしなかったけど。

今日、この学校の10年とお別れなんだなと思ったら
ほんのちょっぴりセンチメンタルになった。

蒼くんと出会って、蒼くんとあっという間に終わった高校生。
再び付き合いだした大学生活。

色々な友人とともに、この学校での思い出がある。

「里香」

いつもとは違うスーツ姿の蒼くんが、桜のつぼみの中をかけてくる。
そのつぼみは、今度の新入生のために咲くんだね。

「謝恩会に行くのに向こうで皆待ってる」
「うん」

さよなら。大学生の私。

「何?寂しいの?」

ほぼ毎日会っていた蒼くんとは毎日会えなくなる。

「蒼くんは寂しくないの?」
「卒業することが?里香に毎日会えない事が?」
「どっちも」

「どっちも寂しくないよ」

男ってさっぱりしてる・・・

「里香とは毎日会えなくなっても心は繋がってるって信じてる。それは揺るがない」
「うん・・・」

「学校は、10年いたんだ。感謝して笑って卒業しよう」
「うん」

「俺たちは、またいつでもここに戻ってくれば今この瞬間に戻れるさ」

うん。うん。うん・・・・

「里香、寂しかったら俺に抱きつけ?」
「って!佐藤が何でここに居るんだよ!なんで里香がお前に抱きつくんだよ?」
「あー?卒業式ぐらい良いだろうが」
「ダメだ」

「ったく。ケチくさいオトコだな!皆待ってるぞ。里香も蒼も早く来い!」

私たちは佐藤のセリフに顔を見合せて笑った。

ありがとう。
私、卒業します―――


END*****






[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2017-02-28 14:15 | ・カウントダウン | Comments(0)

決意


蒼くんと付き合いだしてしばらく経ったころ
「里香さぁ。ちゃんと蒼くん捕まえておかなきゃだめだよ?」
と、女友達に言われた。

「え?」

「里香知らないだろうから教えておくけど」

うんうん。と周りにいた数人がうなづく。

「蒼くん、里香と付き合いだして一層人気者だよ?」
「え。なんで。私と付き合ってるのに?」
「あの蒼くんが一途だったんだよ?あの蒼君が!カッコよさ倍増じゃん」
「ええ?そうなる?」
「なる!」
「・・・・」

「今までの蒼くんファンがまとわりついてるよ。知ってる?」
「・・・・知らない」

そんな話を聞かされて、次の講義の終わりにいつも昼食前は迎えに来てくれるのに
迎えに来てくれなくて。
蒼くんの講義が長引いているからだ、なんて自分を納得させて
教室を出たところで、数人の女の子に囲まれている蒼くんがいた。

―――一層人気者だよ。

その言葉が頭の中で繰り返す。

ほかの子に笑いかける蒼くんを見たくなくて
そこに1秒もいたくなくて
そこから私は逃げ出した。

「里香!」

周り中に聞こえるような大きな声で
私を制止するように呼んで追いかけてくる。

「なにやってんの?」

追いつかないはずはなくて
そのまま校舎の端に連れていかれて、人通りがないのを確かめて
私を壁に押し付けた。

私は逃げ場のない背中をさらに壁に押し付ける。

「何やってんのか聞いてんだよ」

「え・・・あの」

にげたの。そういえるほど私は強くなくて
蒼くんがほかの女の子に笑いかけるのが嫌なの。
そんなことも言えるはずがなかった。

「なににげてんの?」
「え。あの」

「声かければいいじゃん」
「・・・・」
「自分が彼女だって主張しないのかよ?」
「・・・・」

目の前の蒼くんのシャツをぎゅっと握りしめる

「あの子たちの魂胆はちゃんと分ってるから」

そういいながら私の頭をかき抱いた。

「おれ、向こうに行けよって冷たくしてたんだけど
里香ちゃんとみてた?」

見てなかった。言葉にできない言葉で首を振る。

「あのさぁ。俺が好きなのは里香だけ。
自覚して。自信をもって。そしてできれば主張して」

「・・・うん」

「俺が守ってやるから。どんな女にも里香には何もさせない」

「うん」

「俺を信じろ」

私も―――強くならなきゃいけない。

私はぎゅぅぅぅっと蒼くんに抱きついた。

END****
[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2016-12-28 04:04 | ・カウントダウン | Comments(2)

嫉妬

蒼が出張から帰ってきて
玄関で「ただいま」と言った後に私の顔を見て苦笑いをした。

なに?
違和感を感じたけど、疲れているだろう蒼が話さないなら
無理に聞きだすのはやめようと思って
そのままリビングに向かった。

コートを脱いで私に手渡してネクタイをはずして私に渡す。
帰ってきてのいつもの動作なのに
何かおかしい。

「ご飯とお風呂は?」
「ご飯は向こうを出る前に早めにごちそうになった」
「うん」
「風呂に入ってくる」

そう言ってお風呂場に向かった彼の背中を視線で追いかける。

ほんの微妙な空気の違いは
たぶん私じゃないと気が付かない。
蒼は極力いつも通りにしようとしてる。

何だろう?

