カテゴリ:・あなた~you~( 6 )   

夏の名残り②   

2017年 09月 15日


駅前のファンシーショップでわざわざ小瓶を買って
ダイブツちゃんで遊んでみた。
あの子は素直で面白い。

小瓶は本当に小さくて、俺の小指より小さい。

それは2コ100円だったから、2個買って
1つにいちごのかき氷シロップ。
1つにブルーハワイのシロップを入れた。

ダイブツちゃんはピンクを選んで
ブルーハワイが手元に残った。

「白木くん!」

帰ろうとした俺に乃恵ちゃんが声をかけて
「桃ちゃんにフェロモンの液をあげたんですって?」
と楽しそうに聞いて来る。
「ああ。乃恵ちゃんにもあげようか?」
ポケットからブルーハワイの小瓶を取り出した。
「綺麗。桃ちゃんのはピンクだったわ!」
あの子は、ナイショですよ?と言いながらみんなに見せるタイプだな・・・
そう思って可笑しくなった。

「色々な色があるんだ。乃恵ちゃんにもあげるよ。
岡部先輩にかがせればいいよ」

「ううん。私より白木君が持ってて」
「え・・・」
「白木くん、好きな人が出来たらかがせればいいわ」
「・・・・」
「大丈夫。初めはその効果でも白木くんのことを知れば誰でも白木くんを好きになるわ!」
「誰でも・・・?」
「うん。誰でもよ!」

「そうだといいな」
俺は苦笑いしか返せなくて。
上手く笑えなくてごめん。

「上手く行ったら教えてね~!」
そう言ってキミは笑いながら俺を置き去りにする。

キミに、好きになってほしいんだけど。

「これ、乃恵ちゃんにかがせればよかった・・・」

小さい小瓶を太陽にかざすとキラキラと反射して
ブルーハワイの綺麗な色が光り輝いた。

「好きな子見つけるかぁ~」

無理だけど。
無理だけど、声に出して言ってみる。

無理だけど・・・


END****




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by ichigo-ichigo205 | 2017-09-15 14:19 | ・あなた~you~ | Comments(0)

名前を呼んで⑥おまけ   

2017年 06月 22日

名前を呼んで④おまけ の直後です。

④と⑥は時系列的に続いています。
「④→④おまけ→⑥おまけ→⑥」の順番です。

********

斎藤がダイブツちゃんに名前を呼ぶことを許して
「柳下。もう斎藤のこと名前で呼ばなくていいから。ありがとな」
俺は会う人ごとに、お礼を言って校内を回った。
「なに?ダイブツちゃんのこと解決したの?」
「ああ。光って呼んでいいって自分で語るに落ちた」
「斎藤もあまのじゃくだからな。んじゃ、俺もみんなに回しとく」
「頼むよ」

全く、斎藤は仕方ねぇな。
ポケットから煙草を取り出して100円ライターで火をつけた。

「あ。白木君」

この子は・・・
ずっとお嬢さん学校育ちでスレてないのは分かるけど
こんな共学に入学して何年たってもキレイなままなんだな。

「斎藤君ったら、やっと桃花ちゃんに名前を呼んでもいいって言ったんだって?」

可愛い顔でクスクス笑った。

「うん。斎藤も本心では喜んでるんだよ」

この子の前では俺はほんの少し羊の皮をかぶる。
男に免疫のないこの子に怖がられないように・・・

「そうなんだ」

こんなにキレイに笑う女の子を俺は知らない。

「乃恵ちゃんは、岡部さんの事いまだに『岡部さん』って呼んでるの?」
別にそんなこと知りたくもないのに。
「うん。変かな?」
少しはにかむこの顔をさせているのはヤツな訳で。
「変じゃないよ」
そんな顔をさせるアイツに嫉妬する。

