カテゴリ:・花の咲くころ( 6 )

おそろい


区役所に行ってもらって来た婚姻届にサインをする前に
花がメモ帳に新たな自分の氏名を書いていた。

「楠花。楠 花」

そこで少し、う~ん・・・と考えて
「ねぇ駿ちゃん。楠 花って変じゃない?」
なんていう。
え?いまさら何言ってんだよ!

「いや。凄く合ってる。
生まれた時から俺のお嫁さんになるのが決まっていたかのようにピッタリ!」

「そう?」
「うん。もう楠花以外の名前はしっくりこない!」
「そう?永坂花って気に入ってたんだけどな」
「え!変えたくないの?」
「ん~。そこまで強い思いはないけど」

「名字を変えるのがイヤなら、俺が永坂になる?」
「えっ!」

「そんなことほんとに小さいことだから!名字なんかどーでもいいから」
「でも駿ちゃん、お仕事とか困るんじゃない?」
「んなもん、どーにでもなる」

花屋で働いている私と違って、商社に勤めている駿ちゃんが名字を変えるのは
仕事上に支障が出たり、好奇な目で見られたり色々大変だと思うけど。

それでも小さい事なんて言い放っちゃう駿ちゃんは本当に心の大きな人だと思う。

「別に楠になるのがイヤって訳じゃないけど・・・
楠花、って名字も1文字名前も1文字で変じゃない・・・よね?」

「なんだ。花そんな事を気にしてたのかよ。
俺なんか生まれた時から楠駿だぞ」
「うん。なんか駿ちゃんはピッタリだからいいと思う」

「花だってピッタリだよ。生まれた時から俺のお嫁さんだな。
名字が1文字で名前が1文字なんて、俺とおそろい」

駿ちゃんは嬉しそうに私をハグしてキスしたけど。

夢ちゃんだって1文字の名前だし
駿ちゃんの弟の昴だって1文字じゃん

なんて事は、言わないでおいた。

ちょっとゴネてみただけ。

駿ちゃんと二人で婚姻届にサインをして。
私は、楠花になります。

END****








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by ichigo-ichigo205 | 2018-05-15 14:59 | ・花の咲くころ | Comments(0)

Merry Christmas☆

12月も半ばが過ぎたころ
駿ちゃんが「今年のクリスマスは3連休とれそうだ」
なんて言い出した。

「え?ほんと?」

ただでさえ普通の土日も丸々2日休みの時なんかない。
土曜日の午前中は仕事に行ったり
土曜日は夜まで仕事だったり・・・・

「うん。ほんと」

うわ。何しよう!

「映画を何本か観に行きたい」
「ああ」

「イルミネーションを見に行きたい」
「いいよ」

「クリスマス料理を凝って作って一緒に食べた~い」
「うん。そうだな」

したいことは山ほどあって
どれもこれもしたい。

一気に膨らんだ「したいこと」のリストは次の瞬間に急にしぼんだ。

「あ・・・やっぱり当日に計画を立てよう・・・かな」

静かに苦笑いした私に、駿ちゃんは眉をひそめる。

「どうした?」
「ううん。その日の朝に、今日は何をするか、を決めたほうがいいかな・・・」

今まで何回も「ごめん」と聞いてきた。
朝になって一息ついたころ、会社から電話がかかってくる。

「行かなきゃならなくなった」

何回がっかりしただろう。

「花、もしかして、計画がキャンセルになるのを心配してる?」
「・・・う、ん」
「そっか。ごめんな。そんなに花に悲しい思いをさせてたんだな」

駿ちゃんは私を抱きしめて、何回も「ごめん」というけど。

「違うの」
「ん?」

「計画がキャンセルになるのは寂しいし、残念だけど・・・」
「うん」
「違うの」
「ん?」

「仕事に行くとき、駿ちゃんは私に『ごめん』っていうでしょ」
「ああ」
「その時、駿ちゃんに申し訳ないって顔をさせることが申し訳ないの」
「え・・・?」

「駿ちゃんは仕事をイヤイヤやっている訳じゃないし
とっても責任のある立場なんでしょう?」
「え?」
「雅哉先輩が分かってやれって」
「・・・・」

「でもね。雅哉先輩に教えてもらう前からちゃんとわかってたよ。
だから、予定は当日に決めよう。
ほんの少しでも駿ちゃんの気が重くならないように」

「花・・・」

駿ちゃんはさらに私をぎゅっと抱きしめた。

「一緒にいてくれるだけで幸せ。
Merry Christmasって言い合えるだけで幸せ」

「いつも忙しくてごめん。俺も花と一緒にいられるだけで幸せだよ」
「もし、仕事になったら夜に職場のほうまで行くから
一緒にみなとみらいのイルミネーション見ようね」
「ああ」

「たとえ駿ちゃんが仕事でも、これでクリスマスが楽しみになったね!」

そういった私に駿ちゃんはそっとキスをした。


END****

皆様、Merry Christmas☆
素敵な1日をお過ごしください☆
 いちご
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by ichigo-ichigo205 | 2016-12-25 01:23 | ・花の咲くころ | Comments(2)

邪魔者は誰だ?

