カテゴリ:・王子の甘い罠( 5 )

懸賞 懸賞

共犯者

懸賞 2017年 07月 07日 懸賞

「え?すみれさん、エッフェル塔に登ったことないの?」

ビックリしたように言うけど。
エッフェル塔って確か入場者はほとんどが外国人のはずよ。
まぁ私もココでは外国人ですけど。

「ふ~ん」
と宮本くんが何気なく言ってその話は終わった。
そんな話をしたことさえ忘れていたころ
仕事が終わった後に
「さてすみれさん、行こうか」
宮本君が笑った。

連れて来てくれたエッフェル塔の下は
いつものように大行列で
「ここはいつも混んでるわね」
エッフェル塔は入場するのに1時間は並ぶ。
これが普通だ。
「まさか今からこれに並ぶつもり?」

「今日は、ちょっと秘策がある」

そう言ってエッフェル塔内のレストラン直通のエレベータに私を乗せる。
「これなら並ばないからね」
「この時期に良く予約が取れたわね」
エレベーターに乗ってレストランへ着くと
パリは日没が始まったばかりだった。

夏のパリの日没は遅い。
22時になってやっと暗くなる。

2階にあるミシュラン認定のレストランは観光地の塔の中にあるとは思えないほど美味しくて
段々と暗くなりながら目の前に広がるパリの夜景にため息が出る。

「素敵ね」

「今日何の日か知ってる?」
「今日?」
2人の記念日じゃないはずだ。

「七夕だよ」
「あぁ・・」

すっかり日本に帰らない日が多くなって日本の行事を忘れていた。

「フランス語では天の川の事をvoie lactée(星の道)って言うのよね」
「うん。今日は晴れてよかったよ。天の川もよく見えるね」

パリの夜景と天の川に挟まれて、キラキラと輝くエッフェル塔の中で
キラキラ光るゴールドのシャンパンを飲みほした。

そんな私に優しく笑って、宮本君が窓に向かって手を伸ばして
ギュッとその手のひらを握りしめて、そのまま私の前に差し出す。

「すみれさん。フランスに来てくれてありがとう」
「うん」
「この夜景と星空を一緒に見ることが出来て幸せだよ」
「私も」

天の川がキラキラ輝いている。

「何?この手」
いつまでも私の目の前で固く結ばれた手を宮本くんは見つめてから
一瞬目をつぶって息を小さく吐き出した。

「あの、voie lactéeから―――星を1つ盗んだんだ」
「え・・・?」

ゆっくりと開いた手の中に星に負けないぐらいキラキラ光るダイヤの指輪がそこにあった。

「共犯者になってくれる?」

飲みほしたシャンパングラスをテーブルに置いた私の左手を宮本くんはそっと包んだ。

「共犯者に、なるわ」
「一生?」
「一生」

その返事に嬉しそうに笑って、私の薬指にその星をそっとはめる。

「星に誓って愛し続けるよ」

七夕の夜、星の道の下で、私は星より輝く永遠の愛を手に入れた。


END******



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by ichigo-ichigo205 | 2017-07-07 13:27 | ・王子の甘い罠 | Comments(2)