「乃恵ちゃん、俺の名前、知ってる?」

斎藤は好きなダイブツちゃんに自分の名前を呼ばれるのは恥ずかしいといった。

けど、俺は呼ばれたい。呼んでほしいよ・・・

「うん。知ってるよ」

そこで頭の上に思いっきりげんこつが飛んできた。

「いって!」
「お前の名前なんか知らなくていい」

本気で不機嫌になっている男は、スーツを着て
すでにこの学校の生徒じゃないのに。

この子と待ち合わせでもしてるのか。

「関係者以外は校内立ち入り禁止ですよ!」
「あ?白木、お前は何年経っても油断ならねぇな」

「乃恵、そんなヤツ置いていくぞ」

不機嫌なオトコにさらわれる様に手を引かれ
乃恵ちゃんが俺の前から姿を消した。

「あ。タバコか・・・」

指の間のたばこは一口も吸わないまま、短くなっていた。

END****






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by ichigo-ichigo205 | 2017-06-22 23:42 | ・あなた~you~ | Comments(0)

名前を呼んで⑥   

2017年 06月 22日


大学を卒業して、就職して。
乃恵とは毎日会えなくなった分、会える日はサイコーにかわいくて。
お互いに少しでも時間を合わせて会うようになった。

会える時間は短くなったけど
その分、濃い時間になったような気がする。

今日は珍しく、得意先から直帰していいと言われ
思った以上に早く終わったから、突然大学まで乃恵を迎えに来て驚かせようと思った。

「のぇ・・・」

それなのに・・・
声をかけようとしてその隣に白木がいるのが見えた。

アノヤロ・・・こりねぇやつ。

そっと近づいて二人の会話を盗み聞く。

「乃恵ちゃんは、岡部さんのこといまだに『岡部さん』って呼んでるの?」
何言ってんだ?白木のやつ。
「うん。変かな?」
少しはにかんだかわいい顔で乃恵が笑った。
「変じゃないよ」
「乃恵ちゃん、俺の名前、知ってる?」
はぁぁぁぁ?ふざけんじゃねぇ!

「うん。知ってるよ」
そう答えた乃恵に近づいて思いっきり上から白木の頭にげんこつを落とした。
「いって!」
「お前の名前なんか知らなくていい」
乃恵と同じ学年だというだけでこいつに嫉妬する。
乃恵は・・・
あと何回俺の知らないところでこいつと会うんだろう?

「関係者以外は校内立ち入り禁止ですよ!」
「あ?白木、お前は何年経っても油断ならねぇな」
いい加減、好きな女でも作れ!!

「乃恵、そんなヤツ置いていくぞ」
そう言って、無理やり手を引いて乃恵をさらえば

「岡部先輩、今日はどうしたんですか?」
「直帰になったから、迎えに来た。迷惑だったか?」
イヤな場面と自分の狭い心に嫌気がさして、ぶっきらぼうに答えて
自分の発した嫌味な言葉をさらに嫌悪する。

それなのに乃恵はニコニコ嬉しそうで・・・

「うわ。迎えに来てくれたんですか!
ここ数日、残業続きで忙しかったのに。
疲れているでしょうから、本当は帰って休みたかったですよね」
「・・・・」
「なのに私に会いに来てくれて嬉しいです!」

この・・・純粋さに、俺は絶対に一生勝てない。

残業でろくに話せない毎日の恨み言の一言もない。

「乃恵、俺の名前知ってる?」

俺も白木にあてられたか・・・

「はい」
「じゃぁ、名前で呼んで」
「渚先輩」

大嫌いな親がつけたこの名前を
呼ばれて嬉しいと感じたのは生まれて初めてだ。

「うん。その一言で疲れも吹っ飛ぶ」
「え?これで、ですか?」
「うん。これからは名前で呼んで」
「はい。渚先輩」

乃恵は思いっきり背伸びをして、俺のほほにそっとキスをした。

END****






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by ichigo-ichigo205 | 2017-06-22 00:07 | ・あなた~you~ | Comments(0)

社会見学   

2016年 12月 14日

「はぁ?合コンに行くって?」

クリスマスに恋人が欲しいやつらが12月に入ると途端に合コンを計画しだす。

乃恵がその合コンに呼ばれたらしい。
ったく!呼んだのはどのオンナだ?あ?

