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いちごの妄想小説

7時間目


弥生ちゃんが学園祭に来てくれて
大学の皆に、俺の彼女が幻なんかじゃなくて
年上のオンナだってばれて、数日たった時

俺にまとわりついて来ていた女が
サークルの飲み会でみんなが酔って周りの話に関心を持たなくなった頃
恨めしそうな顔で俺に話しだした。

「ほんとに彼女がいたんだ」
「俺は初めから彼女がいるって言ってたぞ」
「嘘かと思ってたんだもん」
「嘘つくかよ」

「あの人、行くつ上?」
「6こ」
「おばさんじゃん・・・」

「・・・・だから?」

自分の声が冷たくなるのが分かった。
お前に弥生ちゃんの何が分かる?

「大学に一杯いるじゃん」
「なにが?」
「そんな6こも上のおばさんじゃなくてさっ」

「俺にとってのオンナは、弥生ちゃんしかいねーよ」
「・・・・」

「逆に6こ上だから、学校では普通に知り合えないだろ。
出会えたことに感謝してるよ。マジで」
「・・・・でもさっ」

色々ごちゃごちゃ言う女の弥生ちゃんへの心ない言葉を聞いているのもいささか嫌になってきて
俺は何も言わずに立ち上がった。

「帰るわ」
「え?山口、もう帰んの?」
「あぁ。弥生ちゃんとセックスしたくなった」

別に小声で言ったわけでもないけど
大声で言ったつもりもない。

けど、丁度立ち上がった俺になんとなくみんなが注目していた時で
俺のその言葉はしんとした居酒屋の個室に響いた。

「智樹っ!」
「あのさ、俺の彼女は弥生ちゃんだけ。
もう何年も前からそうなの。
そしてこれから先もずっとそうなの。
勘違いすんなよ?勘違いさせるような事もしてないだろ?」
「・・・・」

「んじゃ、お先」

そう言って女の方も見ずに居酒屋を後にした。

弥生ちゃんの部屋に行って、授業の用意をしていた弥生ちゃんをいきなり抱きしめてキスをする。

「なに?何かあった?」
「何もないよ」
「そう?なにか・・・キツイこと言って。言った智樹も傷ついて後悔してるんでしょ」
「・・・なにそれ」
「何となくそう思っただけ」
「センセイかよ」

「彼女です」

「うん。そうだな」

弥生ちゃんには一生敵わない。
愛してるよ。弥生ちゃん。

END****









# by ichigo-ichigo205 | 2017-07-20 14:51 | ・数学のセンセイ | Comments(4)

日常 UPしました


セカンドラブ の 日常 UPしました。

本編から少したった2人の「日常」

あなたは「今」幸せですか?





# by ichigo-ichigo205 | 2017-07-13 21:19 | UPのお知らせ | Comments(0)

日常

梅雨が明けて、毎日暑い日が続いてる。
ベランダのハーブも元気に育ってる。
日曜日の朝早くに、暑くなる前にベランダに出てハーブに水をあげていたら
祐一くんが起きて来て
「ベランダでこんなのやってたんだ」
と、パジャマで少し寝ぐせの付いた髪のまま窓に寄り掛かっていた。
「夕飯にたまに入ってるよ」
「食べ物?」
「ハーブだよ」
バジルの葉を1枚摘んで、祐一くんの鼻に近付ける。
「うん。覚えのある匂いだ」
食に無頓着な祐一くんに覚えてもらっていたなんて嬉しい。

