カテゴリ:・嘘つきは恋の始まり( 9 )   

花火大会③   

2018年 08月 25日

「わ~チコちゃん可愛いね!」

経管の8月の中旬はいつも忙しくて
毎年お祭りや花火大会はあきらめている。

それなのに昨日になって急に休みが取れたと野口さんから連絡が来て
久しぶりに楠の家で集まろうぜ!と言ってきた。

楠さんの奥さんの花ちゃんは料理上手で
「料理は全部任せて!だから浴衣着て来てね」
と言ってくれた。

楠さんのマンションは10階で丁度横浜湾が見渡せる場所だからだ。

デートを何回しても浴衣姿で野口さんと会うのは初めてで
ドキドキする。

でも、野口さんも浴衣姿で
「野口さんもかっこいい」
野口さんの浴衣を見るのも初めてだ。

「楠が着て来いって言うから」
なんて照れてたけど
わ~似合う!

いつもスーツ姿で忙しく仕事をして。
そんな野口さんの浴衣姿を見れるのは私だけなんだなぁ~と思ったら
すごく嬉しくて。

「野口さん大好き」
素直に言葉に出ていた。

「やめる?」
「え?」
「楠に行かれなくなったって言おうか?」

「もうっ」

野口さんのそんな言葉にくすくす笑って。

今日は初めて野口さんと花火を見に行きます。

END***





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by ichigo-ichigo205 | 2018-08-25 14:17 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

初恋   

2018年 04月 26日

ゴールデンウィークの初日
昨日までずっと残業続きだった野口さんと
久しぶりにゆっくりとDVDを借りて来て観ている。

ソファーに座りながらのんびりと観る3本目のDVDは初恋をテーマにした映画で
6時間近く観ていればだいぶ疲れて来て首をぐるりと回した私に
野口さんは小さく笑って
「おいで」
と自分の足をポンポンと叩いた。

え?
膝枕してくれるって事?
それって普通は女の子がしてあげるんじゃないの?
多少の疑問を抱えつつ
それでも疲れた体勢を変えたくてお言葉に甘えて
長めのソファーにごろりと横になった。

「この初恋上手く行くのかな」
野口さんは私の髪をなでながら主人公の心配をする。

「チコちゃん、初恋はいつ?」
「小学生、かなぁ~?」
「そっか」
「野口さんは?」
「ん?俺?チコちゃん」

嘘ばっかり!
「それは嘘でしょう~!」
「本当だよ。嘘はつかない約束だろ」
「大人になって初恋って普通ないでしょ!」

「チコちゃんほど本気になった女の子はいないし。
チコちゃんより前に出会った女の子は全員忘れちゃったよ」

「・・・・」
このオトコは・・・・
たまに聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフを恥ずかしげもなく言う。

「俺の初恋はチコちゃんだよ」

そう言って私の手を握って持ち上げて
手首の内側にキスをする。

「超時間見て疲れたな。夕飯でも食べに行くか」
エンドロールが流れているなか
私の頭を膝に乗せたまま、野口さんはう~ん、と伸びをした。

「今日はゆっくりしたから、明日は出かけるか」
GWだからどこも混んでるかな・・・
呟くように、デートの行き先を考え込んで

「ずっと、この部屋でまったりで良いよ」
「ん?忙しくてあんまりデートに連れて行ってやれないから。
連休ぐらい外に行こうぜ」
「疲れてる癖に・・・」
「大丈夫だよ」

「私が、2人きりで過ごしたいの」

下から野口さんの顔を見上げて
そっと笑えば

「ほら。またチコちゃんに惚れなおしちゃった」

身をかがめて上を向く私にキスを落とす。

「いつまでたっても初恋から抜けだせないな」

そういって嬉しそうに笑った。


END*****







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by ichigo-ichigo205 | 2018-04-26 13:34 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

嘘と缶コーヒー   

2017年 04月 03日


会社での毎年恒例の土曜日の花見をして
乾杯が終わって少ししたら、この後用事が出来たとチコちゃんが言って早めに帰った。
その言葉に少しホッとして
チコちゃんを見送った後、そのまま事情を知ってる経管のメンバーに断りを入れて会社に戻った。