その疑問はきっと無理やり聞き出してもしょうがないことだから。
私はコートとスーツとネクタイを掛けて
小さくため息をついて寝室に向かった。

私たちの出会いはもうかれこれ15年にもなる。
その間に数日だけ付き合って別れてまた付き合って、結婚して・・・
色々あったけど、年月の長さはただの長さじゃない。
大丈夫。蒼はきっと話してくれる。

ダブルベッドに入って目を閉じて
楽しいことを考えようと、数日前に会った佐藤と佐藤の彼女を思い浮かべる。
幸せになってほしいな。
そう感じて幸せな気分になって、それが目をつぶった表情に表れていたんだと思う。

「楽しそうだね」

開けておいた寝室のドアにもたれかかって
洗った髪をタオルで拭きながら蒼が言った。

「出たの?」
「ああ」

「出張中に佐藤から電話があった」
「へ~?」
「例の吉見ちゃんときちんと付き合うらしい」
「うん」
「里香に会ったって言ってた」
「蒼と新横浜で別れた後、桜木町で映画でも見ようと思って。
駅前で佐藤と彼女に会ったのよ」
「うん。そう言ってた」

そこで、蒼が一呼吸置いた。

「もう、里香のことはきっちり吹っ切れたから心配するなって言ってた」
「・・・・」

「あいつが・・・里香に気持ちを残していることには気が付いてた。
だから、早く本気の彼女が出来ればいいと思ってた」
「蒼・・・?」

「大学時代も、そのあとも、あいつは彼女を何度作っても
決して本気にならなかった」
「・・・・」

「ずっと心の奥底で心配だったんだ」
「え・・・」

「もう、何年前かさえ忘れてしまったあの時のように
里香が俺と別れて佐藤を選ぶことがあるかもしれないって―――」

「蒼!!!」

「ごめん。でもそれが隠していた本心なんだ」

心の奥を告白する蒼に私はびっくりした。
そんなことを考えていたなんて。

「蒼くんだけを愛してる。
そう思わなきゃ、結婚なんかしない」

呼び方が・・・無意識のうちに学生時代の呼び方になっていた。

「里香」
「蒼くん。蒼くんが私だけの蒼くんであるように、私も蒼くんだけの私だよ!」

ギュッと抱きしめて。
そしてキスをする。

好きだから、不安になる。
愛しているからこそ、疑ってしまう。

「蒼くん、これからもいろいろな感情が私たちを取り巻くと思う。
でも二人で話し合って乗り越えていこう」

私たちはその日、手をつないでいつまでもベッドの中で昔話をした。

END******
[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2015-11-21 14:28 | ・カウントダウン | Comments(4)

花びらの下で

女の子に興味なんかなかった。
男友達のほうが話があったし、俺に対して声も変わらない。
何なんだ?あの女子の俺に話しかけるときに声が変わるのって・・・

そんな風に思って中学生生活をあと半年で終えようとしたとき
文化祭実行委員会で古川さんに会った。
マンモス校のうちの学校は同じ学年でも知らない子がいる。

飾らないその雰囲気とかわいい笑顔が気になって目で追っていたら
誰よりも真面目に仕事をしてて。
なんていい子なんだろうと、好きになってた。

いつ。どうやってこの気持ちを伝えたらいいのか。
俺は告白はよくされるけどしたことはない。
どんなふうにしたらいいのか。真剣に考えた。

告白する女の子の度胸をほめたいとさえ思った。

そんなとき古川さんに呼び出された。
「蒼くん。好きです」
心の奥底で告白かな?と期待してみたけど。
実際に言われるとびっくりした。

「じゃぁ付き合う?」
良く女の子が言う「伝えたかっただけだから」と言われる前に
何か言わなきゃ。と思ってとっさに言った言葉がそれだった。

「え?」
と驚いた古川さんはやっぱり伝えたかっただけなんだろうか?
「僕を好きなんだよね?付き合う?」
好きだってもう一回言ってくれ。付き合うって言ってくれ。
「付き合うの?どうするの?」
心変わりしないように古川さんに畳みかける。
「つ、付き合います!」

