カテゴリ:・素肌のままで( 5 )

ケンカ♪

神戸に来て、一緒に生活するとほんの些細なことがお互いに気になったりすることがある。

ケンカまではいかないけど、主張をしあうことはある。
でもまぁ、人生初めての同棲はまずまず上手くいっていると言っていい。

なんて、満足げに夕飯を作っていたら、ふとあることに気が付いた。

ケンカしないんじゃない———

ケンカにならないように三浦さんがいつも先に上手く譲ってる?

そう考えだしたら、ここ数か月の三浦さんの言動を次々と思い出した。

夕飯を作る手を止め、テレビを消してソファーに座り込む。
う〜ん。考えれば考えるほど、三浦さんが上手く
私が嫌な気持ちにならないように立ちまわっている・・・

「ただいまー」
何時間考えていたのか、三浦さんが帰って来ちゃった。
まずい!夕飯の用意が途中だ!

「あれ?まみちゃん?まみちゃんおる?」

電気もついていない部屋にびっくりしたようで
バタバタと玄関から入ってきた。

「お帰りなさい」

真っ暗な中でソファーに座り込む私にさらにびっくりしたようで

「なんかあったん?」

と、電気をつけて隣に座り込んだ。

「う〜ん。あったというか、気が付いたというか・・・」
「な、何に?」

「三浦さんとケンカしないな〜と」

「は?ケンカしたいん?俺は したないんやけど」
「いえ。そうではなくて。
ケンカしないんじゃなくて、ケンカする前に三浦さんが上手く譲ってると気が付いたの」
「・・・うん。それで?」
「それって、三浦さんストレスたまらない?」

「なんや・・・そんなことか」
「重要よ!だってこれからずっと一生一緒にいるんだよ!」

「うん」
と言って三浦さんは嬉しそうに私を抱きしめる。

「全然ストレスなんか感じてへんから。
それに、まみちゃんのしたいことが俺のしたい事やから」

でた。三浦さんの甘やかし。

「それより、ずっと一緒におるってまみちゃんの言葉で聞くとめっちゃ嬉しい」

もう・・・三浦さんさんったら。

「あ!夕飯つくりかけだった!」

「そうなん?」
「うん。作ってる最中でそれを思ったらなんかじっくり考えてた」

「夕飯中断してまで俺の事、考えとったん?」

うん?まぁ、そうだけど・・・

「まみちゃん愛してる」

三浦さんは嬉しそうに私にキスをした。

「もう。私も愛してる。夕飯作っちゃうから着替えてきてね」

ケンカは当分しそうにない。


END****


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by ichigo-ichigo205 | 2018-08-16 08:01 | ・素肌のままで | Comments(0)

甘い朝

神戸に引っ越して来る時、三浦さんは2日休みをとってくれた。
土日を入れて4日。
三浦さんは至れり尽くせりだった。

もともと節約していた独り暮らしに大した家具はなくて。
大型の電化製品は全部リサイクル屋に売ってきたし
1番多い荷物は洋服だったけど、それは宅配便で送った。

三浦さんが「勝手にきめてもぉたけど」と言ったマンションは
三ノ宮駅から程近く、通勤に便利な場所で
「俺は海外時間に合わせる事も多いし会社の近くにしてん」
と言っていた。

私は仕事もまだ決まっていないし、土地勘もないから
三浦さんが住みやすいところ でいい。

「お帰り」
三浦さんは新神戸の駅でそう言って私を迎えてくれた。
「いらっしゃい」でも
「ようこそ」でもなく

「お帰り」だった。

一緒に食器を買いに行って
一緒に雑貨を買いに行って
一緒にそれらを部屋に並べる。
一緒にスーパーの位置を確認して
一緒に買い物をする。

結婚したわけでもないのに、同棲って不思議な感じ。

休みが終わって、今日から三浦さんが出社する時
朝ごはんを作って、玄関までお見送りに行く。

「今日ははよ帰ってくるから」
「でもお休み 明けだから。無理しないで」
「これから先、ずっとはよ帰られへんかもしれんし今日ははよ帰ってくるわ」
「分かりました」

「私も落ち着いたら派遣に登録するので」
「急がんでええよ」

「あんま無理すんなよ」

「え・・・」
「ただでさえ環境ががらりと変わったんやし。
真美ちゃん一人ぐらい俺、養えるから。でも結婚してへんのにそれはイヤなんやろ?」
引っ越してきた日の折半にしましょうと言った私の言葉を笑った。

「イヤ・・・です」
「うん。ちゃんと分かっとぉ。でも急がんでえぇ」
「はい」

「真美ちゃんの事は俺が守るから。安心して」

朝から・・・
朝からこのオトコは玄関で恥ずかしげもなくそんな事を言う。

「真美ちゃんが神戸に一生おってもえぇと思えるようになったら
ちゃんとプロポーズするから」
「・・・・はい」
「それまでは神戸を好きになる事だけを楽しんでくれたらえぇから」