いきなり契約の変更を先方から言い渡されて
調印直前に契約書の練り直しになった。

月曜日の朝一で調印するために、今日中に仕上げて
明日の日曜日に常務にハンコをもらわなきゃいけない。

チコちゃんが用事があると言ってくれたおかげで、すんなり花見から帰ってこれた。

チコちゃんとは普段一緒に居られない事も多いから
約束したことはなるべく守りたい。
今日も俺が仕事だと言って早めに帰ったらチコちゃんはもちろん何も文句は言わないだろうが
寂しい思いをさせるから。

チコちゃんに用事があってよかった。

どうしてもこの仕事は今日中にまとめたい。

仕事に夢中になって、一段落したのでふと時計を見ると夜の8時を指していた。

その時、トントンと経管の部屋のドアを叩く音がして。
小さなガラス窓からチコちゃんが顔をのぞかせた。

経管の部屋は決まった社員証でしか解錠されないようになっている。
チコちゃんの社員証ではこの部屋は開かない。

急いでドアへ向かった。
「どうしたの?」
「そろそろお仕事一段落かな?と思って」
「なんで、仕事だって分かった?」
「野口さん、お酒を乾杯の一口しか飲まなかったから。
このあと会社に戻るんだって思ったの」
「・・・・用事があるって言うのは?」
「嘘ついちゃった」
へへっと、小さく舌を出した。

「嘘は・・・つかないでって言っただろ」
本当はそんなこと思ってないのに。
なんだか嬉しすぎて、そんな事を口走った。
「ごめんね。でも私が用事があるって言わないと
野口さん、私に会社に戻るって言いづらかったでしょ」
何でも、お見通しか・・・

「温かい缶コーヒー買ってきたけど。ぬるくなっちゃった」
それは、ぬるくなったという程度じゃなくて

「チコちゃん、いつからここにいたの?」
「あの・・・・」
「嘘言わないで。本当のこと言ってごらん」
「・・・・少し前。野口さんが忙しそうだったから、声をかけそびれただけ。
今、野口さんが時計を見たから一段落したのかな?と思ってドアを叩いたの」
缶コーヒーを持っていた手は冷たくなっていて。

4月とは言え、夜はまだ寒い。
今日は花見のせいもあって休日出勤はいないために
申請した部署以外の社内の暖房は切られていた。
廊下は・・・寒かったはずだ。

「寒かっただろ。ありがと」

そう言って抱きしめたチコちゃんの身体は冷たくなっていた。

「平気。終わったら一緒に帰ろう。それまで待ってる」

でも、二人の心はポッカポカに暖かかった。

END******





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by ichigo-ichigo205 | 2017-04-03 13:47 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(4)

やっぱり嘘つき   

2016年 10月 09日


「初めて俺たちがあった日のこと覚えてる?」

付き合って1周年記念の日、
野口さんはおしゃれなレストランを予約してくれて
嬉しそうに思いだしながら話した。

「うん。覚えてるよ」
「あの時、チコちゃんが言った『ちいさ~い会社』ってフレーズがかわいくてかわいくて。
一目で惚れたんだよな」
「・・・・」
「チコちゃんの俺の第一印象はどんなだった?」