「合コンじゃないですよ。飲み会です」
「・・・・」

「合コンの定義を言ってみろ?」
「見知らぬ男女の出会いの場です」
「・・・じゃぁ、明日行く飲み会は?」
「親睦会ですかね。五十嵐さんが彼氏を見つけたいらしいので」

誘ったのは五十嵐か!

「白木くんが計画してくれたんです」

ったく!またあいつか!

「なるほど!これが世に言う合コンなんですね!!」

逆に乃恵がキラキラした目で嬉しそうな顔をした。

「わ~!ドラマやみんなの話によく出てきて
私も行きたいと思っていたんですよ!」
「・・・乃恵さ?合コンって恋人がいる奴は出ちゃだめなんだよ」

ため息をついてそう言うと
「知ってますよ!でも、白木くんはいま彼女を作る気がないそうです!
でも幹事だから行かなきゃいけないそうです!
そして明日の飲み会は男女の人数が一緒じゃないといけないそうです!」
「・・・・・」
「そうか!合コンだから男女の比率が大事だったんですね!」
「・・・・」
白木のやつ・・・

「はいはい。今すぐ行けないって連絡しろ」
「なぜですか?」

不機嫌な俺とは正反対に、素朴な疑問、とでもいうように乃恵が聞いてきた。

「あ?合コンだからだろうが!」
「でも・・・私は人数合わせってやつなんですよね」

表向きはな。白木が俺のいないところで乃恵と飲みたいだけだろう。

「白木くんも五十嵐さんも私が岡部先輩と付き合っていることを知っています」

その2人だけじゃなく、大学中が知っているだろうよ。

「ですから、これは純粋に合コンの社会見学です!」
「はぁ?」
「見てみたいんです!合コンを!」
「・・・」

「岡部先輩は合コンに行ったことがありますか?」
「え・・・いや・・あの・・まぁ」
「そうですか。いいですね。私も行ってみたいんです!」
「いや・・・あのな。乃恵」

「まさか!岡部先輩は私を信じていない訳じゃないですよね?」
「え!・・・まさか!」

信用してないのは白木だよ!

「お願いします。見てみたいんです!」

「・・・ったく・・・しょうがねぇな。帰る10分前に電話しろ!」
「10分前で良いんですか?」
「いいよ。近くで山田と飲んでる。乃恵は未成年だから飲むなよ?電話があったらすぐ迎えに行くから」

「はい!ありがとうございます。岡部先輩だ~いすき♪」

「・・・・・」


END****








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by ichigo-ichigo205 | 2016-12-14 13:28 | ・あなた~you~ | Comments(0)

でぃーぷキス   

2016年 07月 10日

1限が終わった火曜日の昼休み、2限の授業がないので
図書館で本を読んでいると白木君が隣に座った。

「乃恵ちゃん」
「白木君も講義ないの?」
「ああ」

そういって、私の顔をじっと見つめる。
「岡部先輩とは・・・うまくいってる?」
少しゆがめた顔でそう聞いてくるので
「はい。いろいろご心配かけました」
ファミレスでの岡部先輩と白木君の言い争いが1つの転機になったのだと思う。と
話すと、そうか。と苦笑した。

「ちゃんと大事にしてもらってる?」
「はい」
「少しでも、いやなことがあったら俺に相談してよ」
「はい。ありがとうございます」

「乃恵ちゃん、この前カフェで岡部先輩とはキスをしていないって大声で言ったみたいだけど」
私が二人の女性を相手に
岡部先輩とはキスもしていないと大声で言ったことは
あっという間に広まってて。
それを白木君も聞いたんだろう。