三浦さんは嬉しそうに、笑いながら片目をつぶった。

「・・・・はい」
「じゃぁ行ってくるわ」

その言葉は『同棲』が始まったんだと改めて私に感じさせた。

三浦さんは背をかがめて私にそっとキスをする。

その行為に少しボーっとした私に

「スッピン、可愛いな」

と笑いながら出かけて行った。
「いってらっしゃ、い」

パタンとドアが閉まった。

END****







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by ichigo-ichigo205 | 2018-04-06 12:51 | ・素肌のままで | Comments(2)

賞味期限

寒いけどものすごく気持ちのいい日曜日。

そろそろ神戸に来て1年。
三浦さんが「1周年記念のご飯でも食べに行こか?」といって私を連れ出した。

思いつきのように、連れて来てくれたけど
このお店は、横浜ホールディングに契約社員で行っていた時に
三浦さんが連れて来てくれたフランス料理のお店で
社員の女の子が、予約じゃないと無理だと言っていたお店だ。

あの時と同じように、三浦さんは今日も予約をしてくれていたに違いない。

でも三浦さんはそんな事は私には決して言わないで2人で美味しく食べた後、
1年ぶりに六甲山天覧台に行った。
また真冬の六甲山だ。

「あったかなったら来よって言ってたのに色々忙しくって来られへんかったな」

忙しい三浦さんはそれでも休みのたびに私を神戸に案内してくれた。

「神戸には、なれた?」
「はい」
「ここで・・・一生、過ごしてもえぇって思えた?」
「・・・はい」

「まぁ・・海外転勤になるかもしれんけどな」
「あの」

1年前より少し早い時間に来た天覧台はカフェがまだ営業中で
肌寒いのにアイスを食べる私を見て三浦さんは笑った。

「なぁ、真実ちゃん。アイスって賞味期限がないの知っとぉ?」
「え!」
「どのアイスにも賞味期限は記載されてないねんで」
「そうなんですか?」

「真実ちゃんは食べ物と同じように恋にも賞味期限があるって言っとったけど。
アイスには賞味期限はない」
「・・・・」

「俺の、真実ちゃんへの愛にも賞味期限はない」
「・・・・」

「ずっとずっと、ずっと死ぬまで一生愛し続ける」
「三浦さん」

「真実ちゃん。結婚しよぅ」
「は・・い」

嬉しくてきちんとした返事が出来ない私に
三浦さんはあの時と同じように夜景の上でキスをして

私の口にそっと入ってきた三浦さんの舌は
口の中に残っていた一欠片のアイスを舐め取った。

「つめたっ」

三浦さんはそのアイスを嬉しそうに笑った。


END*****




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by ichigo-ichigo205 | 2017-07-29 14:01 | ・素肌のままで | Comments(6)

名前を呼んで⑧

神戸に来て1週間。
引っ越しや住民票などの色々な手続きも終わって
派遣会社にも登録を終えた。

それと同時に正社員も探してみようかな、なんて思っていた時
横浜HDの社員の女子たちから「落ち着いた?」と連絡が来た。
丁度三浦さんも1泊の出張だったから
その夜にみんなで久しぶりにご飯を食べに行くことになった。

「でも三浦さんにはビックリよね」
「ほんま。やっぱり西田さんを狙ってはったんやねぇ~」
「私、三浦くんと同期やけどあんな三浦くん見たの初めて」

散々ひやかされて近況を報告すると
「うわ。一緒に暮らしてるんや!」
と、驚かれた。
一緒に住んでいるのを知ってて連絡をくれたのかと思った。

「三浦さんが私らに、西田さんが今度こっちに来るけど
友達もおらんやろうから、たまに連絡取ってやってって言いに来はってん」
「まさか同棲してるとはねぇ。三浦くんも手ぇ早いな」

そんな話で盛り上がって、今週は手続きで色々なところに行って忙しかったり
三浦さん以外とはほとんど話してなくて寂しかったのかも。

その女子会が凄く楽しくて、少し飲みすぎた。
そろそろお開きかなと思った頃
三浦さんが目の前に居て・・・「帰ろか」と笑った。

「え?三浦さん?」
「まったく。俺がおらん時に連れ出さんとって」
「だって~。三浦さんがいはられんから西田さんが寂しいかと思ったんです~」
「真実ちゃん、まだこっちで1週間なんやで?
酔ってもぉて帰り道が分からんくなったらどうすんねん」
「うわ。過保護」
「1週間って、その前に1ヶ月こっちにいてたやん。ねぇ~?」
そんなやり取りを私はニコニコして眺める。