うれしそうに聞くけど・・・

「みんな社内でモテるのに、まだモテたいんだ? とか」
「え・・・・」

「社内では女の子の誘いには乗らないって噂なのに
社外では合コンオトコかぁ~、とか」
「・・・・」

「こんなところに来なくても彼女なんか選びたい放題でしょうに。 とか」
「あの・・・チコちゃん?」

「この人たち、自分がモテるって自覚してる。とか思ってた」
「・・・・サイアク」

野口さんはフォークをテーブルに置いてため息をついた。

「え~っと。それは第一印象だよね?」
「そうね」

「じゃぁ、俺のこと、好きになったのっていつ?どんなところ?」
「そうね~・・・う~ん・・・」

必死に考えるふりをすると
にわかに慌てだした。

「え・・・もしかしてぱっと思いつかないの?」
「う~ん・・・」
「・・・・・」

「チコちゃん・・・俺のこと本当に好きだよね?」

真剣な顔をしてそんなことを聞くから
これ以上は可哀そうだなと思って。

「嘘だよ。ちゃんと好きよ。私のことを大切にしてくれるところとか
辛抱強く付き合うまで待ってくれたところとか
本当に大好き」

「うん」

「1年ありがとう。そしてこれからもずっと、ず~っとよろしくね」

安心したように笑った野口さんに
愛されてるな~と感じる。

本当に本当に大好きよ。

嘘偽りなく、大好き♪

END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2016-10-09 11:35 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(2)

ライバル?   

2015年 08月 24日

まだまだお昼なんて休憩は取れないな、と思った
「世間では昼休みの時間」に
「5分!」と同僚に断って食堂へ行く。

まったく・・・
昼休みに2分話すのがやっとの社内恋愛に
それでも社外だったらこの2分もないか・・・と
自分を納得させて食堂にたどり着いた。

いつもよりざわざわしていたその周辺は
いつもチコちゃんが座っている場所で

チコちゃんの同期が勢ぞろいしていた。
その中に、見知らぬ顔があって・・・
やけにチコちゃんと仲がいい。

疲れもあってボーっと見ていた俺にチコちゃんが気がついて
「あ。野口さん」と声をかけた。
その声とともに、そいつの視線も一緒に飛んできて

「あの人が、谷城の彼氏?」
と、聞こえるような声で言う。

あいつはなんだ?

「野口さん、こちら清水君。N.Y.の建築営業から本社勤務になったのよ」

俺は、建築営業とN.Y.という言葉にビクッと反応する。

そんな俺を見て、清水は小さい声で
「野口さん、桐生さんと谷城を別れさせてくれてありがとうございます」
なんていう。
「なっっ」
あの事は、同期だって知らないはず。

「谷城は俺が知ってるって知りませんから」
慌てた俺をまた制して言った。
そんな俺たちを見て、チコちゃんは
「なに~?二人は知り合いだった?」
なんて優しく笑った。

「俺、本社勤務の辞令が出て、谷城を奪おうと思って来たんですけど」
「・・・・」
「野口さんの仕事ぶりを見て、やめました」
「・・・・」
「昨日、まとめてもらった案件、あれ俺の担当になりますから」

あ・・・ぁ。昨日までのあれか。
「それに。桐生さんにたぶん俺じゃ無理って笑われましたけど」
「・・・・」

久しぶりに桐生さんの名前を聞いて、少し嫌な気分になる。

約束の5分はとうに過ぎて、
「顔を見に来ただけ。俺仕事が残ってるから」と
部署に帰った。

なんとなく浮かない気分で午後の仕事を終えて家に帰ると
サプライズでチコちゃんがいて
「どうしたの?」
早く帰ってくれば良かったと後悔した。

「今日、清水君に桐生さんのコト何か言われたの?」
「え・・・」
「清水君は気が付いているようだったから」
「・・・・」

「桐生さんは私にはもう過去の人だよ」
「うん」
「清水くんに、告白されたけどそれもちゃんとキッパリお断りしたよ」

あいつっっ!
諦めるとか言っておいて!
ちゃっかり告白してフラれてるんじゃないかよっ!

そんな俺の無言のしかめっ面を見て。
チコちゃんは優しく笑う。

「心配しないで。私は野口さんだけ」

俺の肩に手をついて、背伸びをして、俺のほほにキスをする。
このキスのためなら何でもできる。

そう思ったPM9:30分だった。

END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-08-24 14:31 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

