カテゴリ:・キスの後で…( 8 )   

本気の彼女   

2018年 06月 28日

「光先輩!夏休みになったら、サークルで海に行きませんか?」

ワクワクした顔で『いい事思い付きました!』みたいにこっちを見る。

「あのさ?夏休みの計画はこのレポート仕上げたら言えば?」

桃花は苦手な授業のレポートに四苦八苦している。

「て、手伝ってください!」
「はぁ?意味ねーだろ」

この教授のレポートはめんどくさくて有名だ。

「あ~。俺行きたいな」

横でエントリーシートの入力をしている白木が答える。
「俺たち就活だろ」
「夏休み前には終わんだろ」
白木はそう呑気に答えて、薄いノートPCを閉じた。

「行きたいです!行きたいです!来年は光先輩は社会人だし
きっと、大手とは名ばかりの夏休みもろくに取れないブラック企業でお盆時期も企業の歯車です!」
「桃花・・・縁起悪いこと言うな!」

白木はそんな俺たちの会話に大笑いで
「海に行きたいよな?」
「行きたいです!」
こいつはいつも桃花の味方をする。

「良いじゃん。海ぐらい」
そうニヤケて笑うけど、こいつは俺の考えが丸分かりの様で・・・
「それとも海に行きたくない理由があんの?」
「・・・」
性格悪い奴だな~

「え!光先輩泳げないんですか?」
「泳げるわ!」
「斉藤は泳げるのに行きたくないんだぁ~?なんで~?」

尚も白木は笑い続ける。

「俺、ドリンクバー」
そう言って席を立って、その場を離れると
白木は声を大きくして笑った。

「桃花ちゃん、斉藤は桃花ちゃんの水着姿をサークルのメンバーに見せたくないんだってさ」
「えぇぇ!」
「男心分かってやんなよ」

「余計な事言うんじゃねーよ」
白木は本当に一言多い。

「じゃ、じゃぁ、BBQならいいですかっ!」
「あ?」
「BBQなら一緒に行ってくれますか?」
「あー・・・」
「桃ちゃんは斉藤と思い出が作りたいんだよね?」
「・・・・」
「そうです!」
「いいじゃん。BBQなら。桃ちゃんの水着もみんなに見られないし」

白木はクックックと笑い続ける。

「お前さ?お前も本気の女が出来たら、今の俺の気持ち分かるよ」

「・・・・だといいな」

一瞬、寂しくなった雰囲気に
それに気が付かない桃花が
「それって、光先輩が私に本気だって事ですかっっっ!」
と言った一言で笑いに変わった。

お前も、いつの日か、本気の両想いの・・・彼女が出来たら分かるよ。
好きなオンナの肌は見せたくないってな。

「くだらないこと言ってないでレポートやれ」
「くだらなくないです!」
「レポート書け!」

そんな俺たちの会話を白木は笑いながら聞いていた。


END****





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by ichigo-ichigo205 | 2018-06-28 14:45 | ・キスの後で… | Comments(0)

冬になっても・・・   

2017年 11月 26日

俺は好きな女に泣かれた記憶がほとんどない。

「桃花、お前は俺の彼女って自覚あんの?」
「・・・・」
「何?あの男、なんでホイホイついていくわけ?幼稚園児かよ」
「・・・・」

白木と講義の移動中に向こうのほうで男についていく桃花が見えて
「わり。俺遅刻するわ」
そう言って桃花の後を追った。

誰も行かないような校舎の隅で
知らない男に手首を握られて、なんだか強引に迫られている桃花がそこにいた。

「何やってんの?」
そう言って強引に桃花を奪い返して
そのまま無言で俺のアパートまで連れてきた。

何か喋れば、震えている桃花を今以上に傷つけそうで
気の利いたセリフさえ言えなかった。

アパートに入って、落ち着いたふりをしてみても
桃花が何かをされた後じゃなくて良かったと安心と怒りが増してきた。

「あ、の・・・あの。ぜんばいの・・・元カノさんのことを
あのじどがおしえてぐれるっで、いっだんでず・・・」

みっともないほどに泣いたその顔は
「涙を流す」って感じじゃなくて
「泣きぐずった子供のよう」だった。

「ごめ、ごめんなざい。ぜんばい、ぎらいにならないで」

あの男が手首を離さないで、怖かっただろうに
それでも、俺に嫌いにならないでという。

「元カノ?何でも教えてやる。ほかの男に聞くな!」

つい荒くなる俺の声の意味を、この女はきっと理解してない。
俺の心配を理解せずに、俺に嫌われないかと心配している。

「ごめんなざい~~」

俺は大きく息を吐きだした。

「ぎらいにならないでぇぇ~」

こいつは可愛い。
俺のひいき目かもしれないけど、可愛い。

「ごめんなざい~~」

自覚してくれよ・・・

「桃花!」
「はい・・・」

「あれ持ってんだろ!あれ!」
「?」
「夏の終わりに白木にもらったフェロモンの液だ!」
「え・・・」
「お前のことだから肌身離さず持ってんだろ?出せ!」
「は、はい」