「何?」

私に気付いた三浦さんが優しく笑いかけた。
「いえ。一泊だと思ってたので。今夜会えてうれしいです。
お帰りなさい」
「ただいま」

私たちの会話を聞いて、社員の女性たちが
苦笑いしながら私たちを店から追い出した。
「え。お会計!」
「今日は神戸への歓迎会」
「ご馳走するわ。また誘うから出て来てね」
「次からは割り勘ね」
そう口ぐちに言って、三浦さんと二人で追い出された。

「よくこのお店が分かりましたね」
2人で電車に乗りながら心地よく揺られる。
「あの中の一人が同期やねん」
はい。そう言ってました。
「写メ送って来やがった」
そうだったんですね。

「仕事はだいたい終わっとったから。
ホテルキャンセルして新幹線に飛び乗ってきた」
「この電車、覚えとぅ?」

覚えてる。阪急神戸線は初めて2人で乗った電車だから。
「真実ちゃん、俺はあの時から好きやった。知っとった?」

あの時と同じように、私の髪を耳にかけて
そっと耳元でそんな事を言う。
だから私もそっと背伸びをして、

「今は私も好きですよ。拓海さん」
小さくそう言ったら
電車の中なのにぎゅーっと抱きしめられた。

「勘弁して・・・早よ帰ろ」

その後は2人とも無言で。
カタンカタンと電車が揺れる音だけが2人を包んでいた。


END****

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by ichigo-ichigo205 | 2017-06-27 14:23 | ・素肌のままで | Comments(4)

ロールケーキ


横浜のマンションを引き払って
長距離引っ越しをした。

三浦さんは私と約束した通り、2人が住むのに十分なマンションを探してくれて
私より数日早くそこに越してきていた。

「仕事はゆっくり探したらえぇよ。神戸に少し慣れてからの方がえぇ」

「三浦さん。ここの家賃とか生活費とか。ちゃんと折半しましょうね」
「・・・・」

最初に決めたほうが良いと思ったことを言うと、三浦さんはちょっと不機嫌になった。
「家賃は俺が出す」
「え?結婚していないのにそれはいやです」
「なんで?ちゃんと俺が払える所を探したんやけど」
「確かに私はこっちでも派遣だと思いますが、それとこれとは話が別だと思います」
「お金に賞味期限はないんやろ?家賃分、払ったつもりで貯めとき」

そう言って、笑いだす。

「俺が浮気するかもしれへんのやろ?男はそーゆーもんなんやろ?」

笑いながら言う話じゃないと思いますけど?

「その時のために貯めとき」

全くこのオトコは・・・
「浮気しないって言ったじゃないですかっ」
「せぇへんよ」

即答で私の顎を捕まえてキスをする。

「俺のわがままでこっちに来てもらってんから。それぐらいさせて」

このオトコはどこまで私を甘やかすんだろう。

こっちに来て安心したかったのは・・・私なのに。

「片付け終わったら何か食べに行く?」
「作りますよ」
「・・・・真実ちゃんが?」

なに?私には作れないって思ってるの?

「なんですか?不満ですか?」
「いや・・・嬉しかった、から」

満面の笑みで。素直なんだか策士なんだか。

「ご飯は毎日作りますよ」
「・・・・・」
「外食はもったいないですしね!」

そう言うと「さすが」と笑った。

「なにか美味しいデザートは買ってこよ。せっかくの同棲記念なんやから」
と嬉しそうな三浦さんに

「絶対、みかげ山手ロールのロールケーキが良いです!!」
と、断言する。
「良いけど、そんなに好きなん?」

「食べてないんですよ!!三浦さんが企画の女の子たちにお土産で買って来てくれたのに
翌日は私の分は残ってなかったんです!それなのにみんな、美味しかった美味しかった!って・・・」

「あ・・・ぁ」
私の言葉に思い出したように含み笑いをした。

「なんですか?」

「真実ちゃんだけを誘ってご飯食べに行くのに、みんなが来たがるのは分かっとったから」
「だから?」
「生菓子を買って行ってん」
「?」
「神戸の女の子はデザートにうるさいねん。あのロールケーキを目の前で見たら
『今食べな!!』って気になるやろ」
「・・・・」

「俺たちと一緒に行きたい!って無理に言わへんやろ」
「・・・・」
「だから生クリームの生菓子にしてん」

このオトコ、お土産にそこまで考えてたの?

「季節のロールケーキも色々あるから、一緒に買いに行こか」

色々・・・
たぶんもっと色々、この人の手のひらの上で策に引っかかっていたんだろうな。

良いよ。引っかかってあげる。

私は三浦さんに見えないように小さく笑った。


END*****


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by ichigo-ichigo205 | 2017-05-29 13:29 | ・素肌のままで | Comments(0)

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