「朝ごはんにしようか」

祐一くんは会社のパリッとした雰囲気からは想像もつかない
だらしのない恰好で、パジャマのままテーブルに着いた。

朝ごはんを作って出すと美味しそうに食べてくれる。
幸せだな、と思う。

「何?」

じっと見つめる私に祐一くんが笑った。

「フツーの日常が幸せだな、と思って」
「そうだな」

口には出さなくても、二人とも私が記憶をなくしていた
あの数日の事を思い出していた。

「ね・・・」
「ん?」

「あの時・・・」
「うん」

「何が1番イヤだった?」
「イヤ?」

「うん。数年前の自分に戻った私との生活で
何が1番不便と言うか、いやだった?」

私の問いに祐一くんはお箸を置いて、私をじっと見つめた。

「抱きしめられない事とか、旧姓で呼んでいたこととか・・・色々あるけど」
「うん」
「言葉・・・かな」
「言葉?」

「そう。しおりは俺に対して上司としての記憶しかないから敬語だった」
「あ・・・」

「実際の距離よりも、距離を感じたよ」

真面目にそう言った後、私の泣きそうな顔を見てふっと笑った。

「だから、今が余計幸せに感じる」
「・・・私も」
凄く幸せ。祐一くん、愛してる・・・

「しおり、愛してるよ」
「あ~!今私が言おうとしたのに!」

「じゃぁ、言って」
祐一くんは幸せそうにクスクス笑った。

「祐一くん、愛してるよ」

私たちは椅子から立ち上がって、テーブルの真ん中でキスをした。


END***





# by ichigo-ichigo205 | 2017-07-13 14:08 | ・セカンドラブ | Comments(2)

共犯者 UPしました


王子の甘い罠 の 共犯者 UPしました。

2014年の七夕は「嘘つき」の二人
2015年の七夕は「噂」の二人
2016年の七夕は「悠久」の二人

さて4年目の七夕はどんなラブラブでしょうか?






# by ichigo-ichigo205 | 2017-07-07 22:14 | UPのお知らせ | Comments(0)

共犯者

「え?すみれさん、エッフェル塔に登ったことないの?」

ビックリしたように言うけど。
エッフェル塔って確か入場者はほとんどが外国人のはずよ。
まぁ私もココでは外国人ですけど。

「ふ~ん」
と宮本くんが何気なく言ってその話は終わった。
そんな話をしたことさえ忘れていたころ
仕事が終わった後に
「さてすみれさん、行こうか」
宮本君が笑った。

連れて来てくれたエッフェル塔の下は
いつものように大行列で
「ここはいつも混んでるわね」
エッフェル塔は入場するのに1時間は並ぶ。
これが普通だ。
「まさか今からこれに並ぶつもり?」

「今日は、ちょっと秘策がある」

そう言ってエッフェル塔内のレストラン直通のエレベータに私を乗せる。
「これなら並ばないからね」
「この時期に良く予約が取れたわね」
エレベーターに乗ってレストランへ着くと
パリは日没が始まったばかりだった。

夏のパリの日没は遅い。
22時になってやっと暗くなる。

2階にあるミシュラン認定のレストランは観光地の塔の中にあるとは思えないほど美味しくて
段々と暗くなりながら目の前に広がるパリの夜景にため息が出る。

「素敵ね」

「今日何の日か知ってる?」
「今日?」
2人の記念日じゃないはずだ。

「七夕だよ」
「あぁ・・」

すっかり日本に帰らない日が多くなって日本の行事を忘れていた。

「フランス語では天の川の事をvoie lactée(星の道)って言うのよね」
「うん。今日は晴れてよかったよ。天の川もよく見えるね」

パリの夜景と天の川に挟まれて、キラキラと輝くエッフェル塔の中で
キラキラ光るゴールドのシャンパンを飲みほした。

そんな私に優しく笑って、宮本君が窓に向かって手を伸ばして
ギュッとその手のひらを握りしめて、そのまま私の前に差し出す。

「すみれさん。フランスに来てくれてありがとう」
「うん」
「この夜景と星空を一緒に見ることが出来て幸せだよ」
「私も」

天の川がキラキラ輝いている。

「何?この手」
いつまでも私の目の前で固く結ばれた手を宮本くんは見つめてから
一瞬目をつぶって息を小さく吐き出した。

「あの、voie lactéeから―――星を1つ盗んだんだ」
「え・・・?」

ゆっくりと開いた手の中に星に負けないぐらいキラキラ光るダイヤの指輪がそこにあった。

「共犯者になってくれる?」

飲みほしたシャンパングラスをテーブルに置いた私の左手を宮本くんはそっと包んだ。

「共犯者に、なるわ」
「一生?」
「一生」

その返事に嬉しそうに笑って、私の薬指にその星をそっとはめる。

「星に誓って愛し続けるよ」

七夕の夜、星の道の下で、私は星より輝く永遠の愛を手に入れた。


END******



# by ichigo-ichigo205 | 2017-07-07 13:27 | ・王子の甘い罠 | Comments(2)