待ってるよ   

2015年 05月 29日

金曜日。
近頃やっと作ってもらった合い鍵を握り締めて
野口さんの家に行く。

週末はすっかりこっちで過ごすようになって
部屋着も何枚か置きっぱなしだ。

一緒にDVDを見ようって約束したのに「ごめん。遅くなる」って
メールが来て。
「やっぱりね」って、わざわざ声に出してみたけど
自分で本当に納得した訳じゃない。

忙しいのは同じ会社だからよく分かってる。
よく分かってるから、文句は言えない。
素直に、文句の一つも言えれば楽なのに。

それでもぎりぎりまで待って。
終電がなくなった時間に、1つの大きなため息とともに諦めた。
お風呂に入って寝よう。

こんなに遅いんだったらご飯も食べてるだろう。
作った夕飯にラップをして、
面白くもないテレビを消す。

リビングの電気は付けたままで
お風呂に入っていい香りの入浴剤を入れた。

「いいよ。この匂いに癒されるから」

ぽつっと言った一言に、涙も一粒流れた。

「俺も一緒に癒されていい?」
あまりにビックリして、湯船の中で滑って鼻の頭までお湯につかった。
「野口さんっ!」
「ごめん。遅くなった」
「ご飯は?」
「食べ損ねた」
そう言って脱衣所に座りこんで、優しく笑いながら私を眺める。
食べる時間もないほど、だったんだね。

「ごめん。待ってて。すぐ出て支度するね」
そう言って湯船から立ち上がった私を見て
「良い眺め」
と嬉しそう。

「やだっ」
恥ずかしくなって湯船に沈めば、
「ご飯は後で良いよ。一緒に入ろう」
とスーツを脱いで、私の背中に滑り込んだ。

「毎週ごめんな」
後ろから抱きしめられてそう言うから
「ううん」と首を振る。

「経管が忙しいのはよく分かってるから」
「ん」

そう言ってお互いに無言のまま私のお腹で交差した野口さんの手に私の手をからめた。

「これから毎週、金曜日はこんな感じだ。
待ってるのが辛かったら、金曜日はやめて土曜日に会おうか?」
「え?」
「そうすればチコちゃんは金曜日は遊びに行かれる」
「・・・・」
「ごめんな」

今、凄く忙しい事は私には言わない。
頑張ってるんだね。野口さん。

「ううん。待ってる。この時間になっても平気。
それとも私が待ってると思うと思うように仕事が出来ない?」
「まさか。俺もこの時間に帰ってきてチコちゃんがいてくれると嬉しい」

小さくホッとしたように息を吐き出して
後ろからぎゅーっと抱きしめられた。

「チコちゃん、好きだよ」

END*****
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by ichigo-ichigo205 | 2015-05-29 05:00 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

七夕   

2014年 07月 07日

「野口さんがNYに転勤になるかもしれない」

そんな噂を聞いたのは7月に入ってすぐの事。
どうやらNYで大きな契約が決まりそうなのに
主要メンバーの一人が家の都合で退職したために
本社から人員を補充するという噂が立った。

契約寸前のそのプロジェクトに今更全くの素人が入りこめる訳もなく
経営管理が逐一その動きを追っていたので
その中から人員を派遣しようという話になったらしい。

そのうち、最有力候補が野口さんだと聞いた。

そんな噂が社内を駆け巡っているのに
私にはそんな話は一切しない。
一体、どうなっているのか、不安だな。

野口さんは土日に仕事が入り、会えなかった週明けの月曜日。
お昼に食堂に来て家の鍵を渡して
「今日、月曜日だけど。ウチに来れる?」と
みんなの目もはばからずに鍵を渡した。

月曜日から会うことは稀で、私は、ああ、NY行きが決まったのかな。と
漠然と考えていた。

この土日の仕事は、上司との最終的な決定をしたのだろう。
私もこの土日に一人でよく考えた。
もし、NYに行く事が決まったと言われたら。私はどうしよう。
ついてきてと言われたら?
待っていてと言われたら?
別れようと言われたら・・・・