ティッシュで涙と鼻水をふいて
ガザガサとバッグをあさる。

やっぱりもってやがった・・・

「かせ!」
俺は蓋を取ってにおいをかぐ。
もうすっかりいちごのにおいはなくなって
ただのピンクの液体だ。

「ぜんぱい?」
「この匂いをかいだら、今より桃花のことが好きになった」
「ほ、ほんとですか?」
「あぁ。桃花のことは嫌いにはならない。大丈夫だ」
「せんぱ~い。大好きです~」
「もう心配かけるな」
そう言って桃花を抱きしめた。

「あの男のことは心配ない」
そう言った途端、俺の服をぎゅっと握りしめた。
怖かったよな。

「大好きだよ。桃花」

「先輩・・・」
「ん?」
「やっぱりこの液、本物ですね!」

桃花はキラキラした目でかき氷のシロップを眺めていた。

END****





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by ichigo-ichigo205 | 2017-11-26 00:28 | ・キスの後で… | Comments(4)

夏の名残り   

2017年 09月 10日

桃花が周りをきょろきょろと見回して誰も俺たちに関心を払っていないのを確認したうえで
校舎の裏に俺を引っ張って行った。

「何?次の講義始まるぞ」
「講義どころじゃないんですよ!」

慌てた声で、シィと声を小さくしろと俺を叱った。
なんだ?

ここでもまたきょろきょろして
誰もいないのを確認するとそっとポケットから小さな小瓶を出してきた。

「やけに可愛い瓶だな・・・?」
「駅前のファンシーショップで2コ100円だったそうです」
「へ~・・・」
興味ないけど。

「で?」
「光先輩、今から言うことナイショに出来ますか?」

白木が仕組んだ一件以来、こいつは堂々と俺の名前を呼ぶ。

「出来るけど?なに?」
「この小瓶の中の液体・・・」

なんだか綺麗なピンク色の液体が少量入ってる。

「フェロモンの液なんですよ!」

は?

コイツ真面目に言ってんのか?

何も言わない俺に、業を煮やして
「そこは『マジで』とかビックリしていいところです!」

いやいやいやいやいやいや!
マジで言ってんのか?とはビックリしたけどね。

「誰にもらった?」
「白木先輩です」
「へ~・・・」

やっぱりな。
あいつは、近頃桃花で遊んでる。

「んで?それをどーしろって?」
「そっと匂いをかがせると良いらしいのですが
光先輩、がっつり匂いかいでください!!!」

あ~・・・そゆこと?

「はいはい」

俺はちっちゃいコルクの蓋を開けて中の匂いを嗅ぐ。

「どうですか?」
「うん。なんか桃花のこと好きになった気がする!」
「えっっ!マジですか?」

こんなことマジで信じてんのか?って俺が言いたいよ・・・

「もっとかいでください!」
「桃花・・・これ以上俺を夢中にさせてどーすんだよ」
「せんぱい・・・」

「喧嘩した時のためにとっとけ」
「はいっっ!」

「ほら次の講義に行くぞ」
「はい!」

全く白木は、ろくなことしねーな。

俺はため息をついて教室に入る。
1番後ろの席にそっと座る。
それを見た白木が荷物を持って隣に移動してきた。

「かいだ?」
クックックと笑いながら聞いて来る。

「あれ、かき氷のシロップだろ」
「綺麗な色だろー?妹が昨日、もう食べないから捨てるって言うからさ」
「・・・・」
「ダイブツちゃん信じてた?」

信じると思ってやってんだろうが?あ?

