カテゴリ:・心も抱きしめて( 7 )

懸賞 懸賞

花火大会②

懸賞 2018年 08月 23日 懸賞

オープンキッチンのカウンターに置かれている椅子をくるりと回して壁一面の窓の方へ向けて座る。

高層マンションから見る花火は地面から見る花火とはまた違った感覚だ。

真上ではなく『少し上』で花火が花開く。

「浴衣を着て来てくれるとは思わなかった」

カウンターに置かれたワインのボトルは
石島さんの会社が今年輸入を始めたワインだそうでとっても飲みやすい。
オーガニックレストランでだけ、飲めるらしい。

「ん?なんで?」

部屋を真っ暗にして
花火の音と閃光だけが部屋を包んでいた。

「外に行く訳じゃないから、普段着の方が楽だろう?」

そう言って、私の襟足を触る。

「この、浴衣の襟から出てるうなじ、凄い色っぽいな」

髪をアップにして、いつもは見せないうなじを見せる。
なんだか恥ずかしくなって、手で隠せば
石島さんは意地悪く笑ってその手を外し、そこにキスを落とした。

「ここにキスマークをつけたら帰れないな」

そう言って、今自分がキスをした私のうなじを親指で撫でた。

「つけなくても、帰らないわよ」

くすくす笑ってそう言えば

「花火が明るいうちにベッドに行く?花火の下で抱きたいな」

「だめ。花火は来年まで見られないもの。
一緒に見たいわ。そのために浴衣を着てきたんだもん。
花火が終わったら、抱いて」

「ライバルは花火だったか」
石島さんはそう苦笑いして、グラスのワイン越しに花火を見た。


END****






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by ichigo-ichigo205 | 2018-08-23 13:05 | ・心も抱きしめて | Comments(0)

お願い

懸賞 2016年 07月 04日 懸賞


ちょっとこれから当分忙しくなるから会えないな。
メールも思うようにできないと思う。ごめん。

石島さんにそう電話で言われたのが2週間前。
確かに私も忙しい時期だけど
土日も含め2週間もまったく音沙汰がないってど―ゆー事?

毎日メールくれなんて、私も忙しいから言わないし言えないけど。
それでも2週間もまったく連絡できないほど忙しいの?

そう思って、今まで我慢していたメールを打ちこむ。
「石島さん。忙しいようですが大丈夫ですか?ご飯でも作りに行きましょうか?」

私が打ったメールから数日たって
「イヤ。大丈夫」
と返事が来た。

何が大丈夫なの?
本当に大丈夫なの?
・・・って私が大丈夫じゃないんだってば!

私も忙しかったけど、金曜日に半休を取る宣言をした。
午後は休んで石島さんの部屋で待ち伏せしてやる!

いい加減石島さん不足になった私は、買い物をして合い鍵で石島さんの部屋に入って
夕飯を作って待っていた。

それなのに・・・
待てど暮らせど石島さんは帰ってこない。
「おーい。日付はとっくに変わってますけど」
一人の部屋でそう声に出してみる。

思わず大きなため息をついた。

そうだよね。終電に乗れない事が多いから
この部屋に住んでいるんだもんね。

電気を消して、窓際に行って下を眺める。
相変わらず、綺麗な程の色とりどりの夜景に見入った。

この部屋、いったいくらの家賃なんだろう。

夜景が一望できる高層マンションのこの部屋は、石島さんの唯一の贅沢だと笑ったけれど。
実際、電車が動いている時間に帰れないから実益も兼ねているんだろう。
まぁ・・・それならこんな上層階の必要はないか。
そう思って小さく笑った。

そう考えている時に、リビングの部屋がカチャッと開いた。
「由香里?」
真っ暗な部屋で、大きな窓のそばで私を見つける。
夜景の逆光だからか?目を細めてシルエットだけの私に問いかけた。

「来てくれてたんだ。ごめん。もうこんな時間だな。
来ると知ってたらもう少し早く帰ってきたんだけど」

そう言いながら、スーツの上着を脱いでソファーにかける。
ネクタイをゆるめながら私に近づいて後ろから抱きしめた。

「急に来てごめんね」
そういう私に
「そのための合い鍵だろ」
と真っ暗な部屋で立ったまま後ろから首筋にキスをする。

「どうして2週間も連絡くれなかったの?」
「寂しかったか?」
「忙しいのは分かるけど・・・私の事どうでもいいのかと思っちゃう」
私のすねたその言葉に、一瞬首筋のキスが止まって。