色々考えたけど、別れようと言われたら、絶対に別れない!と言おうと決めた。
ついて行く事や、待っていることは、二人で相談しよう。

そんな風に自分の考えをまとめた夜。
月曜日なのに早めに帰ってきた野口さんはリビングに座るなり大きなため息をついた。
いよいよ、覚悟した私に

「色々噂が飛び交っているけど。NY行きは他の奴に決まったから」
と言う。
ほんとに?
「ウチの会社は経営管理部のヤツは生涯経営管理だ。
それは色々な部の、重要機密を触る立場にいるから、どの部にも転属にはならないのが普通だ。
逆に・・・転属になった時点で経営管理には戻らないことを意味する」
「うん・・・・」

他の部からNYの転属は栄転になったとしても
経営管理からの転属は栄転か微妙だ。

「今回の件で、NYの桐生さんから直接連絡があった」
「桐生さんから・・・」
「俺が最有力候補に挙がってるって」
「・・・・」
「経営管理を離れて、営業畑としてあらゆる経験を積んで取締役を目指すか
このまま経営管理にいて、エキスパートとして取締を目指すか今決めろって」
「・・・・」

ものすごく疲れた顔で、それでも私に隠すことなく全部話してくれようとする気持ちが
痛いほど分かる。
本当は私に桐生さんの話なんかしたくないよね?

「もちろん、NYは魅力あるけど。俺は本社の経営管理にいたい」
「うん」
「チコちゃんのそばにいたいとか、桐生さんと気まずいとか
そーゆーことじゃなくて。本社にこだわりたい」
「うん」

「桐生さんはそれを分かってくれて。俺を候補から外してくれたんだ」
「え・・・・」
「うん。そうなんだ」

「そっか」

「桐生さんはきっとチコちゃんの事があったから。
俺を気にかけてくれたんだ。それがなきゃここまでの配慮はなかった。
ありがとう。チコちゃんに助けられたよ」

そういって私の目を見て苦笑した。

「そんなこと・・・ないよ。経営管理が野口さんを手放したくなかったからだよ」
「ん」

「私ね、もしNYに転属になっても別れないって決めてたんだ」
私は精一杯にっこり笑って言う。
「チコちゃん」

「天の川って140兆kmなんだって」
「ん?」
「140兆だよ!」
「うん・・・」

そこでやっと野口さんが笑顔になった。

「横浜とNYなんかたった11,000kmだよ」
「うん」
「天の川の129億分の1だよ!」
「うん」

「近いじゃん!野口さん。愛してる」

そう言ってギュッと抱きつけば
野口さんは小さい小さい吐息を1つ吐き出した。

「付き合ってても。俺の方がチコちゃんの何倍も好きだと思ってた」
「・・・・」
「いつもどこかでチコちゃんの気持ちが不安だった」
「・・・・」

「愛してくれてありがとう。俺も・・・最上級に愛してるよ」


ギュッと抱きあったこの年の七夕の夜を
私たちは忘れない。

絶対に忘れない。


END******
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by ichigo-ichigo205 | 2014-07-07 10:55 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

今月の社員②   

2013年 12月 18日

今月の社員

野口颯太
・経営管理部 主任
・2006年入社

今月は経営管理部のエースと名高い野口主任です。
その容姿はさることながら仕事が出来る男として
上司や女性からも人気の高い野口主任。
どんなインタビューを聞かせてくれるのでしょうか?

・今の目標を教えてください
―――彼女と結婚することです。

・来年の目標を教えてください
―――バリバリ働いて彼女に今以上に惚れてもらうことです。

・休日の過ごし方を教えてください
―――彼女と二人きりで映画を見ながらまったり過ごすことかな。

・近頃1番いやだったことは?
―――噓をつかれたこと・・・・あ。でも良い嘘もあったな。

・良い嘘ですか?
―――彼女の「いや」は「もっと」って意味なんだ。これもある意味、嘘だよね(笑)

・彼女の話が中心になってしまいましたが、仕事面での目標は?
―――彼女がいなきゃ仕事も頑張れないから。

・「彼女」とは社内の噂の方でいいんですよね?
―――他に誰がいるの!