「素直で信じやすいのは乃恵ちゃんと同じだな」

軽く殴ろうと思っていたこぶしをひっこめた。
こいつは長い間、乃恵に片思いをしてる。
絶対に報われない片思いで、正論から言えばやめた方が良い。

でも、いいじゃんか。
好きなだけ、気がすむまで片思いしてりゃぁいい。

「お前も幸せだな。あんな嘘を信じちゃうほど、
ダイブツちゃんはお前が好きなんだな」
「・・・・」

お前だって、本気に片思いできる相手に出会えて幸せだよ。
そう言ってやろうとして、俺は口を閉じた。
他人が口出すことじゃねぇ。

俺は何も言わずに、聞こえないふりをした。


END*****






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by ichigo-ichigo205 | 2017-09-10 13:25 | ・キスの後で… | Comments(0)

名前を呼んで④おまけ   

2017年 06月 16日


「光くん~!」
「おい!光!」

なんてこと?
私が斎藤先輩に「光先輩」と呼ぶのを断られてから3日。
学校中の男子も女子も斎藤先輩の事を「光」と呼ぶようになった。

先輩はいつにも増して不機嫌で・・・
「光」と呼んだ人には返事もしないらしい。

ぽかんとその様子を見ていたら白木先輩が
「俺がみんなに勧めたんだ」
「白木先輩が、ですか?」
「そう。ダイブツちゃん斎藤の事、光って呼びたいんだろう?」
「まぁ・・・」
「元カノの先輩もヒカルって呼んでいたもんな?」
「白木先輩は・・・意地悪です」

白木先輩は私の言葉に笑いながら

「みんなが光って呼べばダイブツちゃんも呼べるだろ」
「・・・・」

白木先輩・・・
ありがたいですが、親切の方向が間違っています・・・
「光先輩」と呼ぶレア感がなくなりました・・・

私と白木先輩の会話を聞いていた斎藤先輩が白木先輩を軽く小突いた。
「お前か!犯人はっ!余計なことするな!」
「いってっ!」

そう言っている間にも、各方面から「光先輩~」とお声がかかる。

斎藤先輩は軽くため息をついて
「白木が責任を持って収集しろ!」
「え~」
「え~じゃねぇ!俺をヒカルって呼んでいいのは桃花だけだ!」

「え!私は呼んでいいんですか?」
「あ・・・」
「呼んでいいんですね!」

しまったという顔をした斎藤先輩だけど。もう遅いもんね!
「聞きましたよね!白木先輩!」
「うん。聞いた!」
「・・・・」

「じゃぁ、みんなには呼ぶなって言ってくるわ!」

笑いながらそう言ってぶらぶらと歩きだした時
「良かったな」
と、小さい声で白木先輩が言った。


END*****






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by ichigo-ichigo205 | 2017-06-16 10:56 | ・キスの後で… | Comments(0)

名前を呼んで④   

2017年 06月 15日

「斎藤せんぱぁ~い!」

週末忙しくて桃花と会えなかった月曜日
向こうの方から子犬のように駆け寄ってきた。

「何?」
「お久しぶりで~す!」
「お前、俺がいなくてもちゃんとレポートやっただろうな?」

3日ぶりに見る桃花はやっぱり可愛い。

「頑張りましたよ!」
「あっそ」

そう言って1限目の教室に行こうとしたら
「光先輩・・・って呼んでもいいですか?」

「あぁ?」
「ですから、光先輩って呼んでもいいですか?」
「なんで?」
「だって、みんながいまだに私と斎藤先輩が付き合ってるって冗談だって言うんですよ!
私がからかわれてるって!」

まぁ・・・外れていなくもないが。

「だから!名前で呼びたいんですっ」
「ダメ」
「え~。彼女の特別感を出したいです!」
「ダメ」

桃花は俺のシャツを引っ張り出した。

「光先輩って呼びたいんです!いまだに斎藤先輩を狙っている女の子がいるんですよ」
「ダメったらダメ」

「元カノは呼んでたのに・・・」

「あ?なんかいったか?」
「いえ・・・」
「早く講義に行け」

「はい・・・」

その一連のやり取りを見ていた白木が
「名前ぐらい呼ばせてやればいいじゃん」
と苦笑いする。

「ダメ」
おれが恥ずかしいから。

隠し切れていないであろう、赤面した俺を見て

「不器用なヤツ・・・」
白木がため息をついて笑った。

END*****






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by ichigo-ichigo205 | 2017-06-15 14:49 | ・キスの後で… | Comments(0)

不安…おまけ   

2017年 03月 19日

「先輩!」
「何?」

痛いほどぎゅっとつかまれている手が嬉しくて。

「あの、ありがとうございます」
「何が?」
「あの。私に魅力があるって言ってくれて・・・」

「カンチガイするなよ?」
「え?」

先輩はこっちをチラリとも見ずにズンズン食堂に向かって歩き続ける。

「あのオンナよりは10倍魅力があるかもしれないけど
あのオンナよりは、だ」
「はぁ」
「校内で1番なんて言ってないからな」
「え!そーゆー意味ですか!」
「当たり前だろ。ちっ。あのオンナのせいで満席だ。
あの白木たちの席に相席するから、俺の分も水持ってきて」
「はーい」