電話

懸賞 2016年 06月 19日 懸賞

すみれさんが3か月の日本出張で
フランスを発って1か月が過ぎたころ
こっちのアパルトマンにあるDVDを送ってほしいと朝一番で電話があった。

「日本で公開されていない映画だからこっちでは手に入らないのよ」

そういいながら、急がないからね。と言っていた。

「俺の声が聞きたいから」そう素直にいえば可愛いのに。

このDVDはこっちにいる時だって1回見てしまってあったから
本当に見たいわけじゃないんだろう。

「すみれさん、俺に電話するのに口実なんかいらないんだよ」
「なに・・・」
「寂しくなったからって言えばいい」
「寂しくないわよ」

「わざわざ俺が起きるフランス時間を計算して電話してるのに?」
「・・・・・」
「DVDが本当の理由ならメールでもいいだろ?」
「・・・・」

赤くなって下唇をかみしめるすみれさんが目に浮かぶ。

「でもありがとう」
「?」
「俺も寂しくて声が聞きたいところだった」

いじめるのはこれぐらいにしよう。

「私は寂しかったんじゃないってば」
「俺は寂しかったよ」
「・・・・私も」

急に素直になるすみれさんは本当にかわいい。

「じゃぁ、DVD送るよ」
どうせ見ないと思うけど。そう思いながら笑って言えば

「ついでだから、小説も買って送ってちょうだい!」
「え?」
「あのシリーズね!もう持ってきたのは全部読んじゃったのよ!」

数冊持って行った本を全部読んじゃったってことは、
山口さん以外とは飲みに行ってないで
ほぼ毎日まっすぐ帰ってきてるんだな。
そう推測つけて俺は機嫌が良くなる。

「あれを俺が買うの?」
「俺以外いないでしょ!頼むわね!」

恥ずかしさを隠すために強気に出るところもまたかわいい。

「はいはい。数冊買って一緒に送るよ」
「え?恥ずかしいからいやだって・・・」
「恥ずかしいよ?男が女性用の『過激な』官能小説を買うんだから」
「・・・・うん」
「でも、すみれさんの頼みなら何でもかなえてあげるよ」
「・・・・・」
「愛してるよ。早くこっちに帰ってきてね」
「うん。私も愛してる」

そういって電話を切った。

さて・・・
どんな顔をして買いに行こうか。
恥ずかしいけど、好きな彼女が一人の時間を紛らわすために読む官能小説を買いに行くことが
そんなにいやでもないことに気が付いた。

END****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-06-19 11:38 | ・王子の甘い罠 | Comments(0)

セーフ・ワード

懸賞 2016年 04月 22日 懸賞


会社の食堂の1番奥のテーブルにそっと置かれていた忘れ物を手に取った。

フランス語?

その本はカバーがしてあって、中身はフランス語だった。

海外の誰かがフランス語の勉強のために小説でも読んでいるのか?
始めはそんな気持ちでパラパラと本をめくった。

女性用の官能小説?

ザッと斜め読みしたその内容は結構過激で。
折り目のついている場所はさらに過激だった。
おいおい。こんな本、忘れるなよ。

苦笑いに似た感情で小さく笑ったが
ふと思うと、これだけの内容の本を読める女性はこの会社には限られている。

海外の長谷川すみれの本・・・だ。

彼女とは俺が正式にフランスに戻る前にコンタクトを取りたくて
すみれさんの同期の山口さんに何回もお願いしているのに叶わない。

「へぇ。こんなの読むんだ・・・」

ソフトSMとも言えるような内容のその本はすみれさんの願望か?

その後、俺はすみれさんを脅して、接点を試みる。

家に連れてきたすみれさんはもう、逃がさない―――

俺はスーツの上着を椅子の背もたれにほおり投げ
すみれさんの目を見ながらネクタイを緩めた。

外したネクタイをスーツの上着の上に投げ
ゆっくりとすみれさんに近づきながらYシャツのボタンを外す。

「ちょ・・・と」

すみれさんは俺に怖くなったのかゆっくりと後ろに下がった。

「晃」
「えっ・・・?」

「セーフ・ワード」
「セーフ・ワード?」

「俺の名前です。すみれさんがこの言葉を言ったら
俺の全ての行為をストップさせます」
「・・・・」

そのセーフ・ワードはとっさに思いついた事だった。

こんな風に脅して。
許してくれるなんて思ってない。

まさか、好きになってくれるとか
愛してくれるなんて幻想は・・・思ってない。

それでも、それでも貴女と接点が欲しかった。

俺自身の名前をセーフ・ワードにしたのは
どうせ、呼んでもらえないから。

呼んでもらえないなら、逆にセーフ・ワードだから、と
自分を慰めればいい。

すみれさんが、呼びたくなくて呼ばないんじゃない。
セーフ・ワードだから、俺の名を呼ばないんだ。

そう自分に言い訳して。
せめて強がった。

「これを言わない限り、いやと言ってもやめません」
「・・・・」
「好きなだけ、いやだと言ってください」

俺の言葉にすみれさんがゾクっと肩を震わせた。

「泣きながら抵抗しても?」

俺の目を見てそう聞くから

「名前を呼ばれるまではやめません。」

そう安心させる。
でも―――
俺はすみれさんが本気でイヤがることはしないよ。

だから―――
俺の名前を貴女が呼ぶことは、ない。


「さぁ、今からスタートです」


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-04-22 15:41 | ・王子の甘い罠 | Comments(2)