「はい。白木君まで知っているんですね」
「うん。ごめん。キスは・・・した?」
「あ。はい」
「もしかして、ファーストキスだった?」
「はい」
恥ずかしくて、顔が赤くなるのが自分でもわかる。

「ちくしょっ。岡部のヤツ」
小さい声で白木君が何かつぶやいた。
「え?何ですか?」
「いや。こっちの話」

「ディープキスもしちゃった?」
「でぃーぷキス、ですか?」
「そう」
「あの。すみません。でぃーぷキスって何ですか?」
「え、あの、いや。知らないのか」
「はい。すみません」
「いや。いいんだ」

そういって、
小さくまたつぶやいた。
「くそ、マジでかわいいな」

「あのね。ディープキスってね。舌と舌を絡めながらキスするんだ」
「へぇ!」
「あ。まだしてないのかな?」
「え。あの」
「舌を相手の口内に入れてね、絡めたりするとなんだかとっても親密な感じがするだ・・・」

ガンッッ

そこまで言った白木君の頭にげんこつが落とされ、ものすごい音がした。

「いって!誰だよ」

そういって白木君が後ろを向いて
私も白木君の後ろに立っている人物を見上げた。

「岡部先輩」

「白木っ!お前はっ!何、子羊ちゃんに余計なこと教えてんだよ」
「いったぁぁ・・・」
「当たり前だ!制裁だ!制裁!俺が教えるからいいんだ!」

「同学年の『友人』として教えていただけですよ」
「何が友人だ」

「岡部先輩。用事は終わったんですか?」
「ああ。行くぞ。乃恵。じゃぁな、白木」
そういって岡部先輩は私の手を引っ張った。
「乃恵、白木と話するな?ろくな大人にならないぞ」

あ。そうだ!さっきの話の答えをいうのを忘れて、少し離れた白木君に聞こえるように
大きな声で返事をした。

「白木君!岡部先輩のでぃーぷキスはとっても気持ちがいいです。
岡部先輩はとってもでぃーぷキスが上手なんですよ。素敵なキスです」

そうにっこり笑った私に、岡部先輩も白木君もなぜか顔を赤くした。


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-07-10 00:07 | ・あなた~you~ | Comments(0)

セント・ヴァレンタイン   

2016年 01月 26日


初めて好きな人が出来て。
初めてバレンタインを迎えようとしていて。
どんなチョコレートにしようか、それを考えただけでワクワクした。

「岡部先輩。バレンタインなんですけど」

どんなチョコが好きですか?

そう続けようとした時、岡部先輩が
「分かってる」
と、訳知り顔で寂しそうに笑った。

?の私は、岡部先輩がため息をつきながら言うその話を聞いた。

「バレンタインは本来はヴァレンティヌスの命日だって言うんだろう?」
「??」
「だから世間では、チョコなんか贈ってるけど、乃恵はそんなことはしないって言いに来たんだろ?」
「・・・・」

「まぁ、皆本来の意味から遠のいてるからな。俺たちはひっそりと
ヴァレンティヌス司祭の命日にお祈りしよう」

なんて言い出した。

ちょっと悲しそうなその顔に私は可笑しくなって。
「岡部先輩。ヴァレンティヌス司祭は愛のためにご自身を貫いた司祭です。
ご自身の命日が今は、好きな人にチョコを贈る行事になっている事を
ほほえましくお許しになられると思いますよ」

私のその言葉に、びっくりしたように岡部先輩は私を見つめた。

「え?え?乃恵がチョコくれるって言うのか?」
「はい。そのつもりですが。ご迷惑でしょうか」

「まさか!」

岡部先輩は私を抱き上げて、喜んでくれた。

今までチョコなんか沢山もらっているだろうに。
なんだか岡部先輩がちょっと可愛く思えた出来事でした。


p.s.その様子を山田先輩が苦笑いをしながら見ていました。


END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-01-26 03:07 | ・あなた~you~ | Comments(0)