「ごめん。かなり忙しかった」
そう言い訳する。
「忙しくても!」
「うん。かなりヘバッてた」
「・・・・え?」

「この時期に忙しいのは毎年なんだ。
極限まで仕事して、仕事中に10時ごろ残ってる連中でカップラーメンをすする」
「・・・・」
「1時過ぎに帰ってきて、また5時に起きて6時に家を出る」
「・・・・」
「ここにはシャワーと寝に帰ってくるだけだ」
「・・・・」

「仕事のこと以外何も考えられない。
かろうじて、朝には身支度を整えるけど、帰りにはボロボロだ」
「うん」

ボロボロだと言うけど・・・
相変わらず石島さんはカッコいいし。
その疲れた感じで、上着を脱いだ姿もなんか母性本能をくすぐった。

「こんな俺を見せたくない」
「え?」

「なんだか疲れて、余裕のない俺を由香里に見せたくなかったよ」
そう言って首筋のキスを再開した。

「メールをしても弱音を吐きそうで怖くて出来なかった」

「石島さんは・・・」
「ん?」
「たまにはカッコ悪くなるべきだと思う」
「え?」

「いつまでも私の前でカッコいい面だけ見せないで」
「そうか」
「私がぎゅってしてあげる」

そういってくるっと身体を半回転させて石島さんと向き合う。
そして私からぎゅっと石島さんを抱きしめた。

「由香里・・・だったら、本当に引っ越してきてよ」

ちらっと見せた弱音が可愛かった。

END*****




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by ichigo-ichigo205 | 2016-07-04 15:44 | ・心も抱きしめて | Comments(0)

誘惑

懸賞 2015年 09月 28日 懸賞

石島さんに「一緒に暮らそう」と言われても
なんとなく恥ずかしかったり踏ん切りがつかなかったりで
やっぱり週末のお泊りになっている。

そんなある金曜日、
石島さんのマンションの洗面台に、あの日二人でだめにした美容液の新品が置いてあった。
あの時のことを思い出して恥ずかしくなって
「石島さんっ。これ・・・!」
とリビングにいる石島さんに問い詰めると
「ああ。買ってあげるって約束してただろ」
とさらりと言われた。

「ありがとう・・・ございます」
「イヤ。由香里、何赤くなってるの?あの時のコト思いだした?」
なんてニヤつくから
「そ、そんなことありません」
とそっぽを向いたら
「じゃぁ、思い出せよ」
と、後ろから抱きしめられた。

「いい加減引っ越してこない由香里を誘惑してるんだよ」
「え・・・」

「何を躊躇してるのか知らないけど。
毎日毎日顔が見たいんだよ」
「・・・・」
「この化粧品であの日のことを思い出せば、俺と離れていられないって思いだすだろ」

いつもは穏やかな石島さんが耳元で意地悪くささやいた。

「俺の誘惑に乗れよ」

そう言ってゆっくりと美容液のふたを開けた―――


END******
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by ichigo-ichigo205 | 2015-09-28 11:02 | ・心も抱きしめて | Comments(2)

名前を呼んで②

懸賞 2015年 06月 15日 懸賞

俺と由香里が付き合い始めたと聞いて、いつもは年に1回しか会わない
サークルのメンバーが、お祝いに会おうと集まってくれた。

わざわざ土曜日にしてくれたけど、やっぱり俺は休出で
遅れて行ったら、いつものようにみんな出来上がっていた。

「そうですねー。石島さんは優しいですよ」
「やさしいかー。松元には優しいのかー。あの石島がなぁ~」
「石島君が優しいのってあんまり想像つかないね~。
なんか、女の子に執着なさそうなのにね」

勝手なことを言ってる。
ちょっと、座敷の前で話を盗み聞くことにした。

「あ。私も石島さんのイメージはそんな感じでした」
なんていう由香里の発言に一気にその場が大笑いした。
おいおい・・・・

「松元、付き合っても『石島さん』って呼んでるのか?」
「そうですっっ!」
由香里、相当飲んでるな?
「石島は付き合う前から、俺たちには『由香里』って呼んでたぞ」
あいつらのニヤニヤが思い浮かぶ。
「本当ですかっ!」
「本当だ。だから松元も『隼人さん』って呼んでやれ?」
あっはっはっは。とまたも大爆笑だ。
そろそろ顔を出すか・・・