大学に受かった春。
大好きな幼馴染の花が
「駿ちゃんにお祝いしなくちゃね」と可愛くほほ笑んだ。

かわいい・・・

本当に花は可愛い。
それに比べてっ!
俺は、隣に座っている花の姉の夢を横眼で見た。
また大学も同じかよっ!

せっかく東京に出るのになんでこいつも同じ大学なんだよ。

「お祝いは花の作った料理が良い」

そう言って、俺は食べ慣れた花の麻婆豆腐をリクエストした。

夢のいない日を調べてリクエストしたのに・・・
なんでこいつも一緒に食べてんだよ!

「なんでお前いるんだよ・・・」
「は?」
「いつも俺と花の邪魔しやがって」
「バカじゃないの?あんた!」
「はぁ?」
「あんた、私が今日いないと思って来たんでしょう?
ウチは親も毎日仕事で遅いもんね!」
「・・・・・」
「お生憎様!花とあんたをこんな時間に2人にしないわよ!」
「・・・・」

「お前さぁ、なんで東京の大学にしたの?」
「東京でやりたいことがあんのよ」
「なんでわざわざ同じ大学なんだよ?」
「はぁぁぁ?あんたが私と同じところにしたんでしょうが!」
「は?俺?」
「あんたよ!」

コイツ・・・

「あんたバカじゃないの?花から離れて平気な訳?
あの子あんたが思ってる以上にモテるのよ」
「知ってる。だから夢が残ればいいだろ?ガード役で!」
「あんたバカ?やっぱりバカなの?バカだと思ってたけどバカなのね?」
「・・・・・」
「それはあんたの役でしょう?私は東京でやりたいことがあるって言ったでしょ」
「そっか。ごめん」
「知らないからね。花が他の男に取られても」
「・・・・・」
「だからなんで地元にしないのよ!」
「地元じゃロクな就職先ないだろ」
「は?」
「ちゃんと大きな会社に勤めて、社会的にも経済的にも花を支えたいし守りたいんだ。
そのためには地元の大学よりも東京に出たほうが良いと思って」
「・・・・どーでもいいけど。あんた考えがオヤジ臭い」
「はぁぁ?今、俺いいとこなんだけど」
「私に言ってもしょうがないでしょ。やっぱバカね」
「お前ねぇ」

「夢ちゃん。駿ちゃん、喧嘩しないの。もっと楽しそうに食べてよ」

「はい」
「はい」

「夢ちゃんと駿ちゃんがいなくなると寂しいな」
「花、俺がいなくなると寂しいか?」
「花、私がいないと寂しい?」
「寂しいよ」

「じゃぁ、いつでも泊りに来い」
「バカじゃないの?男のあんたの部屋なんかに泊らないよね?
私の部屋に泊りにおいで」

「そんな・・・あたし、夢ちゃんと駿ちゃんの邪魔はしないよ」

「邪魔はこいつだ!」
「邪魔はコイツよ!」

END****





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by ichigo-ichigo205 | 2016-07-26 13:45 | ・花の咲くころ | Comments(0)

プレゼント

主任になってしばらくたって、仕事も軌道に乗ってきた。
まぁ部署が変わった訳でもないし
やってることは今までと変わらないけど責任が1つ重くなった。

もうすぐ花の誕生日だ。
毎年、プレゼントは何が良いか聞くと
「駿ちゃんがくれるものなら、何でも」という。
今年も一応聞くけど、その答えだろう。

今年は・・・エンゲージリングをプレゼントしようと思い立った。
主任にもなって、この会社でやって行こうと改めて意識も高まった。
このまま一緒に住んでずるずるにはしたくない。

花を早くこの手の中に包んでしまいたかった。

そう思って、早く仕事を切り上げた日に指輪を買いに行った。
選びに選んだ、花にぴったりの可愛いデザインで
名前を入れてもらって誕生日の前日に出来るようにしてもらった。

誕生日前日、それを持って嬉しい気持ちいっぱいに家に帰った。

「花。明日誕生日だろ。何か欲しいものはある?」
一応、花に問いかける。
「・・・・ある」
「え!」

予想外の返事にちょっとびっくり。

「今年は欲しいものがあるのか?」
「うん。ダメ?」
「・・・・ダメじゃないよ。俺があげられるものなら何でも言って」
「何でもいいの?」
「いいよ」

指輪は花の欲しいプレゼントの後に渡そう。

「駿ちゃん」

「え?」

「駿ちゃんが欲しい」

「・・・いや。あの」

「駿ちゃんが欲しいの」
「俺は、花のモンだよ」
「違うの。ちゃんと欲しいの。
駿ちゃん。あたしと結婚して下さい」
「―――っ!」

まさか・・・
花の誕生日に逆プロポーズされるとは思わなかった。

「ハハ。まいったな」
「駿ちゃん、何でもいいって言ったじゃない!」
泣きそうな花が一生懸命言う。

「そうじゃないよ。同じ事を考えてたよ。はい」

目の前に取ってきたばかりのエンゲージリングを差し出した。
「明日渡そうと思ったけど。1日早いけど良いよな。
花。俺と結婚しよう。ずっと一緒にいよう」

「うわぁ。綺麗」

「俺の中の花のイメージだよ」

「ほんと?あたし、こんなに可愛い?」
「うん。花にピッタリだと思った」

「ありがとう。凄く嬉しい」

「うん。まさか花に先に言われると思わなかったけどね」
そういって苦笑いする俺に飛びついて行きた。

「駿ちゃん。大好き。
駿ちゃんも指輪も一生大事にする。ありがとう」

その時から、俺はプレゼントとして一生、花のモンになった。


END******
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by ichigo-ichigo205 | 2015-06-02 05:00 | ・花の咲くころ | Comments(6)