そう言って、食堂に着くなり先輩は早口で言ってさっさと白木先輩たちのテーブルに向かった。

「俺と桃花も相席いい?」
「いいけど・・・斎藤、顔赤いよ?何かあった?」
「なにもねーよ」
「そう?」

「ったく。校内で1番じゃなくて世界で1番だっつーの」

「何か言ったかー?」
「こっちの話」

END****



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by ichigo-ichigo205 | 2017-03-19 16:04 | ・キスの後で… | Comments(0)

不安   

2017年 03月 19日

火曜日の2限は私の教授はいつも長引くのに
斎藤先輩の教授はいつも早く終わるから教室の入り口まで迎えに来てくれる事が多かったけど
でも今日は私の教授が用事があるのか知らないけど
ピッタリに終わったので先輩を驚かそうとニヤニヤしながら先輩の教室まで急いだ。

入り口で「わ!」と驚かそうと、隠れていると
次々と出てくるのに先輩が出てこない。

あれ?
ここじゃなかったっけな?

そっと中をのぞくと、先輩はきれいな女の子と二人きりで話していた。

「斎藤君、あの先輩と別れたんでしょう?」
「あぁ」
「次の彼女、もういるの?」
「いるよ」

そう言いながら先輩はくすくす笑う。

「え?誰?」
「サークルのダイブツちゃん」
「あの?あの子?」
女の子がなぜかほっとした声を出す。

「そう」
先輩のくすくす笑いはここまで聞こえて私は不安になる。
私はそっと二人に見えないように顔を出して二人を見た。

「えー。なんであの子なの?斎藤君と付き合いたい子なんかたくさんいるのに!」
斎藤先輩は無言で女の子をじっと見つめて
目を細めて笑う。

カッコイイ・・・
不安な気持ちと、カッコいいと思う気持ちが入り交ざる。

「例えば?」
「え?」

そう言いながら立ち上がって、女の子と視線を合わせる。
ゆっくりとその子に近づいてその子の髪を優しくかきあげた。
「俺と付き合いたい子って?例えば?お前?」

私はその様子を息をするのも忘れて見守った。

「う、うん。私とか、どうかな・・・?」

その返事にフッと笑って
今までの空気を断ち切るようにガタガタと音を立ててリュックにモノを詰め込んだ。

「無理。お前、桃花の1/10の魅力もねーわ」

そうセリフを吐いて、機嫌悪そうに教室を出てきた。

「桃花、行くぞ」

私がいたこと、分かってた・・・?

「ったく、無駄な時間取らせやがって。食堂が混むだろうが」

そう言いながら、斎藤先輩は私の手をぎゅっと握って歩き出した。

END*****





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by ichigo-ichigo205 | 2017-03-19 01:22 | ・キスの後で… | Comments(4)

ナイショ   

2016年 11月 08日

「斎藤先輩!」
「何?」

相変わらず、私に甘い時間はほんのちょっとで
そのほかの時間は意地悪な斎藤先輩。

「私たち、ちゃんと彼氏・彼女で良いんですよね?」

なんとなく。昨日の夜にふと思いついた疑問が頭から離れなくて
朝一番で斎藤先輩と白木先輩が歩いているところを捕まえた。

「・・・俺ちゃんと好きだって言っただろ?」
「そうなんですけど・・・」

「あ?何か不満な訳?」
「不満ってわけではないんですが」

なかなか言い出せない私の態度に
イラッとしたようで
「はっきり言え!もう講義が始まる」
と歩いていた足をとめた。

「あの。出来れば『斎藤先輩に好きな子が出来るまで』と言う付き合い期限の条件を
撤回していただきたいのですが・・・」

「はぁ?」

「ほら、最初はそーゆー条件だったじゃないですか」
「まぁな」
「でも、晴れて恋人同士になったンですから~」

「ダイブツちゃん」
斎藤先輩は、ニヤッと笑った私の好きな顔で
久しぶりの呼び方をした。

「例え付き合ったって、その条件はかわらねぇよ?」
「え!そうなの?」
「当たり前だろ。別れるのは俺に好きな子が出来たら、だ」
「ええ~!理不尽ってこの事ですね!」
「ほら、次の講義間にあわねぇぞ。行け!」

ブツブツ文句を言いながら、私はしかたなく講義に間に合うように駆けだした。

「でも、好きな子なんか桃花以外に出来ないけどね。
だから、桃花は一生俺のもの」

桃花の後姿を見ながら嬉しそうに笑う俺を見て

「だったら、それを本人に言ってやりゃぁいいのに・・・」
白木が呆れながらため息をついた。

END****




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by ichigo-ichigo205 | 2016-11-08 15:57 | ・キスの後で… | Comments(0)