「俺は、『隼人』がいいな」
そう言って、急に暑苦しくなったネクタイを緩めながら
盛り上がっている座敷に入って行った。

シンッとなって笑いをこらえる面々をしり目に
由香里の目の前に座り込んでじっと由香里をのぞき込む。

「隼人、って呼んでよ。由香里」

「ん~・・・・・・まだ無理です~」

なんて酔ってるくせに恥ずかしそうに照れ笑いする由香里に俺は苦笑いしたあと
みんなの前で抱きしめた。

「みんな、今日は集まってくれてありがと」

まぁいいよ。
そのうち、ベッドで呼ばせてやる。


END******
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by ichigo-ichigo205 | 2015-06-15 12:00 | ・心も抱きしめて | Comments(0)

忙しい2人

懸賞 2015年 05月 05日 懸賞

カチャッと鍵をゆっくりまわして
出来る限りそーっとドアを開ける。

石島さんに合い鍵をもらって
たまに早く帰れる日には、お邪魔する。

何回開けてみても、
家主のいない部屋の鍵を開けるのはなんだか落ち着かない。

「お邪魔しま・・ぁす」

小さい声で呟くけど。
もちろん返事なんかなくて。
物音がしないように廊下を歩いてリビングにたどり着いたら
そのまま部屋の電気を付けないまま窓際に行く。

「綺麗・・・」

眼下に広がる横浜の夜景は、本当に宝石箱で。
キラキラ光るその夜景を見るだけでこの部屋に来たかいがある。

私が来ることはいつも連絡はしない。

石島さんは連絡をすると仕事を切り上げてきちゃいそうだから。
仕事の邪魔はしたくない。

しばらく会えないと寂しくなってこの部屋に来る。
そして夜景を見て、明日も頑張ろう。と思える。

いつもはこのままそっと帰るのに。
今日はなんだかすごく寂しくなって。
相変わらず窓際にデンと置かれているベッドにごろりと横になる。

「石島さんの匂いがするなぁ~・・・」

枕を抱きしめて。
きっと12時間前まで石島さん本人を包んでいた布団に包まれて
軽く息を吸えば、石島さんの匂いに包まれた。

ハッと気がついたのは、誰かが髪をなでているから。

あのまま・・・寝ちゃったんだ。

「由香里。気がついた?」
「・・・ん」

疲れている身体はまだ半分、寝ぼけたままで。

「たまに来て、気づかないように帰っちゃうだろ」

あ~・・・ばれてたんだ。

「寂しいのが自分だけだなんて思ってないよな」

苦笑いしながら私の髪をなで続ける。

「俺もさみしいんだけど。
帰ってきて、由香里の気配がして、もういないと分かると余計寂しい」
「・・・・ん」

「忙しくてごめんな」
それは!私も。お互い様。
「私も。忙しくてごめんね」
私の髪をなでる手にキスをした。

「一緒に住もうか」
「・・・・え」
「すれ違わないように。毎日一瞬でも良いから顔が見たい。
たとえ寝顔でも」

「うん・・・」

そう答えた私に石島さんは身をかがめてキスをした。


END****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-05-05 07:00 | ・心も抱きしめて | Comments(4)

2年前の今日

懸賞 2015年 02月 23日 懸賞

30になって主任試験に合格した。
会社の規定通りの出世だ。ここで主任になれないと
第一期の出世争いから離脱したことになる。
同期のうちの約4分の1がふるいにかけられているはずだ。

主任試験に合格してほっとしたのもつかの間
主任というポジションはあまりにも忙しく
毎日がただ流れる毎日だった。

大学時代のサークルのメンバーとの年に1回の集まりに
何とか間に合わせるように仕事をして
それでも2時間ほど遅れて居酒屋に駆けつけると
すでにみんな出来上がっていて
ああ、気の置けないメンバーっていいな。と思いながら座敷に上がろうとしたら

「だーかーらー。別れたんですよっっ。彼氏と」

と、座敷の真中を陣取って松元が力説をしていて
みんなが苦笑いしながら飲んでいた。

「もういいです!私は仕事に生きます!
仕事をしている私を丸ごと受け止めるいい男なんかいないんだぁぁ~」
「あっはっは。いいぞー!松元ー!!」

大学時代、いいなと思っていた1コ下の女の子だった。
当時は松元に彼氏がいて、付き合うことが叶わないならと
他の女の子たちと遊んだりしてた。
就職して忙しいうちに松元を好きな気持ちも忘れていた。