約束

懸賞 2015年 07月 01日 懸賞

王子を追いかけて渡仏したすみれが数日後に帰ってきた。

二人で祝杯をあげるために飲みにいく。
もう、こんな時間は数少なくなっていくのかもしれない。

「じっくり報告してもらいましょうか」

そう言って乾杯した後、ゆっくりとすみれは話し出した。
フランスに拠点を置く事。
日本にはもう年に数回しか返ってこない事。
フランスでは王子と一緒に住む事。

「真樹!約束したでしょ。貸しよ。貸し!
私と王子の婚約発表は大々的に社内報で報じてよね!」
「いいけど・・・そんなの社内報が出る前にみんなに広まるでしょ。
王子も黙っていられなそうだもん~」
「みんなが知らない情報を載せればいいのよ!」

「みんなが知らない情報・・・?
二人はSMごっこをやってて
すみれがSで王子がMだってこと?
二人はイニシャル通りの関係なんです。って?」

私が笑いながらそういえば、すみれは
「違うでしょ!」
とプンプンした。

いつまでも笑いが止まらない私をすみれは覗き込んで
「真樹?泣いてるの?」
と、小さい声で聞いた。

「嬉しいよ。すみれが幸せになって嬉しい。
けど寂しい。もうこうやってバカみたいに二人で飲むこともないんだね」

笑いながら涙が止まらなくなった。

「仕事を作って帰ってくるわよ!日本とフランスなんかたったの13時間だよ!
ちょっと寝て起きたらもう日本だよ」

そう言いながらすみれも涙がにじんでくる。

「すみれ、いつまでも同期でいてね」
「当たり前だよ。いつまでも私たちは同期だよ」

私はバッグからティッシュを取り出して
盛大に鼻をかんだあと、

「フランスのお土産、期待してる!」
と親指をつきだした。

「任せといて!おそろいの下着を買ってきてあげる」

私たちはその日、終電がなくなるまでずっと泣き笑いしながら飲み続けた。

END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-07-01 23:11 | ・王子の甘い罠 | Comments(2)

広報の王子様

懸賞 2015年 03月 24日 懸賞

「真樹~。今日ご飯食べに行かない?」

海外出張のフランスから帰ってきて
とりあえず報告を済ませたら珍しく6時前だった。

お土産も渡したいし、と内線を回した。

「すみません。山口さん席をはずしてます。折り返しでよろしいですか?」

あ。真樹だと確認しないで話し始めちゃった。
「失礼しました。海外の長谷川です。折り返し電話ください」

やばいやばい。
声から言って若いから役職って訳じゃないと思うけど。

数分して真樹から折り返し電話が入った。
「お帰り。ご飯食べに行こう。もう終わったの?」
「うん。私はもう行かれるから真樹に合わせるよ」

そう言って2人でエントランスで待ち合わせて
会社の御用達の居酒屋を避けて、二人の隠れ家へ行く。

そう言えばここで金子さんに初めて会ったんだっけ。

「さっきさ、すみれってば私と間違えて王子に話したでしょう?」
「王子?」
「うちの部の王子よ」
「ああぁ~。皆が王子って騒いでるあの子ね」
「王子が今度すみれさんと食事したいって言ってたわよ」

はぁ?

「パス。年下に興味はありません」
「でも鑑賞だけでも良いじゃない~?あの顔は鑑賞に値するわよ」
「観賞用の男はいりません~」
「じゃぁ、断っておく~?」
「出張続きだと言っておいてちょうだい」

あっはっはっは。と真樹が大声で笑い出した。
「当分出張ないって言ってたじゃない。社内で会うわよ」
「いいのよ。嘘つかれたと思えば諦めるでしょ」

王子だか何だか知らないけど。
簡単に自分の希望する通りに女性がホイホイついて行くと思ったら大間違いよ。

「それより金子さんの話を聞かせてよ」
「え~王子の話、しようよ~」

やっと大きな契約を結んで
明日から当分出張がない生活だ。
ホテル暮らしも窮屈になってきたころだった。

今日の夜はお風呂に入りながらお気に入りの本でも読もう。

「王子の話はしないの。それよりさ、フランスで面白い話を聞いてきたのよ!」

女二人の話は尽きる事がない。

そして、その王子と私が数日後、ちょっぴり意地悪な運命の出会いをするとは
その時の私は思いもしなかった。

END****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-03-24 12:08 | ・王子の甘い罠 | Comments(2)