駿ちゃんの寝顔

あたしと駿ちゃんは近くのレンタルビデオ屋さんに来ていた。

「ごめんな。花。映画を見に行くって言いながら
なかなか休みが取れなくて」

「ううん。駿ちゃんお仕事だもん」

にっこり笑えば駿ちゃんはお店の中なのに今にもあたしを抱きしめそうだ。

「ほら、新しいのでも古いのでも花の好きなの借りよう」
「うん」

土曜日の今日もお仕事で、映画には明日行こうって約束していたけど
明日も仕事が入ったので休めないらしい。

駿ちゃんはもう、何週間、休みって言う休みを取ってないんだろう。

あたしが見たいDVDを2本借りて、ご飯を食べながら見て、お風呂で中断して
2人でベッドに入りながら続きを見る。

いつの間にか駿ちゃんはコックリコックリ寝始めた。

あたしはそれが分かっていたからそっとDVDを消した。

いつもはあたしが大切に抱きしめられて
髪をなでてもらうけど。
今日はそっと駿ちゃんの髪をなでてみる。

「ね。映画が見たい訳じゃないんだよ。駿ちゃんと一緒にいたいだけ。
あたしのために無理しないでね」

それでも、あたしのために夜遅くまでDVDを見ようと言ってくれる駿ちゃんに
「見なくていいよ」とは言えなくて。
せめてベッドの中ならすぐに寝ちゃうかな。と思ってベッドで見ようと誘った。

「いつも、ありがとう」

そう言って寝ている駿ちゃんのほほにキスをした。



END******
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by ichigo-ichigo205 | 2014-10-01 19:00 | ・花の咲くころ | Comments(2)

優しい駿ちゃん

今日は駿ちゃんの同期の野口さんと山田さんがご飯を食べに来る。
土曜日だっていうのに仕事だった3人は早めに終わらせて来る予定。

あたしが料理を作っていたら
夢ちゃんがやってきた。

「はな!今日は旦那が出張だからご飯食べさせて!」
「いいけど。今日は駿ちゃんの同期が来るからおとなしくしててね」
「はいはい」

夢ちゃんのハイハイは全く信用できなかったけど
とりあえず料理を作らなきゃ。

夢ちゃんが料理をつまみながら
あたしの邪魔をしていると、駿ちゃんたちが帰ってきた。

「あ!夢がいる。なんでいるんだよ・・・」
「その言い方はないでしょう!少なくとも先輩の奥様に」
「何が奥様だ。奥様みたいな行動をとってみろよ」
「なんですって!駿なんか私がいなければ花に手が出せなかったくせに!」
「なにを」

いつものように軽い言い争いが始まった。
はぁ・・・・
そんな風にため息をついたら

「おおお!駿ちゃんが声を荒げてる!」
「初めて見た!駿ちゃんっ!」

と野口さんと山田さんが興奮した。
あの二人、またイヤミで「駿ちゃん」って呼んでる・・・

「お前たちのこと忘れてた・・・」
「駿ちゃん、俺たちのこと忘れてたの?」
「駿ちゃん、ひどい!」

「こちらは?」

気を取り直した山田さんが夢ちゃんの紹介を促した。

「あ。経理部の篠塚主任の『奥様』で、花の姉。それから残念ながら俺の幼馴染」
「なによ!残念ながらってっ!」

「え!篠塚主任の?」
「へ~・・・意外なつながり」

「駿ちゃん、おかえりなさい」
あたしは話が落ち着いたところで、いつものようにぎゅっと俊ちゃんに抱きついた。
「花。ただいま。土曜日なのに出勤してゴメンな。寂しかった?」
「寂しかったけど。お仕事だから・・・」
「ん。ごめん」

駿ちゃんはあたしの頬にチュッとした。

「なに・・・駿ってこんなに花にはデレデレなの?」
「いつもですよ」
「駿ちゃんってば、花ちゃんにはいつもこんな」

「私の知ってる駿じゃない・・・」
「そう。俺たちの知ってる楠でもない」

「私にはあんなに意地悪なのに」
「職場では堅物で通ってるのにな」
「まさか楠がなぁ~」

「え?駿ちゃんは前から、優しいよ?」
「俺が優しいのは花にだけだよ」

そういって駿ちゃんはみんなの目があるのに私の頬にまたキスをした。


END****
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by ichigo-ichigo205 | 2014-09-06 17:00 | ・花の咲くころ | Comments(2)

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