「私、仕事に生きます!」
「あっはっはっはっは」

「じゃぁ、俺と付き合わないか?」

座敷に上がりながら、松元にそう言うと、
その場が一瞬シン・・・となった。

「石島さん?」
「うん。俺と付き合わないか?」
「石島さんと、ですか?」

「あぁ。松元が仕事にのめりこんでも、理解するよ。
仕事と俺とどっちが大事かなんてくだらないことは聞かない。
俺のことはゆっくり好きになってくれれば構わないよ」
「・・・・」

「大学時代から好きなんだ」

そこにいる全員が俺の言葉に注目していた。
事の成り行きを固唾を飲んで見守っていた。

「うそ」
「は?」
「うそでしょ」
「え。いや。嘘じゃないけど」

「うそだ!石島さんはあんなにモテたじゃないですか!」
「え・・・いや」
「大学時代からすきぃぃ?そりゃぁ嘘です」
「じゃぁ、それを信じなくてもいいから。今から俺と恋を始めないか?」

「信じられないなぁ~」
とろんとした酔っぱらいの顔で、それでもきっぱりという。

「どうしたら信じる?」
俺も松元の反応が面白くなって聞いてみる。

「2年ですね!2年間、私のことが好きだったら信じますよ」
「2年?」
「そうです。大学時代から、なんていうなら2年なんて短いでしょう?」
「・・・・」
「2年後に好きだったらもう1度、言ってください~」
「よし。絶対だな」
「絶対で~~すっっ♪」

仕事が忙しすぎてシャレにならない状況で
新しい恋愛を始める余裕ははっきり言ってなかった。
けど、あそこで名乗りを上げないと一生、松元と接点がない気がした。

2年後。主任の仕事もめどが立っているはずだ。
まためどが立つように、松元との付き合いが順調にスタートできるように
この2年頑張ろう。

俺は2年間の仕事に意欲を燃やして新年会をあとにした。
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by ichigo-ichigo205 | 2015-02-23 07:00 | ・心も抱きしめて | Comments(6)

2年後の今日

懸賞 2015年 02月 20日 懸賞

由香里との約束から2年たって
そろそろ本腰を入れて落としに行きますか。
と思っていた今年の新年会。

良い具合に酔ってきたかな。と思って
近づいたら、事もあろうか美香ちゃんと
セックスでイく、イかないの話しを大声をしてた。

おいおい、自重しろ。

「君たち、そーゆー個人的な話しは大勢の飲み会でしない!」

話しの流れから俺がイかせてやると豪語して
名刺を渡して繋がりを作った。

そんな時「おーい。石島」と
向こうで俺を呼ぶ声がしたので
「ごめん。ちょっと行ってくる」 と由香里の傍を離れた。

「なんだよ?今大事な話をしてんだよ」
俺を呼んだ数人の悪友に悪態をつく。

「いや。松元に告白して約束の2年がそろそろか?と思って」
「だから!今その話をしてたんだよ!」

「石島くん、本当に2年待ったの?」
「すごっ!」

ほっといてくれ。

「じゃぁ、俺と付き合わないか?なんて石島君が言うとは思わなかったよね」
「おぅ。あれはビデオもんだったな」
「あんなに観衆の前での一世一代の告白だったのに
告白された本人が忘れてるんだもんな」
「松元さんも大モンだよ」
「あっはっはっはっは」

「・・・・・」

俺の告白は由香里以外の皆はしっかり覚えていた。

そんな風にからかう友達の中で一人静かに笑う女。

「石島君。好きだったら離しちゃだめだよ」
ビールを飲んで綺麗に笑った。

その声は俺をからかう友達の声にかき消されて
きっと俺にしか届いてない。

いや。皆聞こえてるのか。
聞こえないふりをしてるのか・・・

「純子ちゃん、幸せになりな。片桐もそれを望んでるよ」
「うん」

付き合うなんて、チャンスとタイミングと縁だ。
結婚するなんて、もっと凄いチャンスとタイミングと縁だ。

ほんの少しのすれ違いで付き合う事も結婚する事もない。
自分以外の誰のせいでもなくて。
自分以外の誰のおかげでもない。

俺は由香里を離さない。

そう思ってさっきまで由香里が座っていたほうを見ると
2人は消えていた。

「おい!ほら!お前らが下らない事で呼ぶから!
由香里が帰っちゃったじゃねーかよ!」

「おおぉ!由香里だって!」
「もう由香里って呼んでるのか!」

ダメだ。この酔っ払いどもには何を言っても効かねぇ・・・・

俺はため息をついて、悪友と飲み直す事にした。
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by ichigo-ichigo205 | 2015-02-20 12:38 | ・心も抱きしめて | Comments(4)