・最後に一言お願いします。
――― チコちゃん、マジで俺のだから。

彼女の話をしている野口主任は普段の仕事の顔からは
想像もできないような甘い顔でした。

インタビューありがとうございました



*********


「いい加減にしてよ!何これ!」
「いや、半分本気、半分冗談だったんだ。まさかこのまま社内報に載せる勇気が
広報にあるとは思わなかった」

「上層部も読んでるんだよ!」
「だな」
「野口さん。出世に響くよ?」

そう言った私の顔を急に真面目な顔をして見つめてきた。

「冗談で答えたけど、内容は本気だよ。
別に上層部に読まれたって恥ずかしいことは言ってない。
それに。こんなことで出世が遅れるような仕事内容はしてない。
チコちゃん、心配し過ぎ」

「・・・・・」

「もっと俺を信用して」

「・・・・・」

「ほら。この写真。俺、かっこよく写ってるじゃん?」
「・・・・・」
「でも、社内でなんて言われるか」
「気にしなきゃいいんだよ。チコちゃんは俺のでしょ」
「・・・ん」

まだ不安な私をぎゅって抱きしめてくれた。


「あのさ?ラブラブも良いんだけど。就業中だから」

後ろの方から呆れた声がため息とともに飛んできた。

「山田。いいとこなんだから邪魔するなよ」

私は恥ずかしくなって野口さんを突き飛ばすように離れ
空の大きな台車をガラガラさせながら総務部まで戻って行った。

途中、廊下やエレベーターでひそひそと指をさされたのは言うまでもない。




END******
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by ichigo-ichigo205 | 2013-12-18 10:49 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)

今月の社員①   

2013年 12月 14日

総務部の入口に山と積まれた小冊子を数人のおねぇさまが囲んでいる。
たった今、印刷を頼んでいる業者から搬入されたもの。
今月の「社内報」だ。

広報が編集して印刷業者に頼んだものを
各部に振り分けるのは総務部の仕事になる。

それを1番のりで見ることが出来るのは総務部の特権。
まぁ・・・・
社長の今月のお言葉とか
業績とか
業種の動きとかは役付き以外はほとんど読んでいない。

皆が楽しみにしているのが
1番最後のページの「今月の社員」

そして・・・・・
年末はいつも人気社員が「オオトリ」としてそのページを飾る。
今年のオオトリは野口さんだ・・・・

なんとなく読むのが気が重い・・・のは私だけだろうか?


ピキッッ!!!

と、音がしたように感じた。
総務のおねぇさま方の眉間や額に怒りマークが・・・・

「谷城さん」
「はい」
「あなた、野口さんに『いや』って言ってるんだ?」
「はい?」

一斉に私に向けられた視線が痛い・・・

「あ・・・の・・・」

「仕事!仕事!」
「今月の社内報は谷城さんが全部配ってね!」

「あ・・あの。私一人でですか?」
「そうよ!」


********

なんで!私一人で!
この膨大な社内報を各部署に配布するの!
絶対野口さんのせいだ!

山積みとなった社内報を
部で1番大きな台車に乗せて
各部署に部数を配りに行った。

広報部ではすでに印刷前にみんなが見てるようで
私が配りに行ったら
ニヤニヤとお出迎えされた。

「谷城さん、今月号もう読んでくれた?」
「・・・・・」
「気に入らなかった?私だったら嬉しいけどなぁ~」
「・・・・・」



そして「わざわざ」1番最後にした経営管理部。

「総務部です。今月の社内報を届けに来ました」

「あ!チコちゃん」

尻尾が見える。尻尾が見えますよ!野口さんっっ!
経管のエースって名が泣きますよ。

「チコちゃんが持ってきてくれたんだ!
チコちゃんこの部を避けてるのに、ありがとう」

「・・・・・」

「今月の社員、俺だろ?写真かっこよく撮れてた?」
「・・・・・」
「??見せてよ」

ほらっっ!と
投げ出さんばかりに野口さんに社内報を叩きつけた。

「あらら~これってこのまま載っちゃったんだ」

あらら~といいながら嬉しそうな野口さん。
このまま、じゃないわよ!
全く!


つづく*****
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by ichigo-ichigo205 | 2013-12-14 05:46 | ・嘘つきは恋の始まり | Comments(0)