たぶん。
古川さんは勢いで言ったんだろう。
それでもかまわなかった。
俺は古川さんと付き合うという事実に浮かれていた。

毎日家に帰って、古川さんにメールをする。
今日あったことを話したくて。
古川さんのことをもっと知りたくて長文を打つ。
そして、読み返してダーッと消す。

こんなことを長々と書いて嫌われないか心配になって
俺は俺自身のイメージにがんじがらめになって
そっけない一文だけ送る。

何がいけなかったのか。
今ならわかる。
今ならわかるんだ。
けど。あの時の俺は分からなかった。

周りが見えなくて
俺自身しか見えなくて
里香の事しか見えなくて・・・・
そして里香を失った。

もう、みんなの蒼くんでいいと思った。
誰とでも付き合ってやる。
付き合いたい子は見えない列に並んでいるかのようだった。

だけど。俺は誰のモノにもならない。
みんなのモノ。それは誰のモノでもないってこと。
それでいいんだ。

そんな風に思っていた自分に可笑しくなる。

里香を手放して心が痛いくせに。
自分のせいで里香が傷つくのが怖かったんだ。
守り切れる自信がない自分に苛立って
ほっといてくれない周りに八つ当たりした。

隣で俺の手を握って機嫌よく小さい声で歌を歌いながら
桜の下をスキップしてる。

里香―――

どうして君と離れられるなんて思ったんだろう。
でもあの5年間があるから。
今の俺たちがあるんだ。

「蒼くん。桜きれいだね」
「ああ。一緒に桜の下を歩きたかったんだ」

「これもカウントだね!」
笑いながらそう言う里香にキスをした。

END****
[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2015-04-05 07:00 | ・カウントダウン | Comments(0)

秘密の時間

「蒼くん。凄くドキドキするんだけど」

毎日、蒼くんと電話をしているなかで
蒼くんのお母さんが、彼女に1回会わせてよ。と言ったらしい。

私は今日ドキドキしながら蒼くんのおうちにお呼ばれした。
ああ・・・・
本当なら5年前にこの試練は経験済みのはずだったんだろうか?

「ん?今日も里香は可愛いから大丈夫」

そんな能天気な事をいう蒼くんに、この気持は分からないと思う。

「こんにちは。古川里香です」

そう言って何とかにっこり笑った私の顔をなぜか、蒼くんのお母さんはじっと見つめ
「蒼の母です。よろしくね」
と言って、和やかに話しが弾んだ。

と、とりあえず、初顔合わせは成功?
お邪魔してから数時間が経ってそんな風に思った矢先
蒼くんの携帯に同じ研究グループの人から連絡が入った。
「ごめん。里香。俺の持ってるデーターをグループのやつに渡さなきゃいけなくなったんだ。
今、駅まで来るって言うからちょっと届けてくるよ」
「あ。じゃぁ、私ももう帰るよ」
そう言って立ち上がろうとしたら
「良いじゃない。蒼は1時間ぐらいで帰ってくるわよ。里香ちゃんはまだ居なさいよ」
蒼くんのお母さんにそう言われ、
なんとなく帰りそびれてしまった。

二人きりで話しをして、ふと会話が途切れた時、蒼くんのお母さんが
「里香ちゃん。もしかして、蒼が高1の時に少しの間お付き合いした?」
ギクッ
っと心の音が聞こえたような気がした。

「あの・・・」
「あ。ごめんね、何かを聞き出そうとか、そう言うんじゃないの」
「・・・・」
「あの頃、蒼が凄く嬉しそうに楽しそうにしてたから。
理由を聞きだしたら、彼女が出来たからって」
「え・・・・・っ」
「すぐに別れてしまったようで、機嫌が悪くなって。
それからは、里香ちゃんも知ってるでしょう?なんだか女の子をとっかえひっかえ・・・」
「・・・・」
「それがまた急に機嫌や素行が良くなって。機嫌がいい時に聞いたら彼女が出来たって」

「今日、来たときに里香ちゃんの名前を聞いてピンと来たのよ。5年前の彼女だって」
「はい」
「もしかして、蒼が無理やりお願いしたのかしら?」
「あ・・っ!いえ」
「里香ちゃん?」

私は頭の中が整理できなかったけど
とにかく素直に、今思っている事を蒼くんのお母さんに告白した。

「5年前のことは、私が勝手に勘違いしてダメにしちゃったんです。
でも、5年前の事があったから。今の私たちがあるんです」

「そう。良かった」

「はい」

「蒼ね。本当に里香ちゃんが好きみたい」
「え?」
「毎日本当にウキウキしてるの。親が見てもおかしいぐらい」
「・・・・」

「里香ちゃん、ありがとう」

私こそ。ありがとう・・・・

ツーッっと涙が流れた。

そんな私を見て、蒼くんのお母さんは
温かい紅茶を入れ直してくれて

「私たちが今話したことは蒼には内緒ね」

そう言ってウインクした。


END*****
[PR]
by ichigo-ichigo205 | 2014-07-29 15:46 | ・カウントダウン | Comments(0)

サイドストーリー


by いちご
プロフィールを見る